ロシア、金利2倍の20%に上げ ルーブル急落で防衛

【モスクワ=桑本太】ロシア中央銀行は28日、政策金利を従来の9.5%から20%に引き上げると発表した。利上げは11日の金融政策決定会合以来で、2月に入って2回目になる。ウクライナ侵攻による米欧の経済制裁で通貨ルーブルが急落し、28日には過去最安値を更新した。通貨安に伴うインフレ加速を抑えるため、緊急の利上げに踏み切った。
政策金利が20%台になるのは2003年以来およそ19年ぶり。国際決済銀行(BIS)などによると、アルゼンチンの42.5%に次いで高く、トルコの14%を上回る水準だ。
ロシア中銀のナビウリナ総裁は28日の会見で「現在、ロシアの金融システムと経済は全く異常な状況にあり、中銀は柔軟に必要な手段を講じていく」と述べた。
米欧はロシアの中央銀行にも初めて制裁を科し、外貨準備の取引を制限する厳しい措置を決めた。為替介入が難しくなるとの見方から、28日の外国為替市場では通貨ルーブルが急落。ドルに対しては一時1ドル=120ルーブル近辺と過去最安値を更新した。ロシア中銀の利上げ発表後も、なお安値圏で推移している。
ロシアでは28日、ルーブル安を懸念しドルを早めに手元に確保しようという動きも強まった。週末にはモスクワの都市部など一部のATMには預金を引き出そうと行列ができた。ロシア中央銀行はモスクワ証券取引所の同日の株式取引を終日見送ると発表。3月1日の取引については現地時間午前9時(日本時間午後3時)までに方針を公表する。非居住者の証券売却を禁じており、日本からは売却できなくなっている。
すでにロシアのインフレ率は1月時点で8.7%と中銀目標の4.0%を大幅に上回る。エネルギーや食料品価格の高騰に加え、ルーブル安で輸入物価の上昇を通じてインフレに拍車がかかる可能性が高まっている。ロシア中銀は大幅な利上げで通貨安に歯止めをかける狙いだが、急激な利上げは金利上昇を通じて国内経済を冷やす恐れもある。
ロシア財務省とロシア中銀は輸出企業に対し、対外貿易での売上高の80%に相当する外貨を強制的に売却することを義務付けることも決めた。28日から導入する予定で、外貨の売却によりルーブル安を抑える狙いだ。
過去にロシアでは、チェチェン紛争が激化していた1990年代前半に政策金利は210%まで上昇。その後20%台まで下がる局面もあったが、98年には膨張した財政赤字に対処するため150%まで引き上げた。株価、債券、通貨がそろって下落する「トリプル安」に見舞われ、ルーブル危機に陥った。99年にはインフレ率が85%台まで上昇したが、プーチン氏がはじめて大統領に就任した2000年以降は、インフレの抑制に成功している。
今回もプーチン大統領は国民生活を圧迫するインフレを警戒する。ウクライナへの侵攻を決める前の2月17日の政府会合では「インフレ抑制に向けて効果的な対策を講じる必要がある」として政府と中銀の協調を求めていた。
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