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株価を動かす「思惑」 新総裁誕生の賞味期限は? 

積立王子への道(38)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

首相退陣が「買い」だったワケ

1年前に政権を握った菅義偉首相に対する支持率は新型コロナウイルスにタイムリーな対策を打てず感染拡大を制御できなかったとして、低下の一途だった。これでは目前に控えた衆院選を戦えないとのムードが自民党内で高まり不出馬表明へとつながった。

この時点で市場参加者はこぞって株式市場に「買い」で反応した。衆院選前に事実上の次期総理決定戦となる総裁選が複数候補で行われることが決まったためだ。メディアや評論家たちはもっともらしい理屈をつけて株高の解説をするが、日々の株価はそんな高尚なロジックで決まるわけではない。言うなれば市場参加者の瞬発的な条件反射による値動きなのだ。

誰が首相になっても予期される大盤振る舞い

とはいえ、マーケットが首相の交代を株高と反応する背後にザックリとした読みはある。誰が新首相になっても「コロナ失政」による景気回復の遅れを挽回するため、最優先で景気対策としてまとまった財政投入を図るに違いない、との筋書きだ。

その読みに中身はない。各総裁候補の具体的な政策や経済対策についての考え方が菅首相の総裁選不出馬表明の時点で明らかだったわけじゃないよね。大多数の市場参加者は「誰が首相になっても大規模な景気対策は必定」と大まかに判断して、景気対策→財政追加投入→株高へと「脊髄反射」したことで、株価は暴騰したわけだ。

マーケットでの賞味期限は短い

さて、総裁選には岸田文雄氏が勝利。まもなく岸田新内閣が発足する。徐々に具体的な経済対策の中身が示されることになるが、仮に市場の期待通りの内容が出てきても、株価は既にその期待値を織り込み済みだ。逆に少しでも期待と異なればマーケットが失望売りで反応する展開もあるだろう。

我々は毎日「株価が上がった」「下がった」という報道を目にするが、メディアはそこに必ず値動き全体の要因となる材料を添えて、いかにも合理的に見えるよう理論武装をして伝える。例えば、米雇用統計の発表を受けてとか、日銀短観の結果からとか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長のコメントが……といった具合だ。ところが市場参加者、とりわけ短期投機筋の人々はそうした経済データやコメントそのものを深く分析して判断するというより、そのニュースを投資家の多数が好感するか、嫌気するかの予測を瞬時にして動いているんだ。

株価を動かすのは「美人投票」なんだ

英国の有名な経済学者ケインズは、投資家の行動パターンの比喩として、あたかも美人投票のようだとその本質を喝破した。100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票し、得票数が多かった人に投票した人が賞品をもらえるとする。すると人は純粋に自分が美人だと思う人に投票するのではなく、多くの人が美人と感じそうな人を選ぶようになる、という意味だ。

要するに目先の値動きを「当てにいく」市場参加者の思惑の集積が、短期的価格変動要因なのだとすると、我ら長期投資家にとっては、まったく一喜一憂するに足らぬことだとわかるはずだ。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会副会長。積み立てによる長期投資を広く説き続け「積立王子」と呼ばれる。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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