日銀、利上げ論を火消し 緩和継続に「誤解ないよう」
日銀が26日公表した金融政策決定会合(17~18日開催)の「主な意見」で、早期利上げ観測を火消しする動きが目立った。利上げの思惑が広がると、長期金利に上昇圧力がかかり、景気を冷やしかねない。日銀は物価の上振れリスクに警戒しながらも、緩和正常化の議論は封印するとの姿勢を明確にしている。
この会合の数日前、一部通信社が「日銀は物価上昇率が2%に達する前でも利上げできるか議論している」と報じた。金融市場は緩和長期化を前提としていたため、報道を受けて、円高・ドル安も進んだ。だが、黒田東彦総裁は18日の記者会見で利上げについて「全く考えていないし、議論もしていない」と否定した。
「主な意見」でも議論の形跡はなかった。むしろ、物価目標達成まで緩和を続けることを「誤解がないように対外的によく伝えるべきだ」などと、報道を念頭においたとみられる発言が相次いだ。
日銀はこの会合で2022年度の物価上昇率見通しを0.9%から1.1%に引き上げた。主因はエネルギー価格の上昇だ。23年度も物価上昇率は1.1%にとどまる見立てで、黒田総裁は「まだ2%にかなり遠い」と強調する。黒田総裁の任期満了は23年4月。それまで、黒田総裁自身が緩和正常化を探る意志が薄いことが垣間見える。
一方、会合では「企業がコスト転嫁を加速させる上振れリスクもある」といった発言も出た。物価上昇率は「瞬間風速的に2%に近い水準まで上昇する可能性がある」と数値に言及する指摘も複数あった。
消費者物価指数(CPI)は4月に携帯電話通信料の押し下げ効果が弱まり、上昇率は2%に迫る可能性がある。年後半には再び1%程度に鈍るとの見立てが日銀内で多いが、前例のない経済情勢とあって不確実性は高い。
想定外に物価上昇が長引くリスクもある。日銀関係者の間では「将来の緩和修正を含め、水面下でさまざまな議論がなされている」との声も多い。春以降の物価情勢次第では、「動かぬ日銀」の姿勢が変わる可能性もありそうだ。
(本多史)
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