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突発的コロナ要因、米利上げ議論に冷や水

米国市場では、感謝祭前に新規失業保険申請数が52年ぶりの少なさを記録、さらに米連邦準備理事会(FRB)が最も重視するインフレ指標である個人消費支出(PCE)物価指数(10月)が約30年ぶりの高水準を示したことで、2022年の利上げ観測が強まっていた。

しかし、南アフリカで新型コロナウイルスの新たな変異ウイルス発生報道により、利上げ議論が後退する可能性が出てきた。

そもそもパウエルFRB議長は、発言の後に、しばしば「コロナリスクは残る」「コロナに大きな変化がなければ」と語り、突発的なコロナリスクが金融政策にも影響を与えることを述べてきた。

米国内の感染者数も増加傾向のタイミングで、この新たな要因が勃発したことで、マネーが米国債、円、金などの安全資産に逃避して様子見する事例が増えそうだ。今後の情報待ちとなるので、あくまで、一時退避である。投機マネーが価格変動を増幅させることにも留意が必要だ。ウイルスの感染力などにわかには特定できない可能性も強く、12月14~15日に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)の議論も、かなり慎重になりそうだ。

パウエル氏やFOMC参加高官たちが好んで使う「忍耐強く=patient」という表現が、直近ではやや薄れていたが、再度強まることも想定せねばなるまい。ゼロ金利解除などの金融正常化は忍耐強くデータ次第で進めるとの姿勢をより強める可能性がある。量的緩和の縮小(テーパリング)もペースを速めるとの意見が多かったが、これもにわかに不透明感が増してきた。

注目の経済指標に関しても、まず11月雇用統計の解釈が難しくなった。感染を嫌う労働者が減らないことで労働参加率が低位に留まる傾向が続いているのだが、11月雇用統計に、新型変異ウイルスの心理的影響が十分に反映されるのか、甚だ不透明である。例えばハト派の筆頭格サンフランシスコ連銀デイリー総裁は、11月雇用統計と11月消費者物価指数を見て、利上げについての見解を決めると明言していた。その結果次第では2022年に1~2回の利上げがあっても驚かないとの発言で、ハト派重鎮の変心と注目されていた。

いずれにせよ、既存ワクチンの効果、デルタ型と比較しての感染速度など、短期間で確認できるとも思えない。

市場は思わぬ不透明要因をかかえこむことになった。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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