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「大丈夫」は誤解も 外国人材生かす職場の会話術

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞
「特定技能」で働き続ける外国人材も多い(東京都港区の東京出入国在留管理局)

国内の人手不足を背景に外国人労働者の数が増えている。新型コロナウイルス禍で来日に支障が出ているが、政府も外国人技能実習制度や特定技能制度で受け入れを進める。ただ外国人材にとって日本語の習得は難しく、就職後も同僚や上司と意思疎通がうまくいかずに悩む人も多い。外国人材とのコミュニケーションについて企業研修を手がける昭和女子大学の近藤彩教授に、課題や対策について聞いた。

――外国人材が増える一方で、コミュニケーション面ではどのような課題やトラブルが目立ちますか。

こんどう・あや 昭和女子大学・大学院教授。博士(人文科学)。専門は日本語教育学、ビジネスコミュニケーション。東京海上火災保険、政策研究大学院大学、麗沢大学などを経て現職。日本語教育学会副会長。

「在留資格を持つ外国人材は、2019年に設けられた農業や介護など特定技能の14分野を中心に増えている。新型コロナ禍の影響で(雇用ニーズが下がって)一時的に人材が余っているケースもあるが、必要としている産業は数多い」

「日常会話では、例えば『任せる』という言葉を巡るすれ違いがある。海外の国・地域によっては、完全に一任するという意味を持つ。日本の慣習では任された仕事でも終わった後に上司がダメ出しをすることが多い。『任せる』と言われて、自分の責任で仕事をこなすと受け取った外国人材にとって、上司の細かい指摘を受けることは不信感や不満につながりかねない」

――なぜこうした誤解が生まれるのでしょうか。

「誤解が生まれる要因は単純ではない。本人の日本語能力の問題もあるだろうし、多様な価値観や文化、考え方の違いもある。意思疎通できなかったから能力が低いと評価してはいけない。行き違いの原因について、一瞬立ち止まって冷静に判断すべきだ。日本側の社員や従業員が敏感になって考えてほしい」

「外国語の場合、考えを全て言葉にしてコミュニケーションをとることが多い。一方、日本語は伝えたいことの全てを言葉で表現しない。同じ価値観や文化性を前提としたハイコンテクストな言語といえる。背景や母国語が異なる相手には、もっと言葉で伝えようとする工夫が大事だ」

――日本側の社員らが気をつけるべきことは。

「普段何気なく使っている言葉にこそ気を配ってほしい。上司が言い方に配慮しているため、かえって伝わりにくくなっているケースは多い。例えば『大丈夫だ』と声をかけて励ましたつもりでも、外国人材には『問題ない』と承認した意味にとられてしまう。明確な表現で指示や声がけをすべきだ」

「日本人同士で使う日本語と、外国人材に対して使う日本語を切り替える必要もある。語学学校などで日本語を学んだ外国人材も多いが、実際に働くときの日本語とはやはり違う。単語は聞き取れても、何を言っているか分からないという相談をよく受ける。日本人側が言い方や表現を変えれば意図が伝わることも多い」

――正しいコミュニケーションには、どのような職場環境を整えるべきですか。

「気軽に相談できる人間関係を構築したい。インド人を調査した際は多くの人が、話しかけやすい人が良いリーダーだと話していた。日本では、自分で考えろという考え方のリーダーもまだ多い。不明点を常に尋ねやすい環境づくりを心がけるべきだ」

「受け入れた企業側で、日本語の研修制度も用意した方がいい。外国人材には働きながら日本語を学習する時間がないという意見が多い。企業によっては勤務時間内で学習機会を提供しているところもある。外国人材の日本語能力が上がれば、組織の意思疎通はスムーズになり、業務の効率化につながる」

――コロナ禍で普及した在宅勤務やテレワークでの注意点は何でしょうか。

「オンライン会議は特に注意が必要だ。カメラをオフにして話されると表情が読み取れず、以前より発言しにくくなったという外国人材の意見を聞いた。間違った敬語を使っても相手の表情を見て修正できないため、失礼になったままではないかと不安に思うこともあるようだ。日本側の社員は会議中に発言しやすいよう、指名するなどのフォローをしてほしい」

「チャットを使った連絡手段も外国人材にはハードルが高い。日本語を簡潔にまとめるスキルと文字を入力する速度が求められる。語学の習熟度によってはチャットでメッセージを送れない人もいる。各人の状況を考慮する必要があり、安易に要求しない方がよいかもしれない」

――コミュニケーション以外で気をつけるべき点は。

「人事評価の方法をしっかり示すことだ。外国人材の中には給与明細を見せ合う人たちがいる。評価の差について上司に理由を尋ねる場合もある。上司は目標や期待することをわかりやすい言葉で伝え、それに対するフィードバックを続けることが大切だ」

(聞き手は伊藤威)

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