2023年、知っておきたいマネーカレンダー - 日本経済新聞
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2023年、知っておきたいマネーカレンダー

知っ得・お金のトリセツ(102)

間もなく新年。1年前、来る2022年に思いを致した時、ロシアによるウクライナ侵攻が年間通じて世界を揺さぶることを予期できた人などいない。2023年もきっとわからないことだらけ。せめて見えている家計まわりのスケジュールを押さえて備えを固めよう。

1月 コロナ特例貸し付け返済開始

2020年以降の新型コロナウイルス禍で生活難に陥った人に対し、国が無利子で行った「生活福祉資金の特例貸付」の返済が始まる。通常より簡単な手続きで最大200万円借りられた。返済が始まれば無利子とはいえ負担は重い。生活再建途上の住民税非課税世帯などに対しては返済免除の制度もあるがそれには必要な手続きがある。早めに窓口の社会福祉協議会に相談しよう。

1月 電気・ガス料金補助開始

高騰する電気・ガス料金に対する政府の負担軽減策が1月使用分から始まる。標準的な家庭では8月使用分まで電気代が月2800円、都市ガス代が900円安くなる計算。手続きは不要で自動的に値引きされる。2月以降の請求書で確認し、ありがたみをかみしめよう。一方で東北電力など電力大手5社は既に4月からの規制料金の値上げを経産省に対して申請している。認められればおよそ3~4割もの大幅な値上げとなる。1月以降、焼け石に水……いやいや、干天の慈雨、の補助がある間に節電ポイントなどためつつ節電癖を付けたり、省エネ家電に買い替えたりして準備を進めよう。

1月 全国旅行支援再開

旅行代金割引と地域クーポンがセットになった観光需要喚起策が1月10日から再開される。割引率は前回より下がり1人1泊あたり最大7000円の支援だ。旅行最大20%オフ(上限は交通費付き5000円・その他3000円)とクーポン平日2000円・休日1000円。予算がなくなり次第終了なので早めに、できれば平日かつ自治体独自の上乗せ補助があるところを狙うなどして精いっぱい賢く活用したい。

2月 マイナポイント付きマイナンバーカード作成期限

最大2万円分の特典、マイナポイントがもらえるマイナンバーカードの作成期限が到来する。22年9月末→12月末→23年2月末と延長を重ねてきたが「これが最後」(松本剛明総務相)。我々の税金が原資の2万円を回収するため忘れずに駆け込みたい。カード作成の期限延長に伴い、もともと2月末が期限だったマイナポイント自体の申請(カード作成後の買い物等で最大5000円、健康保険証としての利用申し込みで7500円、公金受取口座の登録で7500円)はさらに後ろ倒しになる見込み。カードさえ手元にあればマイナポイント申し込みの作業はネット上で日付が変わるギリギリまで可能だが、例えば子ども用の公金受取口座の開設など時間のかかる手続きはなる早で片付けておこう。

政府が掲げる「3月末にほぼ全国民」の普及目標には未達でも社会のマイナ化は着実に進んでいる。4月以降、医療機関における「マイナ受付」対応は義務化される。厚生労働省は4~12月の期間限定で従来型の健康保険証を利用した場合、受診料に追加負担を上乗せする方針を示している。

4月 デジタル給与解禁

労働基準法が改正され、企業は電子マネーやスマホの決済アプリを利用してデジタルマネーで給与を払うことができるようになる。労働者の同意が必要で口座残高の上限は100万円。「PayPay(ペイペイ)」や「楽天ペイ」などの参入が見込まれるが、少なくとも月1回手数料無料で現金を引き出せるようにするなど、厳しい条件がついており参入業者は限られるとの見方も。労働者はチャージの手間いらずで給与を直接キャッシュレス決済に充当できるようになる。折しも日銀の金融政策修正を受けて、限りなくゼロに張り付いてきた預金金利の幅も広がりそう。来春は口座を起点に「使う、ためる、増やす」の観点から家計の資金管理を見直すチャンスになりそうだ。

4月 所有者不明土地等に関する法整備

今や累計で国土の20%以上にも及ぶとされる「所有者不明土地」問題の解決に向け一連の法改正が動き出す。発生予防と利用円滑化、2つの柱に沿って関連法が見直される。まず4月に共有制度や管理制度に関連する民法に細かい見直しが加えられるが本番は1年後。24年4月には相続登記の申請義務化が始まる。不動産を取得した相続人は取得を知った日から3年以内の登記申請がマストになる。これまでのように田舎の不動産を「コスト倒れになるから」と放置することはできなくなる。

4月は他にも日銀の黒田東彦総裁の任期が終了し、こども家庭庁が新設され、雇用保険料が0.2%引き上げられる等々、イベントが多い。

6月 ガソリン代補助終了へ

22年1月に始まったガソリン代補助が終了に向かう。現在は1リットル当たり35円を上限に、ガソリンの全国平均価格が170円程度になるよう差額分を補助金で補塡している。原油価格の落ち着きを受け、23年1月から5月にかけて補助上限を月2円ずつ25円まで段階的に引き下げる。6月以降について、経済産業省は再度その時点で発表するとして補助の終了も視野に入れる。

10月 インボイス制度導入

消費税のインボイス(適格請求書)制度が導入される。インボイスは商品やサービスの買い手に対して売り手が発行する書類で、消費税の適用税率や税額を記載する。買い手が仕入れ時に支払った税額を差し引く「仕入れ税額控除」を利用するためにはインボイスが必要になるため、これまで免除されてきたフリーランスなどの小規模事業者も対応が必要になる。3年間は納税額が少なくなるなどの負担軽減措置が加わったが制度自体は始まるので早めに準備したい。

他に、年間通じても数少ない値下げニュースの一つとしてNHKの受信料値下げがある。値下げ幅は約1割と過去最大だ。地上波だけ見られる「地上契約」は月125円安の1100円、BS放送も見られる「衛星契約」は月220円安の1950円となる。

12月 従来型NISA終了

2023年度税制改正で固まった新しい少額投資非課税制度(NISA)が話題だがスタートは24年1月から。それまでは従来型の「一般NISA」「つみたてNISA」が存続する。24年から新たに導入される1800万円が上限の非課税保有限度額(生涯投資枠)とは別枠で管理するので、資金に余裕のある人は例えば一般NISA120万円と、23年で廃止される子ども名義での「ジュニアNISA」80万円の上限額合算で200万円も「自分の非課税枠」を拡大させることも可能だ。ちなみにNISAは23年から18歳からの利用が可能になる。「非課税枠をムダにしない」観点からは23年中の駆け込みNISAも一案だ。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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