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夢を現実に 1億円なくても早期リタイアは可能

日本版FIREを考える(1)

写真はイメージ=PIXTA

2019年の「老後2000万円問題」、20年の「新しいお金の生活様式」など、その年を象徴するお金のキーワードを考えてきましたが、今年の話題は「FIRE」でしょう。米国で始まり、経済的独立と早期リタイアという夢を実現しようというムーブメントです。これは本当に可能なのか、また日本で考えるなら注意すべき点は何かを今月は考えてみたいと思います。

米国のミレニアル世代から支持

米国で流行しているFIREというムーブメントが日本でも話題となっています。マネー雑誌の特集になるだけではなく、若者向け雑誌やネットの記事、動画でも多く取り上げられ、高いアクセスを記録しているそうです。

FIREというのはFinancial Independence, Retire Earlyの略です。経済的な独立を果たせるだけの資産形成を行い、早期リタイアの実現を目指す取り組みを指します。

米国では特に、ミレニアル世代(1981~96年生まれ)、つまり今世紀に入ってから社会人になった世代に支持されているといわれます。

そして日本にもそのブームが広がりつつあります。米国のFIRE伝道者の解説本が翻訳されベストセラーとなっているほか、国内の早期リタイア成功者が自身の投資手法を紹介する本もFIREのタイトルを冠してよく売れているようです。

実は私も、体系的にFIREの手法を整理した「日本版FIRE超入門」という本をこのたび上梓(じょうし)させていただきました。

早期リタイアというのは誰もが描く、大きな夢です。8月は「真夏の夢」ということで日本版FIREを考えてみたいと思います。

経済的独立と早期リタイアの夢は万国共通

FIREの頭文字の前2つが示す経済的な独立、そして後ろの頭文字2つが示す早期リタイア、というのは日本に限らず万国共通の夢であるようです。

いつまでも働かされるのではないか、というのは誰しも感じている恐怖でしょう。会社に従属した状態を示すスラングとして「社畜」という言葉がありますが、隷属したような状態で働き続けるのはイヤなものです。

しかし、ほとんどの人が60歳代になるまで働き続けます。日本では65歳が標準的な公的年金の受給開始年齢と設定されており、それ以降は働かなくても生活の不安は解消されます。同時に65歳まで会社は雇用を約束する義務がありますから、「65歳まで働く」と考えるのがスタンダードです。

しかし、経済的な余裕を持つことができれば、65歳まで働く決まりはありません。60歳の定年退職を区切りとしてリタイアしても、50歳代で早期リタイアしてもいいわけです。本来、自分のリタイアするタイミングは、自分で決めればいいはずです。

しかし65歳リタイアに多くが収まるのは、早期リタイアの大前提として「公的年金がもらえるまで、無収入ではやっていけない」からです。

FIREというと、若者の無謀なチャレンジと斜に構えてみる人も多いようですが、経済的な余裕を持ち、自分の引退年齢を自己決定しようという取り組みは、きちんと生活設計を立てて計画的に行う、マネープランニングでもあります。

典型的FIREは25年分の収入確保を目指す

米国のFIRE本などをひもといてみると「25年分の生活コストをためること」を経済的独立の条件とすることが多いようです。例えば年400万円相当でリタイア生活を過ごすなら(税負担等が軽減されるので、現役会社員の500万円くらいのイメージに相当する)、25年分、つまり1億円あれば早期リタイアできると考えます。

そして、リタイア後は「年4%の収益確保」をすることを目指します。こちらは、25年分の資産の4%相当が「毎年の運用収益額=年間生活費」となります。つまり、資産は基本的に維持されつつ、経済的不安を一生抱えずに暮らしていけるというロジックです。

そのために、必死に資産形成を目指します。キャリアアップを目指し、徹底的に節約をします。ミニマリストのライフスタイルが紹介され、年収の半分以上をためる強者もいるそうです。

そして、資産運用も怠りません。銀行預金で低金利のままにせず、投資を組み入れます。投資方法については各論がありますが、低コストのインデックス運用で市場の上昇率を確実に得る方法が勧められることが多いようです。

日本の類書では、高いリスクをとった運用を選択することもあります。同じゴールに向かうとき、年4%のリターン獲得より、年10%のリターンを獲得したほうが一気に目標を引き寄せられるからです。ただし、そのリスクが高すぎる場合、元本割れのリスクも大きくなるので注意も必要です。

日本向きFIREとは何か

さて、米国のFIREの概略を見てきましたが、「日本のFIRE」というのはカスタマイズの余地があるように思います。たとえば、

・日本でのキャリアアップの方法、副業のあり方

・日本での家計管理や節約のコツ

・世界でトップクラスの長寿、さらなる寿命の延びへの対応

・高齢期雇用の70歳あるいはそれ以上への延伸、標準的リタイア年齢の上昇

・公的年金制度の再評価

などです。

例えば、公的年金をベースにすれば、1億円を一生涯持ち続けるような設定は不要です。日本では日常生活を営むことのできる程度の公的年金(老齢厚生年金)がありますから、65歳以降は生涯にわたって固定収入を得られます。

老後のゆとりや豊かさのための収入や貯蓄を自助努力で確保するとしても、65歳段階で2000万円プラスアルファがあればよいでしょう。

また、40歳でリタイアするからこそ25年分の資産を求めるわけですが、50歳代あるいは60歳での早期リタイアを考えればそれほど多くの資産をゴールに設定しなくてもいいはずです。

拙著「日本版FIRE超入門」では、日本の諸制度にもとづき、日本で実行可能な早期リタイアとその準備法を考えてみましたが、本連載ではそのヒントを5週にわたって紹介してみたいと思います。

1億円がなくても、早期リタイアの夢は実現可能なのです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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