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「ウィズコロナ株高」の行方を握る米国のインフレ

積立王子への道(37)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

被害は甚大でも対策は迅速だった米国

米国は新型コロナウイルス禍で日本の比でない甚大な災禍を被った。世界最多の約3800万人が感染し、60万人超もの死者を出した。半面、日本の比でなく迅速だったのが政府によるコロナ対策だ。大規模な金融緩和と巨額の財政投入を即座に敢行、経済失速を一時的なものにとどめたんだ。

大胆な金融緩和によりあふれ出たマネーが株式市場に流入し、その勢いが経済のリバウンド期待を高め、さらに株価が上昇するという循環で史上最高値圏で安定している。マーケットの楽観ムードが実体経済を「景気づける」好サイクルを生んだのだ。

加えてコロナ禍に対応した新しい働き方や生活スタイルがIT系サービスを一段と進化させた。GAFA と呼ばれる大手ハイテク企業群が主導して世界的な需要を取り込み、米国企業の業績は全般的に急回復した。早々にコロナ前水準をクリアしたばかりでなく一段と伸長している。そこにワクチン接種が進むにつれ「ペントアップデマンド」と呼ばれる個人のリベンジ消費も加わり、米景気は一気にリバウンドしているわけだ。

その結果のインフレが進んでいる

コロナ禍で先進国が一斉に進めた金融緩和が生んだ投機マネーは資源や素材といった川上産業の価格を先んじて押し上げた。そして米国の場合、消費者ベースの川下需要も増大しているから価格転嫁もスムーズで、消費者物価指数(CPI)も勢いづいて上昇している。つまり米国では消費者レベルの物価が上がる=お金の相対的価値が下がるインフレが進行中なのだ。

さて現状の米国は基本的には健全なインフレといえよう。消費意欲の高まりから需要が喚起されて、自然と供給サイド主導でモノやサービスの値段が上がる。その結果、企業収益増大と利益率の伸長につながり、ひいては労働者の賃金所得も増え、さらにまた消費も伸びるという好循環がみられる。

2%程度のインフレ率に落ち着くか、それとも…

とはいえ、米欧日の先進各国が経済活動に最適なインフレ率水準としているのはいずれも2%程度だ。米国のそれは現状5%超まで上昇している。この状況が長引けば早晩需要がしぼんで景気を減速させることになる。従って、この先インフレ率が低下して2%近辺で安定するか、それ以上の高インフレ率が継続するかによって、株価は現在の高値圏を維持するか、はたまた大きな価格調整を伴う下落に転じるか重要な分かれ目となるだろう。

要するに適度なインフレは健全な経済成長に不可欠な条件だが、行き過ぎたインフレは景気を冷やす要因となる。他方で物価が上がらない、さらには下がり続けるといったデフレは、本来あるべき経済構造をむしばむ重篤な経済の病だ。日本経済は平成期の大半をこの病気に苦しめられ続け、いまだ治癒したとは言い難い。次回はインフレにならない日本経済の課題についてレクチャーしよう。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会副会長。積み立てによる長期投資を広く説き続け「積立王子」と呼ばれる。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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