利上げでも米国株の上昇は続く 狙い目は「CAMBRIC」
プロが読む 2022年後半の株式相場の見通し(下)
――米国の利上げが始まりました。今後の株式相場の見通しは。
金利上昇は株価にマイナスといわれていますが、過去の米国の利上げ局面を振り返ると、米国株相場は堅調に推移しています。例えば2004~06年は17回、15~18年は9回の利上げが行われましたが、S&P500種株価指数は多少上下しながらも右上がりで推移しました(下図の点線囲み部分)。

過去に遡ってもこの傾向は同じです。1950年以降の12回の利上げ局面でS&P500は11回上昇し、下落したのは1回だけ。期間中の平均上昇率は9.4%(年率換算)にもなります。
――利上げなのに株価が上がるのはなぜですか。

その時々で外部環境が異なるので一概には言えませんが、利上げの局面は金融相場から業績相場への移行期になることが多いのです。景気が回復して、企業の売り上げが伸びる。インフレなどでコストが上がっても、それ以上に企業の1株利益が伸びる。その結果、株価が上がるという構図です。別の言い方をすれば、「利上げできるほど景気がいい」ことになります。
市場も最初はおっかなびっくりの反応で、初回の利上げまではボラティリティーが高まる傾向がありますが、それ以降は中間反落を挟みながら上昇する展開になります。経験則としては「利上げを恐れるな」ということでしょう。
――逆に利上げが終わると株価が反落する傾向が見られます。利上げの終了時期はどうすれば分かりますか。
一つのサインとして、米2年債金利と10年債金利の「逆イールド」があります。通常は10年債の金利が高くなりますが、2年債が逆転する現象を指します。逆イールドが発生すると1~2年後に米国が景気後退になり、それと前後して株価も下落する傾向があります。
――今年3月に逆イールドが発生しましたが……。
逆イールドが利上げ終了のサインとなるのは、高い金利水準で逆転が起きた時です。好景気で金利が高い時に、景気の先行き不安を織り込んで10年債の金利が低下することで逆イールドが発生すると、サインになります。3月の逆イールドは金利の水準が2%台と低く、10年債の金利も上昇しているので、サインにはならないとみています。
「CAMBRIC」と呼ばれる7つの分野に注目
――今後の株式相場の見通しは。
過去の利上げ局面と同様に、右上がりの上昇が続くと予想します。今はインフレへの警戒感が高まっていますが、エコノミストの予測では、米国の消費者物価指数は今年の1~3月がピークで、年末に向かって徐々に低下する見通しです(下グラフ)。足元でインフレ率が急騰しているので「どこまで上がるか分からない」と不安が大きくなっていますが、一旦ピークをつけると市場の雰囲気も落ち着くと思います。

また、企業業績も堅調です。アナリストが予想するS&P500の12カ月先予想1株利益は、コロナショック直後の20年3月を底に上昇を続け、足元で230ポイントを超えています。PERが一定なら、株価の切り上がりが期待できます。
――狙い目の銘柄は。

デジタル革命を牽引するテック企業が中長期的に有望とみています。特に、「CAMBRIC」と呼ばれる7つの分野に注目しています(右)。これらの多くに、ナスダック市場の時価総額上位銘柄が該当します。個人投資家は、ナスダック100指数に連動するインデックス型投資信託などに投資するのが最も簡単でしょう。
米国株への投資で重要なのは、「長期・分散・積み立て」を意識することです。昨年秋から利上げを警戒して相場が調整しましたが、数十年の長期スパンで見れば、さざ波のようなものです。相場の高値や安値を無理に当てようとせず、淡々と積み立てを続ければ、いずれリターンが付いてくるのが米国株の魅力です。
――日本株相場の見通しは。
日本株は、円建てのニューヨークダウ指数と高い相関があります。つまり、米国株が堅調で、円安基調が続くのであれば、日本株も堅調な相場が見込めます。日経平均株価は、年末に昨年9月の高値である3万795円を突破するとみています。
(市田憲司)
[日経マネー2022年6月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/4/21)
価格 : 750円(税込み)
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