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iDeCoの固定観念捨てる 60歳まで解約できない利点

シン・イデコ(5)

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今月は20周年を迎えてさらに進化する個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)について、「シン・イデコ」と称して新しい時代の活用術を考えてきました。最後は「次の10年」をにらんだiDeCo活用の考え方をまとめてみます。

「60歳まで解約できないのがデメリット」は時代遅れ

しばしば、iDeCoのデメリットとして「60歳まで中途解約できないこと」が指摘されます。それはその通りなのですが、2020年代に入ったいま、それをデメリットとばかり強調すべきではないように思います。

「老後に2000万円」問題が明らかにしたのは、公的年金に加えて一定の自助努力を上乗せした方が老後に安定や余裕が生まれるということです。

仮にiDeCoに月2万3000円拠出できる人が35歳から30年加入したとして、元本ベースで821.8万円になります(口座管理手数料月171円を差し引く)。iDeCoの掛け金は全額所得から控除されますので、本来引かれていたはずの所得税・住民税を仮に20%として概算すれば実質657.4万円がここまで増えたことになります。

これに年3%のリターンを乗せれば1330.3万円となり、老後に2000万円の半分強を確保したことになります。夫婦でダブルiDeCoとするか、退職金を上乗せすれば老後の生活には安心が確保されることになります。

もちろん、目の前の家計がしっかりやりくりされていることが前提ですが、iDeCoはむしろ「解約できないこと」が心理的な歯止めとなり、未来の安心確保につながります。

「老後に2000万円」時代に、解約できないのはデメリットという発想は時代遅れになりつつあります。

むしろ「強力な老後の虎の子貯金枠」と考えてみる

iDeCoが老後のための強力な資産形成手段であることは税制優遇だけではなく、むしろ「容易には下ろせないこと」です。人は心理的な弱さを持つ生きものであり、しばしば非合理的にふるまいます。しかしそれも人間らしさの一部です。

このとき、目の前の欲望に負け、本来老後に残すべき資金を取り崩すことに対して制度が「待った」をかけているのがiDeCoという見方もできます。

iDeCoの原則、解約禁止は強力なもので「担保にもとれない」と法律に示されているので、離婚時の財産分割や、自己破産するときの財産整理においても解約を求められることはありません。

離婚時には資産として計上し、他のところで財産分与を調整することになるでしょうが、個人あるいは会社が破産しゼロから出直すことになっても、iDeCoの資産は未来に残されます。

人生をもう一度やり直すとき、自分の老後に繰り越して未来の安心を確保できるiDeCoは、リスクのある人生にとって、むしろメリットと考えることもできます。社会にとって重要な新規チャレンジをする人の支えにもなります。

不慮の事象により社会的に困窮した人々を支えるために優先しなければならないのは、個人のiDeCo解約ではなく、低利の貸し付けや様々な形での給付を行う支援のほうではないでしょうか。

下ろしたくても下ろせないiDeCoを、強力な老後の「虎の子貯金枠」と考えてみてください。

法改正に期待「iDeCo70歳は実現するか」

さて、20年を迎えたiDeCoは今年相次いで法改正が施行されましたが、もしかすると次の一手が早期に実現するかもしれません。

何度か報道されていますが、岸田文雄首相の「資産所得倍増プラン」の中に「iDeCoは70歳まで加入できるよう検討する」という案が盛り込まれています。

今年65歳まで積み立て可能となったiDeCoですが、先々週に説明したとおり、企業型確定拠出年金のほうではすでに70歳まで加入対象とすることができます(適用するかどうかは各社の制度設計による)。

民間では65歳を超えて働ける会社が38.3%、70歳以上も働ける会社が36.6%と65歳以降も働き続けられる環境が整いつつあり、iDeCoが70歳まで積み立てられるようになったとしてもごく自然な流れです。

国民年金保険料を40年満額納付済みの自営業者などが、60歳以降iDeCoに加入できないことが難点ですが、65歳まで国民年金保険料を納付する法改正の議論も別途あり、こちらのハードルもセットで引き下げられる可能性があります。

iDeCoの規制緩和は全世代にとって意義があることです。ぜひ実現への道筋をつけていただきたいところです。

iDeCoとNISAがともに成長する世界へ

国民の資産形成は、「今」ではなく「未来」の豊かさや幸せを獲得するための重要な手段です。特に働けなくなる老齢期に備えておくことは重要です。

企業においては退職金・企業年金制度の充実を図ることで、本人が意識せずに老後資産形成ができます。一層の制度普及が期待されるところです。

個人においてはiDeCoが広く誰でも利用できる制度となったことで、これを軸にしつつ、少額投資非課税制度(NISA)も併せて資産形成の「器」が整ってきました。器に収めるべき「商品」の条件も、投資信託の運用コスト引き下げ競争などもあって向上しています。

「新時代のiDeCo」(シン・イデコ)は、社会に投資資金を流入させると同時に、国民の未来の豊かさや安心を形作る役割も担っています。

ここ数年で一気に伸びたとはいえ、まだまだ利用者数は上昇の余地があります。iDeCoの口座が倍増(約500万)、あるいは1000万口座を目指して成長したとき、老後を不安ではなく安心して迎えられる時代がやってくるはずです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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