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ある日やってくる「アクシデント」にどう備えるか

災害・紛争の不安に備える(4)

今月は難しいテーマ、自然災害や国際紛争といったリスクに私たち個人は備えることができるか、というテーマを考えてみました。発生リスクをゼロにすることはできません。しかし個人はそれにあらかじめ備えることは可能です。最後に考えてみるのは、公的な備えを知り、私的な備えを考えることです。

5つのお金のキーワード その一つ「備える」

お金には5つのキーワードがあります。「稼ぐ」「使う」「増やす」「借りる」「備える」です。お金の流れに問題があるとしたら、それは5つのキーワードのいずれかに滞りがあるか水漏れが起きているということです。

まず、日々の生活を営む中で起きる3つのお金の流れを最適化します。まずはしっかり働きより多く「稼ぐ」こと、そしてそれを賢くムダなく「使う(節約)」すること、そしてその差額を将来の資金ニーズのために「増やす」という流れです。

そして、必要に応じて2つのお金の流れに留意します。住宅ローンやクレジットカード利用などで生じる「借りる(返す)」問題と、不確実なリスクに「備える」問題です。今月考えてきた、災害や事故、紛争などのリスクに備えていくテーマは、この5つの中の「備える」問題に該当します。

まず、国や地方自治体が安全のために備えをします。国は私たちの大きなリスクに備え、また安全保障のために税収の一部を充てています。社会保障制度も日常生活のリスクを支える重要な役割を持っています。

これに加えて、個人がリスクに備える仕組みもあります。民間の保険や共済に加入することで病気やケガ、事故などに備えるわけです。

人生の選択がリスク回避に通じることもあります。例えば、家を建てるとき、少々の予算の差が耐久性の向上につながるならそれを負担するのも「備え」といえます。地盤や地形をみながら立地を慎重に検討するのも、災害のリスクを回避することになるかもしれません。

「備え」は単一のものではなく、複線的に考える必要があります。

リスクを抑える国や自治体の取り組み

私たちの安全を守ることは国の責任です。国や地方自治体は、私たち国民が安心して暮らしていけるようその生命や財産を守るべく、環境整備をする責任を負っています。

税金はそのためにも使われています。例えば水害対策、地震の被害軽減のために対策を講じることは多額の予算もかかるわけですが、できる限りの取り組みが行われています。子どもが楽しく遊ぶ公園も、倉庫には食料の備蓄が行われ、避難待機場所にもなるよう整備されています。

日本が他国に侵略されないように外交を行い、また適切な防衛力を保有することも、私たちの生活と安全を守るための国の取り組みです。どこにちょうどいい予算水準を設定するかは難問ですが、安全保障にリソースを振り向ける必要があることは間違いありません。

私たちは、こうした行政の取り組みや支援を受けることでリスクを小さくすることができます。もし、自然災害に巻き込まれたときなどは、まずは公的な支援を受け入れ、そこから自力での再建を目指していけばいいのです。

個人の第一の備え キャッシュを持つ

個人レベルで考えたとき、どんなリスクもまとまった資産があれば乗り越えることができます。現金は最大の「備え」たりえるからです。

生活資金として数カ月暮らせるくらいのキャッシュがあれば、緊急の避難ができます。生活を立て直すための時間的余裕をそのお金で買えるわけです。

ボーナス1~2回分相当のキャッシュがあれば、これは生活の立て直しのベースとなりえます。被災した家を完全リフォームすることは無理でも、最低限の修復はできるでしょう。

被災者には国や地方自治体の支援があるものの、生活のすべてをいつまでも負担してもらえるわけではなく、最後は自分自身の経済力を新生活に充てていくことになります。

災害によらず、しっかりお金を持っておくことが人生の余裕となり選択肢を広げてくれることになります。若い世代は、あらゆる人生のリスクに立ち向かう力として、資産形成を意識してみるといいでしょう。

とはいえ、すべてのリスクに備えられる金額をあらかじめ用意することは不可能です。そこで私たちは保険を利用することになります。

あなたのリスクをカバーする民間保険

最初の「備える」に戻りますが、私たちは病気やケガ、突然の死亡、事故や災害に備えるために民間の保険や共済に加入しています。

発生頻度は低いものの、補償は高額になるような備えは保険や共済の得意分野です。例えば、交通死亡事故を起こして5億円超の支払いを求められることがありますが、これは現金であらかじめ準備するのは不可能です。任意の自動車保険に加入し、対人賠償を無制限としておけば、毎年の負担は小さくても、もしものときに助けてくれます。

死亡保険、医療保険、火災保険(および地震保険)なども、もしものときの備えを行う仕組みです。一方で補償額を上乗せしすぎると、保険料も割高になる側面もありますので、負担と補償のバランスを見極めた契約が大切になります。

自然災害についてみると、損害保険会社の地震保険の世帯加入率(共済含まず)は、33.9%だそうです(2020年度、損害保険料率算出機構)。生命保険文化センターの「2021年度生命保険に関する全国実態調査」によれば、民間の生命保険や共済への世帯加入率は89.8%なのに比べると大きく下がります。

地震保険に入れば自然災害による被害を全額カバーしてくれるとは限りませんが、すでに加入している火災保険に補償を追加することは比較的簡単です。3.11を振り返ってみた今月、一度調べてみてはいかがでしょうか。

さて、私たちの日常生活は安全と安心あってこそ、と今月は再確認する月となりました。万が一のときに備えることはもちろんですが、今という日々を精いっぱい楽しく悔いなく過ごすこともまた、未来への「備え」かもしれません。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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