アステラスが米バイオ企業買収 8000億円、眼科向け拡充

アステラス製薬は1日、米バイオ医薬品企業のアイベリック・バイオ(ニュージャージー州)を約59億ドル(約8000億円)で買収すると発表した。注力分野である眼科領域での新薬を取得する狙いだ。2023年7〜9月中の買収完了を見込む。新たな収益の柱に育て、20年代後半にも本格化する主力薬の特許切れに伴う売り上げ減少に備える。
アイベリック・バイオは米ナスダック市場上場で、眼科領域の新薬の研究開発に強みを持つ。視力低下を引き起こす目の病気の「加齢黄斑変性」の治療薬候補を米国で承認申請中だ。米食品医薬品局(FDA)から優先審査に指定されており、8月19日の審査終了を目標としている。
アステラスは1株40ドルでアイベリック・バイオ株を全株取得する。3月31日終値を6割上回る水準だ。買収資金は手元資金と借入金、コマーシャルペーパー(CP)の発行で賄う。アステラスの企業買収では過去最高額となる。

アステラスは研究開発で重点投資する領域の一つに眼科領域を挙げており、なかでも視力の維持・回復につながる新薬に力を入れている。今回の買収によりアイベリック・バイオが持つ米国での眼科領域の開発基盤を取得し、研究開発力を強化する。
眼科領域での新薬を取得し収益の柱に育て、27年以降に本格化する主力の前立腺がん薬「イクスタンジ」の特許切れに伴う売り上げ減少を補う狙いもある。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。
岡村直樹社長は1日開いたオンライン会見で買収の狙いについて、「新たな収益の柱として(経営計画で掲げる)2025年度の売上高目標(1.8兆円)の達成を確実にするとともに、イクスタンジの独占期間が満了した後の売り上げ減少を補うことができると期待している」と述べた。
世界の製薬大手は、がんやアルツハイマー病など、成功すれば大きな収益を見込める難病の治療薬の開発に注力している。ただ、有望な候補薬を自社だけでそろえるのは難しいため、有望な候補を持つバイオ系スタートアップなどのM&A(合併・買収)を通じてパイプラインの強化を急いでいる。
武田薬品工業は2月に、炎症性腸疾患などの候補薬を有する米ニンバス・ラクシュミを40億ドルで買収した。米製薬大手メルクも炎症性腸疾患の治療薬を開発している米バイオ企業プロメテウス・バイオサイエンシズを買収総額108億ドルで完全子会社化すると発表した。