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投資や資産形成… お金のプロ3人に聞く金融教育とは

2022年4月から高校の家庭科の授業に、資産形成についての内容が盛り込まれるようになった。株式や債券、投資信託などについても教える。金融の知識に自信のない親は、そうした動きに戸惑っているかもしれない。だが専門家は、「家庭でちょっとした声掛けを意識するだけでも金融教育を行うことができる」と口をそろえる。自身も子供を持つお金のプロ3人に話を聞いた。

根底にあるのは「リスクとリターンの関係性」

金融教育ベンチャー企業マネネ 最高経営責任者(CEO) 森永康平さん

――金融教育スタートについてどのように思いますか。

基本的には大賛成です。私は中学生の頃から金融や経済について自主的に学んでいましたが、それは父親(経済アナリストの森永卓郎さん)の仕事が影響しています。一方で「お金の知識レベルが、どの家庭に生まれるかで左右されてしまうのはおかしい」という思いがあり、全ての人が金融教育を受けられるようにマネネを創業しました。

「4月から金融教育がスタート」といった報道をよく見かけますが、この報じられ方には違和感があります。金融教育の本質についての誤解によるものかもしれません。これまでも家庭科の授業で教えられてきた「ライフプランニング」や「家計管理」も立派な金融教育だからです。

――金融教育で大切なことは。

リスクとリターンの関係性を教えることです。金融の世界での「リスク」とは「リターンの振れ幅」を指します。リスクが大きいものであれば、期待されるリターンも当然大きくなる。逆にリスクを抑えると、期待できるリターンも小さくなる。その原理・原則を教えておけば、あらゆる金融商品の仕組みを理解できるだけでなく、お金をだまし取られる危険も回避できます。「元本が保証されていて、毎月20%の利益が得られる」という話はどう考えてもおかしい。そう感じるはずだからです。

――ご自身の家庭ではどのような教育を施していますか。

8歳、6歳、4歳の子供がいますが、むやみやたらに「お金をためなさい」とは言わないようにしています。子供に、「使う=悪」「ためる=偉いこと」と曲解されるかもしれないからです。

「お金をもらった時には、使う、ためる、増やす、寄付するといった選択肢がある。ためるという選択をする場合は、それ以外の選択肢を捨てたんだよ」と教えています。お金をためることは"良いこと"だと、かつて私自身も思い込んでいました。考え方が変わったのは、会社を立ち上げる際に米国の未就学児向けのパーソナルファイナンスの教科書を読んだ時です。幼い子供に向けて書いた本なのに、opportunity cost(機会費用、ある選択により失った利益の可能性)という言葉が何度も出てきたのです。機会費用を考えると、より深いお金の決断ができると思います。

「家族マネー会議」は子供とのコミュニケーション手段

ファイナンシャルプランナー(FP) 横山光昭さん

――家庭での金融教育について相談を受けることはありますか。

ここ1~2年、FPとして相談を受ける際にお客さんから「子供も一緒に来ていいですか」と聞かれることが明らかに増えました。一緒に来るお子さんは高校生から大学生辺りの年齢が多いです。親が「話を聞かせたい」という場合のみならず、子供が「話を聞きたい」というパターンもあります。投資に対する関心が高まっていることも影響しているのかもしれません。

昔は「親は子供に家計の話をしない」という風潮だったのが、変わってきています。大切なのは、お金のテクニックを教えることよりも、「生きていくためにお金は必要だ」と伝えることです。

――横山さん自身も、「家族マネー会議」を定期的に開いているのだとか。

月1回、家族で集まって、その月の親の収入や支出を発表します。それから皆のお金の使い道について、話し合いをするんです。立派な金銭教育ではないのですけれども、子供とのコミュニケーションの貴重な機会だと感じます。子供が高校生や中学生になると、話をしたくても、共通の話題で話すことが難しくなりますから。

お金の話を通じて、子供なりの世界が見えてくる。子供がどういうふうに考えているのか分かって、面白いです。一番下の子が小学6年生なのですが、手元に5000円があれば「駄菓子をいっぱい買いたい」と言いますし、ゲームの課金などにもお金を使いたいようです。一方、中学生の子は、「友達とカフェで600円ぐらいのドリンクを買いたいから、お金をためるんだ」と話しています。「そうやって考えるんだね」といつも驚かされます。お金の使い方については否定もしませんし、多少の失敗であれば早いうちに経験した方がいいはずです。

一番上の子は既に成人して一人暮らしをしていたり、大学生で忙しい子がいたりと、全員がそろわないこともありますが、家族マネー会議は続けています。子供の話を聞いていると、ふと本人の悩みが見えてくることもあるのです。

基本はお金の管理を学ぶこと

ファイナンシャルプランナー 八木陽子さん

――八木さんは、15年以上にわたって子供の金融教育を手掛けています。

10年以上前は、「投資教育は特に教えたくない」という親御さんの声が多くありました。それが今では、積極的に「投資について教えたい」と言われるようになりました。空気が変わったなと感じます。

――家庭ではどのような金融教育ができますか。

投資よりも、まずはお金の管理を学ぶことが基本です。キャッシュレスの時代ですが、お子さんに一度は現金で小遣いを管理してもらうようにお伝えしています。

お勧めしているのが、「お小遣い契約書」を書くこと。①定額制②アルバイト制③定額制とアルバイト制のミックス―—のいずれかの形式を選ぶとよいと思います。定額制だと計画を立てやすいのですが、実社会の労働の概念が伝わりづらい。一方で「風呂掃除をしたらいくら与える」といったアルバイト制は、家族の一員として本来やるべき家事を"お仕事"とすることに違和感を持つ方もいます。それぞれのメリット・デメリットを知ってご家庭の方針で決めていただくのがいいでしょう。

肝心なのは、お子さんに小遣いの使い道を考えてもらい、契約書に書き込むこと。「自分のために使うお金」「プレゼントや寄付など人のために使うお金」「ためるお金」をそれぞれ毎月いくら使うかざっくり決めておくことが役立ちます。これらの額が本人の頭に入っていれば、無理に小遣い帳を付けなくても、管理がある程度できるはずです。

――投資教育については。

今はポイント投資や、1株から株式を買える証券会社もあります。本当に少額でいいので投資を始めてみて、子供と一緒に調べるだけでも勉強になります。「応援したいと思える会社の中で、成長しそうなところはどこだろう」と話すのは、ビジネスや世の中の仕組みを考える機会にもなります。投資信託を買ってみて、その投信が保有している銘柄をチェックするのも一案です。

――八木家では、お子さんと相談して証券会社の未成年口座を開設し、お年玉の一部を投信の積み立てに充ててきたそうですね。

息子と娘がいるのですが、それぞれ子供が小学4年生の頃に積立投資を始めました。長男が大学生になって一人暮らしを始めた際には全て引き渡し、「この口座をどうするかは自分で考えてね」と伝えました。驚いたのは、彼が「積立額を減らしてでも投資を続けたい」と言ったことです。運用資産が10年余りで2倍ほどに増えたので、「長期・分散・積み立て」の効果を経験から実感したのだと思います。

(大松佳代)

日経マネー 2022年6月号 波乱相場でも上がる 強い日本株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/4/21)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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