/

企業統治の指針に「人権尊重」明記 金融庁・東証

(更新)
think!多様な観点からニュースを考える

金融庁と東京証券取引所は6月に施行する上場企業への「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治指針)に人権を尊重するよう求める規定を盛り込む。中国のウイグル族の人権侵害で対中制裁に踏み切った欧米の投資家を中心に問題意識は高まっている。日本企業の人権意識が低いとみなされれば投資対象から外れるリスクがあり、指針を通じて自発的な対応を促す。

東証は意見公募を経て6月に改定指針を施行する。東証が2022年4月に予定する市場再編で現在の市場1部に相当するプライム市場に上場する企業などを対象とする。

具体的には指針の補充原則の中に、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティー(持続可能性)を巡る課題の一つに「人権の尊重」を盛り込む。企業の取締役会は人権を重要な経営課題と認識し「(対応に)積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきだ」とする方向だ。

日本政府は20年に企業に人権対応を促す「ビジネスと人権に関する行動計画」を策定しているが、法的拘束力はない。統治指針に人権に関する規定を盛り込むことで、より踏み込んだ対応を企業に促す。

人権問題を巡っては国際社会で関心が高まっている。国連は08年に発表した「人権の保護・尊重・救済のフレームワーク」で、企業が事業活動に伴う人権侵害リスクを把握し、予防や軽減策を講じる「人権デューデリジェンス」の重要性を提言した。

法整備で先行するのは欧州だ。英国は15年に「現代奴隷法」を制定し、企業に原料調達先の調査や報告を求めた。フランスなどでも同種の法整備が進んでいる。欧州の企業統治指針そのものに「人権という文言が直接的に入っている例は確認していない」(東証)という。

米国では20年6月、ウイグル族を弾圧する中国当局者への制裁に道を開くウイグル人権法が成立した。7月には人権侵害にかかわった個人や団体の米国内の資産の凍結に踏み切った。中国以外では、ミャンマーでクーデターを起こした国軍とつながりが深いとされる同国の複合企業と取引をした企業にも厳しい視線が向けられている。

日本では21年4月に新疆ウイグル自治区産の綿花をめぐり、ファーストリテイリングが仏の非政府組織(NGO)などから強制労働の恩恵を受けているとして告発された。20年にはオーストラリアのシンクタンクが強制労働の疑いのある工場があるとして、日本企業11社を含むリストを公表した。

指摘された企業の多くは関連性を否定したが、人権を巡る法整備が進む欧米に比べると日本の対応は官民ともに遅れているのが現状だ。とくに製造業はサプライチェーンが世界中に広がり、「隅々まで問題がないか調べるのは難しい」(大手電機メーカー担当者)のが実態だ。

ただ、国際社会で人権意識が低いとみなされれば不買運動が広がったり、海外での資金調達が困難になったりする可能性もでてくる。金融庁と東証は指針を通じて企業により踏み込んだ対応を促し、人権問題から生じるリスクに先手を打つ方針だ。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

  • この投稿は現在非表示に設定されています

    (更新)
    (0/300)
(0/300)
投稿内容をご確認ください
投稿チェック項目誤字脱字がないかご確認ください
投稿チェック項目トラブル防止のため、記事で紹介している企業や人物と個人的つながりや利害関係がある場合はその旨をお書き添えください
投稿チェック項目URLを投稿文中に入力する場合は、URLの末尾にスペースか改行を入れてください
詳細は日経のコメントガイドラインをご参照ください

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン