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お金の無計画を断つ 精神論より自動化で改善

お金にまつわる悪い癖・習慣(4)

今月はお金にまつわる悪い癖、習慣について考えてみました。意識することによって直せるならもちろん、改善したいところですが、なかなか直せないのが癖でもあります。そこで、最後は「精神論以外」でお金の問題を改善する方法を考えてみます。

30年後の1万円のために今1万円を我慢したくない

行動ファイナンスの研究で「近視眼的損失回避」といわれる個人の非合理的行動についての分析があります。簡単に言い換えれば「将来、1万円が必要だとわかっていても、眼前の1万円を今使わずためておくことは難しい」「今の1万円を投資等に回せば未来では1万円以上の価値になるとしても、今使わず我慢して残すことは難しい」ということです。

1万円の預金があって、これを使うことができればそれなりの消費が可能です。食事をしてもよし、買い物をしてもよし、それなりの満足が得られます。

しかし、将来、このお金の必要性が生じることを見通して、1万円を残しておくことができれば1万円が未来の軍資金として確保されるだけではなく、さらに増えてくれます。低金利とはいえ預金には利息がつきますし、株式投資などに回せば中長期的には高利回りの確保が期待できます。

理屈としてはその通りです。しかし「そうだ、30年後に2000万円必要なのだから、私は毎月1万円を倹約するために生活水準を落とそう! 毎月入金手続きをして積み立てをしよう! そうすれば未来は豊かなものになる!」とは、なかなかならないものです。

人間はそれほど強い意志を持っているわけではありませんし、また日々忙しく過ごしています。精神論や教科書の理屈だけで、お金の問題が改善するなら苦労はないのです。

悪癖を直すのに精神論は通用しない

人の精神の弱さは人間らしさという側面もあります。相手のミスをいちいち指摘していては人間関係は成り立ちませんし、ある程度のところで許し合うこともまた円満な関係作りやメンタルの安定に欠かせません。

とはいえ、お金の問題を先送りし続けて65歳になり、退職金はもらえず、年金未納による無年金になり、ローンはまだ1000万円以上残っている、というわけにはいきません。

先送りは、「何もしない」というお金の悪習慣です。

「今は苦しいからためられないけれど、年収が増えたら貯蓄をする」という人もいます。一見すると合理的のようですが、実際には実行できません。年収が増えたときには、「やっと苦しい生活を抜け出せる」と支出を増やしてしまうからです。

この考え方では一生ためられない人生となります。となると、自分に仕掛けを講じて「強い意志がなくても、お金が自動的にたまる方法」をつくってみる工夫が必要になります。例えば、

・給与振り込み時点あるいは直後に、貯金目標額を自動的に他の口座に移動させる
・あえて解約に制限のある口座を活用し、長期的に資産形成する
・投資信託などを活用し、自動的に銘柄の選定が行われ分散投資されるようにする

といった方法を考えてみることが有効です。カギとなるのは「自動化」される仕掛けをつくることです。

財形貯蓄、積立定期預金、積立投資信託などが考えられます。税制優遇口座としては個人型確定拠出年金、iDeCo(イデコ)や積み立て型の少額投資非課税制度、つみたてNISAの制度がありますが、これも自動積み立てをベースにした枠組みです。

一度手続きをしておけば、勝手に引き落としされるのがメリットです。間違っても「給料振込日はATMの行列に並んで自分で出金して、他行に入金しにいく」のような精神論に頼らないことです。

自分の弱さは認めたうえで、意志が弱くてもたまる仕組みを考えてみましょう。

「きっかけ」をつかまえることで改善する

今月はお金の悪癖や習慣について考えてみましたが、そもそも「無計画である」「実行せず先送りする」という問題は、ただ何もしていないだけなので、改善するのが難しいところがあります。

日常生活をただ営んでいることが「先送り」になっていて、未来に徐々に暗雲が垂れ込めてくるとしても、無駄遣いと比べるとはっきりとした失敗がない分、問題が可視化されません。そして何もしていないがゆえに改善は見込めません。これはどうすべきなのでしょうか。

理想的にはお金の問題をできるだけ可視化し、中長期的な未来に備える意識を持つことです。しかし、誰もがきちんと計画できるはずがない、ともいえます。だとすれば「きっかけ」作りを意識し、また「きっかけ」は逃さないことが大切です。

例えば、新入社員になって「企業型確定拠出年金に加入するか、加入せず前払い退職金として給与に上乗せするか」と聞かれたとき、または会社の社内メールで「財形貯蓄の新規積み立て申し込みは今月末まで」というお知らせをみたとき、行動を起こすことです。これなら入社時点に一度きり、あるいは年に1度のお知らせをチェックしたときだけアクションを起こせばいいのです。

雑誌や新聞記事で「iDeCoがオススメの3つの理由」とか「つみたてNISAを始めよう」のような記事をみたとき、まずは読んでみて、口座開設申し込みの行動を起こしましょう。記事が目に留まったというきっかけを逃さないことです。

何かビビッときたら情報を取り逃がさないこと、そして行動を起こすことをためらわないことは、大事なお金の習慣と考えてみるといいでしょう。

その場ですぐ動けないときは、スマホのTODOリストのようなものを使い、「少しだけ先送り」してもいいでしょう。来月あるいは再来月のちょっとヒマができたときに「何をやるんだっけ?」と忘れてしまわないだけで、あなたは先送りをひとつ減らすことができるのです。

究極の自動化は社会保険制度と会社の退職金

実は遠い将来や発生頻度の低いリスクに備える仕組みに、自動的に加入していることもあります。

公的年金制度や健康保険制度は、老後の生活の安定や病気やケガの治療費負担が生じるリスクに備える仕組みとして、自動的にあなたの給与から社会保険料を引いています。高い負担だと文句を言いながらも納めていれば、ケガや病気をしたとき、会社がいきなり倒産したとき、老後に働けなくなったときの大きな支えとなってくれます。

退職金・企業年金制度を会社が用意している場合、これは「強制的な老後のための貯金」でもあります。退職給付会計上はこれを「賃金の後払い」とみなして企業は債務認識をします。給与として毎月払わず、退職時まで企業サイドで積み立て・運用・管理をしてくれることで、結果として退職後にまとまったお金をもらうことができます。自分で2000万円をためるのは困難でも、その一部ないし全部(水準は会社ごとに異なります)を会社が計画的にためてくれているわけです。

こうした仕組みは強く認識することはありませんが、「未納はしないこと」「会社の制度は最大限活用すること(選択できる場合)」を心がけるだけでお金の問題を解決する糸口になってくれることでしょう。

できるところから改善してみよう

今月はいくつかのポイントでお金にかかる悪い考え方、癖や習慣を変えてみようという話をしてみました。お金の問題も、健康に関する習慣づけもどこか似たようなところがあります。意識するところは意識して改善し、自覚しにくいところは仕掛けをつくって自分をよい方向に導いてみてください。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp

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ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。

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