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上がらぬ物価、米欧と格差 日銀21年度見通し引き下げ

(更新)
日銀は2021年度の物価見通しを引き下げた

先進国の中で日本の物価の弱さが際立っている。米欧で物価が持ち直すなか、日銀は27日の金融政策決定会合で2021年度の物価見通しを引き下げた。成長期待の低さから企業や家計が投資や消費に慎重になっている。デジタル分野などの成長戦略で企業の活力を引き出し、賃上げにつなげられなければ物価の底上げは望めない。

米欧では物価上昇が勢いづいている。米国の3月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.6%上昇と2年7カ月ぶりの高い伸びになった。カナダの3月の物価上昇率も2.2%、ユーロ圏も1.3%と持ち直し基調にある。

対照的に日本はなおデフレ懸念がくすぶっている。3月のCPIは0.2%下落と6カ月連続のマイナスになった。日本も品目別に見れば下げ一辺倒ではない。例えば「巣ごもり需要で売れ行きが好調」(大和証券の岩下真理氏)という冷蔵庫や洗濯機などの家庭用耐久財は4%強上がっている。それでも外食や教育関連などでは上昇基調がみられない。

日銀が27日にまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では21年度の生鮮食品を除く消費者物価の見通しを下方修正した。前回1月には政策委員見通しの中央値で0.5%としていた上昇率を0.1%に引き下げた。携帯電話料金の値下げが物価を0.5~1.0ポイントほど下押しする影響が大きい。

携帯値下げの影響が一巡する23年度の予測でも上昇率は1.0%にとどまる。黒田東彦総裁の任期である23年4月までに2%の物価目標を達成できない可能性が高まっている。国際通貨基金(IMF)の最新予測では、米国の物価上昇率は21、22年ともに2%を超え、日本の出遅れ感は鮮明になる。

背景にあるのが経済の修復力の弱さだ。経済全体の需要と潜在的な供給力の差を示す「需給ギャップ」をみると、新型コロナウイルスの影響が色濃く出た20年半ばに米国はマイナス10%、日本は同8%とそろって大幅な需要不足に陥っていた。需要不足が続けば物価には下押し圧力となる。

足元の推計値は日本のマイナス3%程度に対し、米国はマイナス2%まで回復している。米国では政府による巨額の財政出動が需要不足を埋めるとの見方がある。JPモルガン証券の鵜飼博史氏は「今後も米国の需給ギャップは日本より早く改善が進み、年内には明確なプラスに転換しそうだ」と話す。

ワクチン接種による経済再開度合いの違いも日米の消費の勢いに表れている。米国の小売売上高が足元で急激に伸びる一方、日本はなお前年割れの水準にある。

さらに、日米間の賃金面の違いを指摘する声がある。米国は賃金上昇を維持する一方、日本はコロナ下の20年春以降、残業代の削減などでマイナスが定着してきた。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「欧米では賃金とサービス価格が恒常的に上がりやすい。日本は賃金が上昇しないため企業による値上げの動きが出てこない」と分析する。

日銀の黒田総裁は27日の会合後の記者会見で2%の物価目標について「最大限の努力をしてこれを達成していく」と述べた。だが、異次元緩和の開始から8年たっても物価の弱さが続き、現行政策の継続だけでは物価の押し上げに不十分との見方が広く定着している。

JPモルガンの鵜飼氏は「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた政府の成長戦略に加え、日銀が成長分野への資金配分を促すなど構造的な変化が重要になる」と話す。潜在成長力を高め、企業や家計の抱える過剰貯蓄を投資や消費に向かわせることが物価上昇のカギを握るとみる。

先進国間でインフレ格差が広がるなか、コロナ対応の金融緩和で足並みをそろえていた中央銀行の政策姿勢にも差が出始めている。カナダは今月、国債購入の減額を決めるなど緩和縮小の方向に歩を進めた。市場では米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和の縮小)の観測も強まっている。27~28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では現状の金融緩和策を維持する見通しだが、物価の上昇が続けば年内のテーパリング検討も視野に入る。

物価目標が遠い日銀は粘り強く金融緩和を続ける構えだ。黒田総裁は27日の記者会見で「深刻な影響を受けている対面型サービス部門の資金繰りを引き続きしっかり支援していく必要がある」と指摘。9月末に期限を迎えるコロナ対応の資金繰り支援策の延長も「考え得る」と述べた。

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