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「全員iDeCo時代」10月から 自分は?掛け金は?

知っ得・お金のトリセツ(93)

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周囲からの問い合わせが増えてきた。「iDeCo(イデコ)、入った方がいい?」。10月の法改正を受け今までiDeCo、すなわち個人型確定拠出年金(DC)への門戸が実質的に閉ざされていた、企業型DCのある会社のサラリーマンも加入可能になったがゆえの胎動。自分も含めマスコミも「全員iDeCo時代到来」と盛り上がる。だが勇んで「10月」を目指すとこれが結構、入れない人が存在する。

DCの非課税枠は企業型+個人型で共有

iDeCoの特徴は手厚い税制優遇。税をおまけしてもらいながら、公的年金の土台の上に自分年金の貯金箱を築くイメージだ。資金の拠出時、運用中、受給時にそれぞれ非課税、もしくは減税措置があり「3度おいしい節税の王様」だ。だから「入った方がいい?」と聞かれれば答えはもちろんイエスだ。だが、10月から全員がiDeCoに入れるか、もしくは入った方がいいかというと別の問題。なぜなら税優遇枠は無尽蔵ではない。DCへの拠出上限額は企業型+個人型の合算で決まっている。月額5.5万円、もしくはDCに加えてDB(確定給付型企業年金、会社が運用して将来の受取額を約束するタイプ)も併用している場合は半分の月2.75万円だ。全ては枠との兼ね合いだ。

企業型DCの掛け金は会社次第

つまり中には企業型DCだけで「枠いっぱい」なんて恵まれた人も存在しうる。企業型DCの掛け金の決まり方は会社ごとに異なる。年齢や勤続年数、役職等々何をどれだけ勘案して月にいくら積み立てるかは会社次第だ。

そもそもだが企業型と個人型、2つのDCはお金の出し手が違う。誤解も多いが企業型DCの掛け金はあくまで会社のお金。個人は運用方法を選び、その運用結果を引き受けるが自分の懐は痛まない。一方、個人型のiDeCoの原資は自分のお金だ。お給料から税と社会保険料が差し引かれた後の手取りから積み立てる。「どっちがお得」と比べるのも土俵が違うが、他人のお金の方が有り難いのは間違いない。仮に企業型DCの掛け金が多額で「iDeCo枠」が残らないとしても「企業型の方を下げる」という選択肢は意味がないし、あり得ない。

選択制の場合は「あらかじめ下げる」

だが、中にはその手をとれるサラリーマンもいる。最近導入例が増えている「選択制DC」と呼ばれるタイプの人だ。月5.5万円もしくは2.75万円の上限額の範囲内で、その額を給与としてもらうか、DC掛け金に回すかを会社員本人が選ぶ仕組みなので企業型DCの掛け金を下げて給与でもらっておけば、手取りからiDeCo枠に回す余裕が生じる。だが選択制の額の決定は春に年1回の企業が多い。今、枠がいっぱいであれば10月からiDeCoを利用することはできない。iDeCoを使いたければ、まずは来春に企業型DC掛け金の額を引き下げるところから始めよう。

その際、iDeCo自体の拠出上限額との兼ね合いもある。例えばDB、DC両方あるサラリーマンの月額掛け金は1.2万円が上限。DCの拠出額合計が上限の2.75万円に収まっているからといってiDeCo2万円、企業型7500円という選択肢はないわけだ。

悩ましいのはマッチング拠出

さらに悩ましいのは企業型DCの中でも「マッチング拠出」の制度がある人かもしれない。マッチング拠出は会社掛け金に加え一定の範囲でサラリーマンが自分の「手金」を上乗せできる制度のこと。会社にこの制度があり、実際に今マッチング拠出をしている人は「さらにiDeCoも」というわけにはいかない。10月の法改正後もマッチング拠出とiDeCoは二者択一。どちらかを選ぶ必要がある。

両方とも掛け金を出した時の所得控除のメリットは同じ。拠出額相当分は所得から控除され(税金の計算上、稼がなかったことになり)その分税金が減る。マッチングは会社の制度なので口座管理手数料は会社が出し、運用商品の品ぞろえも会社が行う。つまりコスト重視ならマッチングを利用した方が安上がりだが、眼鏡にかなう運用商品がない可能性もある。その場合はiDeCoの大海にこぎ出す意味がある。このタイプの人に聞かれた場合は「他に投資したい商品があるなら別だが、マッチングでもいいんじゃない」と答えることにしている。iDeCoを検討する前にまず自社にマッチングの制度がないか確認しよう。ただし……。

会社掛け金とiDeCoの枠を比較

再度このフレーズを繰り返すことになる――「全ては枠との兼ね合いだ」。マッチングの会社員掛け金にはもう1つ「会社掛け金と同額まで」という上限がある。前述の企業型DCの通り、会社掛け金額は会社次第。例えば仮に新入社員で会社掛け金が1000円しかないとしたらマッチング拠出額も1000円が上限。それならばiDeCoを選択した方が2万円という(企業型DCのみの場合)税優遇枠をフルに使うことができる。一般には、年齢が若く、会社掛け金が少ない(=すなわちマッチング拠出額が少ない)うちはiDeCoの利用を考えるのも一案だ。

24年に待つもう一段の改正

もうやめたい。だがやめられない。実は2024年には再度ルール改正が待っており、この改正を見越して動かないと、10月以降せっかく始めたiDeCo戦略が崩れる可能があるのだ。詳しくはまたの機会とするが、24年12月以降は税優遇の枠の管理がDC+DBで共通化された上、上限が5.5万円に引き上げられる方向。つまり残されたピース、会社のDBへの掛け金相当額を知る必要があるが、この数字は日ごろから従業員に明らかにされているものではない。まずは9月中にも知らされるであろう、この数字をそしゃくした上で、DBが手厚い会社の社員は慌ててiDeCoに入らないことも選択肢となる。全ては枠との兼ね合いなのだ……。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。
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