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人生を左右する住宅ローン 成否分ける3つの要素

家を借りる・家を買う(5)

今月は賃貸暮らし、持ち家取得というLife is MONEYを考えてみました。住宅ローンを上手に組むヒントを最後にまとめてみます。

住宅ローンのシミュレーションをするアプリやウェブサイトがいくつかあります。基本的に「借入額(物件価格と頭金の差額)」「返済期間」「金利」を入力することで、毎月ないしボーナスの「返済額」が導き出せます。住宅ローンの負担を軽いものにするためには、この3つの数字を自分にとって有利になるように設定することが重要になります。

物件価格と頭金に注意

これらの数字は少し違うだけで総返済額が数百万円変わることもしばしばです。いわば「マジカルナンバー」です。

まず、「無理のない物件価格」にすることで、借入額そのものを少なくできます。背伸びしすぎた物件取得は過大なローン負担となり、身動きが取れなくなります。「1000万円安い家が買えれば、1000万円老後の貯金ができる」くらいの意識も検討時に必要です。

次に「頭金をしっかり準備する」ことが重要です。頭金が多いほど借入額が少なくなり、かつ借入額にかかる金利負担も軽くなります。賃貸暮らしをしつつ、少しでも頭金を確保する家計管理が求められます。

そして「低金利で借りる」ことです。金利負担が総返済額に大きな影響を及ぼすことは先週見たとおりです。しかし、金利は自分が選べる余地はあまり大きくありません(金融機関ごとに競争の余地はありますが、ローン設定時点の金利動向がもっとも強く影響する)。低金利だからといって頭金ゼロで時期尚早のローン設定をするほうが高リスクです。

つまり自分が主体的に選べる要素は「物件価格の選択」と「頭金の準備額」です。賃貸生活時代以上に「返せる金額になる物件を選ぶ」ことを考え、また、賃貸生活時代には将来の住宅取得のために「頭金をためられる余裕のある家賃で暮らす」ことが大切ということになります。

さて、3つのマジカルナンバーのうち「返済期間」についてはどう考えるべきでしょうか。

退職金で住宅ローンを返さない

「返済期間」を短くすれば、金利をダラダラと払う時間も短期化できます。しかし、返済期間を短くするということは毎月の返済額を増やすということです。

返済期間には「リミット」があります。リタイアしたら住宅ローン返済を続けるのは難しくなりますし、退職金で住宅ローンの残債を精算することはできれば避けた方がいいからです。定年退職を超えて継続雇用で働いていても、一般には賃金が下がるため返済余力はダウンします。

退職金で住宅ローンの残りを返してしまうというのは一見、合理的なようですが、本来老後の20年以上にわたって取り崩すべき軍資金を定年退職した瞬間に消滅させることになります。

日経電子版に「住宅ローン借り入れ者の完済時年齢が平均で73歳」という記事がありましたが、これはちょっと遅すぎる返済計画です。

もちろん、未来の定年年齢が高まることは間違いないので、それを織り込んで返済期間を設定することは考えてもいいでしょう。しかし「20年後には65歳定年が一般的」なのは確実ですが「20年後には70歳定年になっている」は可能性が高いものの確実とはいえません(そうなると期待はしていますが)。75歳はさらに微妙です。

むしろ75歳までローンを組まなければ返せない家を買うこと自体が「高すぎる買い物」なのです。

早すぎる住宅購入のメリットとデメリット

「返済期間」を長く取りたいなら「終わりを遅くする」だけでなく、「早くから返済を始める」という選択肢もあります。つまり若いうちから住宅ローンを組んでしまうわけです。35歳で組めば30年ローンでも65歳ですから余裕を持った返済計画が立てられます。

その一方で、35歳では人生がまだ固まっていないという難問もあります。3人家族用の家を買ったら2人目の子どもができた、なんてことがあるわけです。おひとりさまのつもりでワンルームを買ったら40歳で結婚を決める出会いがあった、ということもあります。

そしてもう一つ、早すぎる住宅購入にあるリスクは、家もその分年を取るということです。35歳で購入した家が、あなたが100歳まで暮らすとしたら65年の時間を重ねることになります。持ち家もマンションも、外装修理レベルを超えた大規模修繕が求められればその費用が生じます。

早く買う悩みもまた、住宅購入の大きな難問なのです。

あえて「定年退職時に一括払いの住宅購入」は

ここまでは住宅ローンを借り入れる前提で話をしてきましたが、定年退職時に「老後の家賃2000万円」とならないように、「老後になって一括払いで家を買うための軍資金2000万円」をもっておき、それで住宅取得する方法も考えられます。

現役時代はちょうどいい部屋を賃貸で選んで自由に住み続けることができ、老後は長生きしすぎて家賃の予算が枯渇するリスクを避けられます。ただし、住宅ローン減税のようなメリットは得られませんし、現役時代に払い続けた家賃は資産となることはありません。お得さはあまりありません。

また、定年退職するまでに本来の老後資金とは別に家を買う予算をためておく必要もあり「老後に2000万円」+「老後に家を買う2000万円」のような資金計画をしっかり実行できなければ、かなり苦しい老後に到達することになるでしょう。

「遅い住宅購入」にも難しさがあるわけです。

家を手に入れることを真剣に考えよう

家の問題は最終的には人生の決断の問題になります。悩みながらもいつ買うのか、どれくらいの予算で買うのか、返済計画をどうするのか、といったことを決めなければいけません。それぞれ不確定要素もあります。しかし「夢」の部分だけではなく、シビアな「現実」のほうを直視して決断することが大切です。

人生最大の買い物となるマイホーム購入、悔いのない形で実現をしたいものです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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