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年金改革節目の年 20年かけ「65歳以降」が完了

ねんきん月間に考える(1)

今月は「ねんきん月間」として国がいろんな広報に取り組む月です。そこで「Life is MONEY」でも公的年金制度と私たちの生活について考えてみたいと思います。

私たちを陰から支える年金という仕組み

公的年金制度ほど理解が十分でない割に国民の関心が高く、結果として不満を感じさせている社会制度はないと思います。

現役世代のうち、保険料を引かれている数十年のあいだは基本的にメリットを実感することができません。むしろ年収の9.15%が保険料として引かれるのは厳しい負担に思えます(同額の会社負担を加えた年収の18.3%が厚生年金保険料率)。

年金制度は障害年金や遺族年金など、リスクに備える社会保障としても大きな役割を担っていますが、なかなかその役割を実感できません。利用することになるのはごく一部の人々だからです。

老後に年金をもらい始めてからも、国が終身で年金を支給してくれるという大きなメリットは60~70代ではなかなか実感できません。結果として100歳を超えて大往生を迎えるときには実感するかもしれませんが、それを言葉にする余裕はないでしょう。

仮に夫婦の年金額が月20万円とすれば、平均的な老後を20年としても4800万円の給付、夫婦ともに健康で30年の老後があれば7200万円の給付を受けるわけですが、7200万円が預金として積まれるわけではありません。そのほとんどすべてが、日々の日常生活費として使われていくので、これまたなかなかメリットを実感できません。

それでも、公的年金制度が存在しなかったら、あるいは改革が行われていなかったら、私たちの人生設計はまったく違ったものとなるでしょう。現役時代は「老後に1億(20万円×12カ月×40年)」を目指して貯蓄に取り組む必要がありますし(2000万円ではなく!)、実行できなかった場合、永遠に働き続けるか極貧の生活を送るしかありません。

年金制度は、陰から私たちを支える大事な仕組みであるわけです。

年金制度の標準受け取り開始年齢は65歳に

今世紀に入ってから長い時間をかけて「60歳から受け取れる厚生年金」を「65歳から受け取れる厚生年金」にシフトする取り組みが進められました。

1994年および2000年の年金制度改正を受けて行われたもので、それまでは60歳から「国民年金相当分+厚生年金相当分」をもらえる制度を、2段階で65歳からもらう制度にシフトしてきました。

第1段階は「国民年金相当分を65歳へ引き上げる」取り組みです。昭和16年(1941年)4月2日生まれ以降の人から始まりました。昭和16年4月2日生まれの人が60歳になったのが2001年4月ですから、まさに今世紀に入ってからのことです(女性は5年遅れで実施)。

第2段階は「厚生年金相当分を65歳へ引き上げる」取り組みで昭和28年(1953年)4月2日生まれ以降の人から始まりました。生年2年ごとに1歳、受給開始年齢が繰り上がっていきました。

そして、昭和36年(1961年)4月2日生まれ以降、つまり、2021年4月2日以降に60歳を迎えた男性から「国民年金も厚生年金も65歳から」という切り替えが完了したことになります(女性は5年遅れということになっていますので、昭和41年=1966年4月2日生まれ以降からが対象です)。

今年はまさに公的年金制度改革の節目の年となりました。公的年金制度が「65歳から受け取るのが基本」という制度への移行を完成させたといえるのです。

20年で社会は大きく変化

この20年は大きな社会変化があった20年でもありました。

まず、この20年は「団塊世代の引退」という人口動態的な大転換が起きました。戦後の日本の経済的発展を支えてきた「働き手」であり、年齢層ではもっとも多い世代でした。第1次ベビーブームでは3年間で800万人が出生したとされますが(2020年の出生数は84万人とされますので大きな違いです)、この世代が一気に引退し「年金生活」に入ったわけです。

そして、60代でも元気で過ごせる長寿健康社会が到来しました。健康寿命の延びは著しく、70歳でも元気に活動できる時代がやってきました。20年前と比べて5~10歳くらい高齢者の身体は若返っているという調査もあるそうです。

65歳まで働ける高齢者雇用制度の環境整備も進みました。これは公的年金が65歳開始になるのと同期した取り組みでしたが、今や民間企業の現実は年金制度や高齢者雇用法制を先行しています。70歳を過ぎても働ける企業は増加し、すでに3割を超えているといわれます。

公的年金制度や高齢者雇用制度は、こうした時代背景を踏まえて、最低限度行うべき改革をなんとかギリギリ間に合わせることができた、といえます。

これがもし、60歳から受け始める制度を維持し続け、年金財政破綻のリスクを高め続けた(あるいは無制限に保険料率を高め続けた)としたら、今はどうなっていたでしょうか。

基本的に破綻しない制度、批判でむしろ強い制度に

この20年は公的年金に関する批判が相次いだ時期でもありました。雑誌や新聞、テレビでは年金批判があふれ、破綻する可能性を報じました。

20年代には公的年金の積立金は底をつく、という主張をしていた批判本もあります。現実には今、公的年金全体で200兆円以上の資産があるわけで、予想はずいぶん外れていることになりますが、悪い印象は強く国民の心に刻まれてしまいました。

公的年金批判、年金破綻論のほとんどは不適当な論説でしたが、好意的に解釈すれば、その批判精神が年金制度改正に織り込まれてきたことで、破綻のリスクが回避されたともいえます。破綻論者は実は、問題提起をすることで年金破綻しないかじ取りに協力していた、というわけです。

いずれにせよ、破綻そのものを論じるステージはもう終わりました。ここからは給付水準の維持や負担の不公平感の解消などにリソースを割くステージに入っているわけです。

公的年金について私たちはどう向き合うのか、来週以降も考えてみたいと思います。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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