学びは自発的に行う時代 会社には頼れない
「学び」とお金(1)

今月は「学び」と「お金」について考えてみたいと思います。私たちは22歳まで学校で学び、その知識を武器に65歳まで働く時代に生きてきました。しかしいま、このモデルがいつまで通用するか分からなくなってきました。
働きながらも学び続け、アップデートし続ける時代が始まっているのです。
学ぶ期間は短く、働く期間はあまりに長い
今まで、私たちの「学び」と「仕事」は一方通行でした。つまり、22年ほどかけて学んだ知識をもって就職し、社会人となったらただ働き続けるという流れです。22年かけて社会人になるといっても、高等教育を受ける期間は高校と大学の7年間です。たった7年間の知識と、仕事を通じて学んだスキルをもって私たちは65歳まで働きます。
43年働くということは、学んだ期間の6倍以上です。ゆくゆくは70歳あるいは75歳まで働く時代がやってきますが、75歳まで53年働くとすれば、7.6倍もの長期になります。あなたの「7年の学び」は50年以上働くだけの力となるでしょうか。
スキルは常に陳腐化していく
私たちのビジネススキルは基本的に陳腐化していきます。あなたが周囲より一歩先んじたレベルであっても、徐々にみんながクリアできるようになります。あるいは新しい知識や技術が生まれて、これに対応していく必要もあります。
例えばサッカー選手を見てください。今ではJ2であっても一昔前の日本代表のようなパス回しをしています。ピタリと狙った場所にロングパスを送り、これまたピタリと止めて次の攻撃につなげています。
競技レベルの底上げがあったというのはもちろんですが、新人は最初から高いレベルを求められますし、ベテラン選手も常に新しい技術や戦術に対応し続けていかなければ、生き残ることができません。世界のサッカーの質も向上し続けており、なかなか追いつくことが難しいというのも厳しい世界です。
これは私たちのビジネス環境でも同じです。これからの時代の会社員なら誰もが避けて通れない道です。
常に学び、アップデートし続けていくことが必要になってきているのです。
そして、働く時間が長期化していることも問題です。サッカー選手は引退して次のキャリアに進み、フィールドは若手に譲ります。しかしあなたの会社でのポストは10年で譲るわけにはいかないのです。
自分から学びにいっていますか?
ところで、あなた自身は、仕事をしつつ「学ぶ」姿勢を持ち続けているでしょうか。
例えば、あなたの働く業界の専門誌、いわゆる業界誌を読んでいますか? どんな業界にも専門誌があると思いますが、仕事が忙しいからと職場回覧されても読み飛ばしていたりしないでしょうか。前回、会社の資料室に足を踏み入れて調べ物をしたのはいつでしょうか。シンクタンクのリポートを入手したり、自腹で本を買って自己研さんのヒントを探したりしているでしょうか。
あなたがもし、今のままのビジネススキルにアップデートを加えることなく、このまま10年以上やっていけそうだと思っているなら、考え直してみることをおすすめします。
会社が研修してくれた時代の終わり
かつては、あなた自身が学び直しを意識しなくても、会社がお膳立てしてくれる時代がありました。
1990年代後半、ひとり1台、パソコンが用意されればWindowsの使い方を社内研修で学ぶことができましたし、表計算ソフトの使い方まで手取り足取り学ぶチャンスがありました。今ではすでに操作の基本は習得済みで入社するのが当然とされていますから、昔は恵まれていたことになります。
管理職になれば管理職の心得を宿泊研修でじっくり学んだり、大規模な法改正があればこれまた全職員を相手に研修が開催されたりしました。
もちろんこうした研修がゼロになるわけではありませんが、レールに乗っていればいい時代は終わりつつあります。近年の研修は自分に必要なスキルを自覚し、受けたいテーマを自分で選択、受講する時代になりつつあります。外部の研修プログラムを活用することも増え、学び直しの意識が高い人とそうでない人の差はあっという間に広がるようになっています。
キャリアをコントロールするために学ぶ
終身雇用の中、みんながエスカレーターに乗るように順番に昇格していく時代でないことは、若い世代ほど痛感しているはずです。
大人気アニメ「鬼滅の刃」の冒頭では「生殺与奪の権を他人に握らせるな!」と主人公は一喝されますが、あなたはあなた自身のキャリア形成を自分のものとして考えているでしょうか。
自分の学び直しを自分で考えるということは、自分のキャリア形成を、ひいては自分の人生を、主体的にコントロールするということでもあるのです。
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「FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。