優待株ブロガー4人が座談会 23年の有望銘柄はこう選ぶ
高配当株&株主優待株 23年の狙い目(4)

――2022年は人気の株主優待株で廃止の発表が相次ぎました。「ここが廃止か」と驚いた銘柄は?
夕刊マダムさん(以下敬称略) 驚いたのはマルハニチロとフジ日本精糖です。自社製品優待は株主に会社を理解してもらう狙いもあると思っていたので、それがなくなるとはびっくりしました。
追加発表を待ったのに
v-com2さん(同) 私は日本BS放送です。ビックカメラの子会社で、業績もそこまで悪くない。ひょっとしたら完全子会社化か、それとも大幅増配かと保有していたのですが、どちらもなくて売却しました。

takaさん(同) いつかはなくなるだろうと思っていた優待がなくなった、というのが私の感想です。例えばブロードリーフは優待内容がいろいろと変わり、いずれなくなるかもと思っていたら、やっぱり廃止になりました。
一同 あぁ〜。
mtips オリックスが優待新設を発表した時、IR(投資家向け広報)フェアでオリックスの担当者が「外国人持ち株比率が高すぎて、個人株主に買ってほしいから優待を新設した」と話していました。だから、「廃止はしないだろう」と思っていたんです。
夕刊マダム 個人株主が増えすぎたんでしょう。優待導入後、初めての株主総会はすごかったから。株主へのお土産が、途中で品切れになるぐらい。優待効果があそこまであるとは会社も思っていなかったんでしょうね。

廃止発表のタイミング
mtips もう1社。サニーサイドアップグループ。
夕刊マダム 廃止の発表が、権利確定日が近づいていたタイミングでした。
mtips 発表後の総会では、優待に関する質問を想定していたようで「フリマサイトに弊社の優待券が出品されています」とスクショ画像も用意していたほど。それにしても、いきなりやめるのではなく、割引券に変更してから廃止するなどのやり方はあったと思います。
――廃止にはならなくても、優待品の内容が低下しているといった声も聞こえます。
mtips 内容というより送料コストを下げるためか、優待品を入れる箱が小さくなったとは感じます。
taka トイレットペーパーがもらえる優待で、「ペーパーの巻きが小さくなった」と話す人はいました。
一同 (笑)
mtips 優待コストを下げるという意味では、カタログギフト優待がオンラインに変更という例もありますね。優待券偽造を防止するためにデジタルチケットで配布という流れも起きています。

夕刊マダム 対応が難しい高齢の方はどうするのでしょうね。
mtips そのためにガラケーからスマートフォンに買い替えた人がいましたよ。
一同 ほぉ〜。
夕刊マダム 優待のデジタル化が、投資家のデジタルライフ化も進めている(笑)。
――いろいろあった22年を経て、優待投資に対する皆さんのスタンスに変化はありましたか?
v-com2 以前は優待株メインで投資していましたが、今は優待がなくても買いたいと思えるような会社を買うと徐々に変化してきたと思います。「優待があれば何でもいい」のではなく、ちゃんと選ばなきゃと思っています。
夕刊マダム 優待廃止もありますけど、一方で新設を発表する例も多いですよね。ですが、新設を発表したから飛び付く、というのはもう卒業です。
mtips 今はSNS(交流サイト)での情報発信もあります。著名な個人投資家さんが新設優待をどう見ているのか、精査してから購入を検討している投資家が多いと思います。加えて優待だけでなく、配当や業績など総合的に判断している人が多くなっている印象です。
――優待廃止時の対応にも、その冷静さが発揮されている?
mtips 廃止が発表されたから即売りというより、配当や業績予想がどうなのかを考えて売却を検討していると思います。
v-com2 私は廃止になった時点で、もう1度、配当利回りや業績予想を見直して、「今でも買えるか」と改めて検討します。オリックスがまさにそうでしたが、配当利回りと業績を見て「保有していてもいい」と思えるものは、そのまま持っています。
夕刊マダム オリックスは、優待廃止まであと1年以上ありますから、対応を考える時間が十分にあります。
taka 私の場合は廃止を決めた理由が「業績悪化」ならたたき売ります。優待を廃止しながら増配を発表するとかがあれば持ち続けます。あとは業績。成長が見込めるのなら、やはり持ちます。

