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年金の課題 おひとり様、基礎年金のみ…どう備える

ねんきん月間に考える(5)

今月は年金をテーマに5回に分けていろいろなテーマを考えてみましたが、最後のお題は「おひとり様」と「国民年金(基礎年金)のみ」という世帯の年金が不足するという問題です。

正社員・共働き夫婦なら老後はそれほど怖くない

公的年金と私たちの老後を考えるとき、とかく不安が先行しがちですが「共働き夫婦」、特に「共働き、正社員夫婦」はあまり恐れずに済むと考えています。厚生年金の適用を受けている正社員は「2人分の基礎年金+2人分の厚生年金」をもらえるためです。

国が例に挙げる、いわゆるモデル世帯の年金は専業主婦と会社員という世帯で設定しているので、2人分の厚生年金をもらう世帯はその分、老後の年収がアップします。男性の厚生年金の水準より低く見込んで月5万円程度であった場合でも、それだけで65歳女性の平均余命25年を勘案すれば「老後に2000万円」に匹敵する収入確保といえます。

正社員の多くが「2人分の退職金」を期待できるのも大きく、一般的な老後不安を解消する最大の方法は「共働き正社員夫婦」となるはずです。

数十年前であれば共働きの夫婦が2人とも正社員として雇用されるというのは公務員でしか実現できませんでした(女性が学校の先生だったなど)。しかし、今は女性も新卒から正社員として働き、一時期離職や休職することがあってもまた働き続ける時代になっています。

共働き正社員夫婦の現役時代は日々忙しく、ストレスもたまる生活かもしれません。しかし、きっと老後には笑ってセカンドライフを楽しめる余裕が生まれるはずです。

男女問わず、おひとり様の老後が危うい?

一方で、老後の不安を抱えているのは「おひとり様」です。社会の変化に伴い「結婚するのが当たり前」という考えは薄れてきました。義務的な結婚に個人が縛られないことは幸いですが、家計でいえば「一人暮らし」は「ふたり暮らし」よりお金がかかります。

一人暮らしだからと夫婦の半分の支出でやりくりできるわけではありません。3分の2から70%くらいの家計をイメージする必要があります。ひとりでもお風呂のお水はためなければいけませんし、冷蔵庫も1台必要になるなど、半減しない支出項目が多々あるからです。

しかし老後の収入を考えると「ひとり分の基礎年金+厚生年金」でやりくりすることになりますから、共働き夫婦と比べて半減します。かなり苦しいやりくりとなります。

さらにずっと非正規雇用で働いていた場合は、基礎年金のみの老後になるためますます苦しいことになります。退職金ももらえません。

社会的には公的年金はおひとり様を支える大きな力です。子から仕送りを受けられなくても、社会的な扶養のシステムが機能することにより、終身にわたる収入が確保されるからです。これはおひとり様の助けですが、手厚い金額とはいえないことには留意が必要です。

おひとり様は自覚的に自助努力の備えが必要です。個人型確定拠出年金(iDeCo)やつみたてNISA(少額投資非課税制度)が支えとなるでしょう。ぜひ活用したいところです。

自営業者の老後にも大きな不安

もう一つ、働き方でいえば「国民年金だけ」に加入している人たちの老後にも不安があります。

20歳以上の学生、自営業者やフリーランスの人たち、会社員であっても会社が厚生年金の適用をしていない人たちがこれに当たります。会社員や公務員の配偶者で専業主婦(一定の所得以下のパートも含む)も保険料負担なく国民年金のみに加入していることになります。

年78万900円が国民年金に40年加入しきちんと納付した場合の満額です(2021年度)。25年くらいの老後を考えれば累計1950万円以上にもなりますが、月あたりにすると6万5000円程度です。保険料の未納期間があればその分さらに下がります。

かつては「専業主婦は夫の年金で暮らす」「自営業者は一生働き続けることが多い」という考え方があったようですが、むしろ仕事をしなくなった老後、おひとりさまの老後の生活を考えると十分な水準とはいえません。

いわゆる「老後破産」のリスクがあるとしたら、国民年金だけが老後のあてになっていて手持ちの資産がほとんどない人か、無年金になってしまう人たちです。

さらに、マクロ経済スライドにより、給付水準が引き下げられていく影響も受けます。調整が厚生年金より遅れている影響が、将来の世代にのしかかる関係もあって、今よりも苦しい未来が想定されます。

基礎年金のしくみについてはマクロ経済スライドのあり方の見直しがこれから議論される予定です。また、65歳まで加入によると、増額の道が開かれる(45年納付することで、現状より12.5%多い基礎年金とする案)が何度か議論の俎上(そじょう)にのぼっています。もはや60歳を引退年齢とする時代ではなく、実現の道筋をつけてほしいところです。

いずれにせよ改正はこれからですから、「国民年金だけ」の人も自助努力の積極的上積みを考えてみてください。

年金制度はこれからもあなたを支え続ける

先週と今週は、社会の変化と年金制度の対応について考えてみましたが、年金制度がむしろ時代を先取りしてきたところもあります。例えば、実態としての夫婦の生活を尊重するスタンスを採用してきたことはあまり知られていません。事実上の婚姻状態にあれば、婚姻届がなくても事実上の夫婦とみなして年金給付の対象としています。戸籍のデータを硬直的に捉えず、現実的な運用をしてきたわけです。

一方で、LGBTのようなテーマ、例えば同性婚についてはなかなか対応ができていない悩みもあります。

年金制度は社会を映す鏡であると先週書きましたが、高齢化と長い老後を支える大きな役割をこれからも担い続けていくことは間違いありません。そのうえで、多様性のある社会をこれからも支えていくことも年金に期待されている役割です。それは誰か他人の話ではありません。あなたもあなたの友人も年金制度の対象となっているのです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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