高配当株で利回り一択は禁物 プロに聞く有望株の選び方 - 日本経済新聞
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高配当株で利回り一択は禁物 プロに聞く有望株の選び方

高配当株&株主優待株 23年の狙い目(1)

高配当株に追い風が吹いている。配当金だけでなく銘柄によっては株価上昇も期待できそう。ただし、配当利回りだけを手掛かりに銘柄を選ぶのは危険だ。プロに高配当株選びのポイントを聞いた。

高配当株が好調だ。グラフは日経平均株価と東証マザーズ指数、そして予想配当利回りの高い50銘柄を集めた「日経平均高配当株50指数」の2022年の値動きを比較したもの。日経平均株価や東証マザーズ指数がマイナスに沈んだのに対し、高配当株はプラスを確保。さらに足元では上昇トレンドであることが分かる。

長期の推移を確認する

高利回りの配当に加えて値上がり益まで狙えるとなれば、高配当株に投資しない手はない。ただし配当利回りと足元の業績だけを手掛かりに高配当株を探すのは早計だ。

例えば海運大手の商船三井。船賃高騰で業績が急拡大したことで配当が急増。予想配当利回りは17%を超える(1月31日時点)。株価も乱高下はしているものの、数年前からは大きく上昇している。

ただし業績は市況次第。長期で過去の株価や配当、業績の推移を確認すると、いずれも増減が激しい。長期かつ安定的に配当が欲しいと考える投資家には買いにくい。

また、株価は上昇しているのにPER(株価収益率)は1.4倍、PBR(株価純資産倍率)は0.62倍と、指標的には超割安で不人気な点も気になる。

高配当株探しの2つの注意点

では、配当利回りと足元の業績以外に、どのようなポイントに着目して魅力的な高配当株を探せばよいか。

配当株投資のスタイルには①長期で安定的に配当を受け取りたい②配当が年々増えていくことも期待する③さらに株価上昇も期待する――という3つの段階がある。

有望高配当株を探す最初の手掛かりになるのは配当利回りだ。スクリーニングツールを使えば簡単に抽出できるが、高配当株には注意すべき点が2つある。

まず「高配当株は割安株」であること。配当利回りが市場平均より高いのは株価が割安だからだ。これは投資家が買うのをためらう何らかの理由があることを示す。

2つ目が配当の減額を発表すると大きく株価が下がるケースが多いこと。これは配当目当てで保有する投資家が多いからだ。

この高配当株の2つの特徴を踏まえ、①のような安定高配当株を探すには、減配リスクを抑えるために業績、自己資本比率、配当性向などをチェックする。さらに株価下落リスクを小さくするためにPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の低い銘柄を選好する。これは株価が割高だと減配になった時に大きく下げる可能性が高いからだ。

上がる高配当株を探す

では②や③のように、配当の安定的な受け取りだけなく、増配や株価上昇も狙える高配当株を選ぶにはどこに着目すればいいのか。

ニッセイアセットマネジメント投資工学開発センター長の吉野貴晶さんは「日本版ダウの犬」戦略が有効だと言う。「ダウの犬」は米国で広く知られた、高配当株を割安に購入して、配当を受け取りながら値上がり益を狙う投資法だ。

ダウ工業株30種平均の採用銘柄を配当利回りの高い順に並べ、上位10銘柄へ均等投資する。そして1年後、再び採用銘柄を配当利回りの高い順に並び替えて、上位10銘柄へ均等に投資する。同時に上位10銘柄から外れた銘柄は売却する。これを毎年繰り返す。

同じ投資をTOPIXコア30の採用銘柄で実行するのが日本版ダウの犬だ。採用銘柄の配当利回り上位10銘柄に投資した場合、利回りは約3.9%(1月30日時点)。高配当株投資と言っても差し支えないだろう。

吉野さんが2004〜21年の17年間のパフォーマンスを検証したところ、配当込みの東証株価指数(TOPIX)の約2.7倍に対し、日本版ダウの犬(10銘柄)は約4.1倍、リターンは2倍近くだった。銘柄を上位5銘柄に絞ると約4.9倍と成績はさらにアップする。

「コア30に採用されている時点で減配・株価下落リスクはある程度限定され、一定以上の成長性も期待できる。配当利回りに着目することで株主還元姿勢が強い銘柄を選べる。長期で高配当と株価上昇を狙うなら有効な投資手法と言える」(吉野さん)

吉野さんは、株価上昇が期待できる高配当株の探すには自社株買いのチェックも有効だと話す。「自社株買いの実施は株主還元姿勢の強さを示すと同時に、経営者が自社株が安いと考えていることの表れでもある」(吉野さん)

配当の成長性に着目

「財務の健全性に成長性を加味してみては」と語るのは智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジストの大川智宏さんだ。

「この先、米景気の後退で金利が下がり始め、日本でもインフレが高進していくことになれば、割安配当株が強烈に買われる今のような状況が続くとは限らない。ここから配当株を選ぶなら配当利回りに加えて成長性も見ておいた方がよい」(大川さん)

大川さんが着目してはと提案するのは配当成長率だ。10〜15%の成長が望ましい。加えて過去10年間のうち増配した年の割合で企業の配当支払いへの姿勢を見る。

「配当を増やせるのは成長企業の証し。株主還元に積極的なら増配も期待できる。配当利回りが高く、配当も成長しているような銘柄は、大化けは期待できないが、相場のいろいろな局面に対応でき、ある程度の株価上昇も配当の増加も期待できる」(大川さん)。大川さん流の成長性を加味した高配当株のスクリーニング方法は下の図表の通りだ。

(本間健司)

[日経マネー2023年3月号の記事を再構成]

日経マネー2023年3月号 特選 高配当株&優待株で勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/1/20)
価格 : 800円(税込み)
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