過去にもあった廃止後の上昇
――以前からそういう対応だったのですか?
taka 昔は優待を廃止にした銘柄はぽんぽんと売っていました。ですが手放してから半年、1年とたってみると、「なんでこんなに株価が上がっているの」という銘柄が結構ありました。調べてみると、そういう銘柄はやはり業績がいい。優待廃止は「優待を実施しなくてもやっていける」という会社の自信の表れかもしれない。そう思い、業績次第で手放す・残すを判断するようになりました。
夕刊マダム 私は配当利回りが良ければ、優待がなくても持っていていいと思っています。日本たばこ産業はその例ですね。廃止で大きく株価を下げた銘柄は、損益通算用に売却です。
mtips 今は投資家の皆さんが優待より配当に注目していますね。
夕刊マダム 投資家さんのブログを読んでも、高配当株にシフトしていますという人がすごく多いです。
taka 私も、そうなりつつあります。高配当の上に優待でQUOカードが付いてきたら、もうそれでラッキーです。生活スタイルの変化で、もらっても使わない優待品がどうしても出てきてしまいます。それならQUOカードをもらって、好きなものを買った方が役に立ちますから。
夕刊マダム 子供が小さいとサンリオとかハピネットのおもちゃ優待は良かったんです。でも子供が大きくなると、そんなに必要ではなくなってくる。家族構成の変化や年代により、どんな優待品を求めるかは変わりますからね。
――優待廃止がある一方で、新設もある、という話が先ほど出ました。新設の中で注目している銘柄は何ですか?
夕刊マダム AB&Companyと中西製作所です。両社とも知らなかったので、どんな会社か調べました。このように優待をきっかけに知らなかった会社を知るメリットはあるんですよね。
v-com2 新設ではなく拡充ですが、私はアビストの300株以上プレミアム優待倶楽部の新設が一番驚きました。同社はプライム市場の上場維持基準に流通株式時価総額が足りていません。それを満たすためと拡充の理由がはっきりしていたので注目しています。
――今、挙がったように、22年は上場維持基準を満たしていない経過措置銘柄が、優待を新設するケースが散見されました。
taka 一時的にはいいけれど、本当にこの優待は続くのかと疑問に感じています。優待を目当てに株主数が増えすぎると、それこそ改悪・廃止になるのではないかとも思います。
上場基準と株主優待
mtips 優待で本当に流通株式時価総額が増えるのか、なんですよね。旧・東証1部の上場基準に株主数2200人以上というハードルがありました。株主数を増やすため、個人投資家向けに優待を始めるというのは「あり得る方策だ」と思います。しかしプライム市場の基準にある流通株式時価総額や売買代金アップに、優待がどこまで効果があるのか……。投資家の皆さんも、どんな狙いで優待を新設したのかを感じ取り、そう簡単には飛び付かないと思います。
v-com2 業績が良いのに知名度がないから、優待を導入して投資家に知ってもらうという施策はいいと思います。ただ、あまり過剰な優待を出して無理やり基準を満たそうとするのは持続性がないなと冷めた目で見ます。
――そう感じる場合は買うことはない?
v-com2 投資対象にはしません。
夕刊マダム 旧・東証1部の頃も、優待で株主数が増えたら1年後に優待廃止という例はありました。個人投資家はそんな経験も過去にしています。上場基準を満たすための優待なら、それを理由に買うことはないです。
――新市場の上場企業にはコーポレートガバナンス・コードの順守が求められています。その中には「株主平等の原則」があり、優待には逆風との指摘もあります。これからの優待株投資はどうなるとみていますか。
mtips 今はまだ、コロナ禍で人気の外食優待が混乱した余波もあるでしょう。でもコロナが落ち着けば、外食優待の人気は回復すると思いますし、やはり株主優待が好きな投資家は一定層いるはずです。だから一つの投資法として、優待株投資は残ると思います。ただ、しっかりと業績を見て銘柄を選ぶ傾向は強まると思います。
(佐藤由紀子)
[日経マネー2023年3月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/1/20)
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