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チリツモ節電効果は2万円以上に「プライスレス」

知っ得・お金のトリセツ(87)

家計の光熱費負担が増している。4月、5月と2カ月連続で前年同月比2%強上昇と7年ぶりアップ率に達している消費者物価指数だが、中でも電気代・ガス代は20%前後とひときわ負担増が厳しい。そんななか、我が家では6月の電気・ガス代が3カ月前に比べて2万4000円も減った……。

3月の節電要請を機に光熱費を見直し

季節の違いに加えて「前がどれだけザルだったのか」と自慢なような恥なような話だが実話だ。留守番の長い2頭の柴犬の快適環境のため、夫婦2人で冷暖房費に糸目を付けず使ってきた結果、1~2月の床暖房代がかさんだ3月分の支払いは3万7000円。4人家族の水道光熱費の全国平均2万5000円程度と比べ突出してしまっていた。

「これじゃダメだ!」。放漫支出を見直すきっかけになったのは3月22日にドタバタで発令された東京電力管内での節電協力要請だった。1週間前の福島での地震の影響で火力発電の出力が低下するなか寒気が流れ込み、このままでは暖房需要増で「ブラックアウト(全域停電)」もあり得ると家庭に節電強化の要請が出された。すぐできる節電として急いで床暖房と温水洗浄便座を切り、家中のコンセントを抜いて回った。使っていないのにつながった状態のコンセントのなんと多いことか。リモコン、充電器、タイマー……使わない状態で費消される待機電力は家庭の消費電力全体の5%を占め、平均で年6000円以上かかっているというデータもある。

冷蔵庫、照明……次々ターゲットに

次に照準を定めたのが一番の「電気食い」冷蔵庫。全体の15%近い電力を消費するという。ちなみに年間を通じてみた2位は照明、3位がテレビ。この順での節電努力が効率的だ。冷蔵庫は省エネ性能向上の著しい製品で10年前と比べた電気使用量は4割も少なくなっているという。しかし買い替えタイミングの問題もある。すぐできることは中身の削減。惰性で詰め込んでいた瓶詰めや調味料を減らすと見晴らしがよくなり、食材確認のための不要な開け閉めも減った。

夜の照明を必要最小限にするためキャンドルを使うようになると、あら不思議。生活自体が楽しくなってきた。電気代のことを考えると自然に太陽と同じリズムになる。洗濯物も食器も乾燥機を使わずにベランダに干すので乾燥機代はかからず、代わりに日照具合が気になる。

目下最大の課題、エアコン代

目下最大の課題がエアコン代だ。37度など「体温超え」の灼熱(しゃくねつ)下での在宅勤務でもエアコンの設定は政府の推奨を2度上回る30度にしている。設定温度を1度上げるごとに年820円の節約になるというではないか。とはいえ、そのままでは当然暑い。カーテンで遮光し扇風機を併用して下にたまりがちな冷気をかき交ぜる。頸(けい)動脈など体の太い血管を冷やすため、首には犬の散歩用冷却リングを人も犬もぶら下げ過ごす。夕方には特に放熱効果が大きいという打ち水をベランダで行い、食事は体内の熱を冷ますという夏野菜を中心に。うーん、エコ。

気がつけば「昭和のくらし」

そこで思い出したのが2011年の東日本大震災の後、訪れた「昭和のくらし博物館」(東京・大田)だ。登録有形文化財になっている昭和26年(1951年)建造の木造2階建て一軒家を家財道具ごと保存し、昭和の暮らしを今に伝えている。夏になると座敷の障子をすだれへと家全体が「着替え」て、蚊帳やよしず、ゴザを出す。風鈴や釣りしのぶなど五感もフル稼働させて涼を求めた時代が再現されている。

ゆかしいし、今にも生きるヒントが満載なのは事実なのだが、あの大震災と原発事故から既に11年。いまだにこの国のエネルギー政策は定まらず、家庭への「節電要請」が繰り返される芸のなさ。単純に昭和に逆戻りをしている場合ではない。せめて公費を投入する「節電ポイント」は現状ささやかれる「参加だけで2000円」などずさんな設計はやめ「エコな自分」に酔うプライスレスなインセンティブに訴える方法はないのか……? 犬用冷却リングを首からぶら下げながら考えている。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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