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新生銀行を悩ませる、SBIの「48%支配」という奇策

SBIホールディングス新生銀行の対立が、長期化の様相を呈している。SBIが新生銀行へのTOB(株式公開買い付け)を始めて3週間が経過したが、新生銀は依然、旗幟(きし)を鮮明にしていない。同行が慎重にTOBの是非を見極めるのは、SBIが規制の盲点をついて繰り出してきた「48%」という株式取得比率への対応に悩むからだ。

新生銀はSBIと質問状のやりとりでSBIの意図を探ってきたが、TOBへの賛否は示していない。SBIは「株主が判断するのに十分な時間を確保する必要がある」として新生銀が求めたTOB期限の延長に応じており、決着には法律の上限である60営業日を待つ必要がある。

新生銀とSBIが折り合わない背景には「銀行法」と「金融商品取引法」という2つの法律の解釈の違いがある。

銀行法は銀行議決権の過半を取得する銀行を子会社と定める。実質的に経営を支配しているかより、議決権比率という「形式面」に重きを置く。一定の規模を持つ銀行を子会社に持つ場合は通常、出資比率が20%を超えるときに取得する主要株主認可より厳しい審査を突破する必要がある。不動産業やバイオといった一部事業から撤退を迫られるなどグループ業務に制約がかかる。

そこでSBIは取得の上限を48%に設定し、規制の網をかいくぐった。SBIが採用する国際会計基準(IFRS)では、議決権の過半を握らずとも新生銀を連結子会社にできる。役員の派遣など「実質的」に経営を支配しているかで判断しているためだ。

新生銀はSBIが議決権の過半を握らないまま経営権を取得することに慎重姿勢を示す。親会社が銀行を私物化する「機関銀行化」を通じ、少数株主がないがしろにされるといった懸念を抱いているためだ。機関銀行化とは、銀行の資金を親会社が手掛けるリスクの高い事業に融通させたり、親会社のライバル企業への融資を引き揚げさせたりすることを指す。

SBIは「機関銀行化や対象者少数株主利益の毀損といった事態は決して発生してはならず、疑念を生じさせるような所作に及ぶことは全く想定していない」と主張する。独立した特別委員会を設けるなど、SBIと少数株主の間で利益相反がないかを確認する体制を整えるなど配慮を示す。

もう一つの論点は金融商品取引法で定めるTOBの手法だ。日本では3分の2以上の株式を取得する場合、TOBの応募株式をすべて買いとる「全部買い付け」を実施する必要がある。SBIのケースでは取得の上限が48%に定められているため、全部買い付けは不要だ。

そこで、部分買い付けが持つ「強圧性」が争点になる。強圧性とは、TOB後に少数株主の利益がないがしろにされ企業価値が下がると判断した場合、本来であればTOBに反対すべきにもかかわらず、賛同せざるを得なくなってしまう状況を指す。

例えば、TOB価格が2000円だが将来、株価が1000円に下落しそうだと考えたとする。このケースでは株主はTOBに反対すべきだが、仮にTOBが成立すると売却の機会を失う可能性があるので、TOBに応じ2000円で株を売却しようと考える誘因が働く。

英国では30%以上の株式を取得する場合は、全部買い付けをする定めがあるが、日本ではこうした法整備はされていない。経済産業省の幹部は「日本のルールでは少数株主の利益を十分に保護できない」と指摘する。

新生銀は強圧性の問題を排除するために、買収防衛策の発動を審議する株主総会で、TOBへの賛否を株主に判断してもらおうと考えるが、SBI側は「買収防衛策自体が不当で、経営陣の自己保身のために導入したものである疑いが強い」として反発を強めている。

新生銀は少数株主の問題を解消するために、「(金融庁の)認可を得て100%の株式を取得すべきだ」と指摘する。SBIは回答書で「48%の取得であったとしても相乗効果の追求や経営への関与強化は十分可能で、新生銀の株主価値の向上に資する」と反論。議論がかみ合わない。

新生銀は10月中旬にもTOBへの賛否を表明する方針だ。SBIは具体的な企業価値向上策を示すよう新生銀に求めるが、「貴重な指摘として参考にする」として対案を明確に示していない。SBIのTOBに反対する場合は、株主の支持が得られる独自の成長戦略を示す必要がある。

(三島大地)

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