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「寅、千里を走る」は本当? 相場のアノマリーを知る

株式投資の世界には「アノマリー(経験則)」が存在する。理論的に説明することが難しいマーケットの規則性のことで、必ずしもその通りには動かないが、時には投資戦略のヒントとなるかもしれない。2022年まで残すところあと1カ月。新年を迎える前に、季節性や年間のイベントにまつわるアノマリーを今一度振り返ってみよう。

季節ごとのアノマリー

株価変動の季節性についてのアノマリーは、広く知られているものも多い。例えば、「掉尾(とうび)の一振」。掉尾とは「物事の最後に勢いが盛んになること」を指し、年末に相場が上昇しやすいという経験則だ。年末が近づくと多くの投資家が節税対策のため含み損の出ている銘柄を売却するが、大納会直前になるとその動きも落ち着き、需給が改善することが背景にある――との説もある。

米ウォール街で伝わる「セル・イン・メイ(5月に売れ)」のアノマリーも有名だ。「だが9月に戻ってくるのを忘れるな」や、「そしてセントレジャー・デー(英国で毎年競馬レースが開催される、9月の第2土曜日)に戻ってきなさい」などと続く。米国の確定申告の還付金は2~5月に支払われるため、その間は資金が流入しやすいが、その流れが一巡すると夏場にかけて軟調な相場となりやすいことが理由だともいわれる。日本ではゴールデンウイーク休暇や3月決算企業の本決算発表前で、買いが手控えられやすい時期でもある。

他にも1月は株高になりやすいという「1月効果」や、株価は2月上旬に高値をつけて3月下旬に安値をつけるという「節分天井、彼岸底」、10月末に株を買って翌年4月末に売ればリターンが高いという「ハロウィーン効果」といったアノマリーもよく知られている。

では実際のデータから見た、日本株が上昇しやすい月はいつか。日経平均株価の月間騰落率(過去10年間の平均)をみると、夏に相場が軟調になりやすいことは確かなようだ(下のグラフ)。平均月間騰落率は11月が最も高く、プラス4%超えだった。10月末から春にかけて上昇相場を描きやすいというハロウィーン効果は、日経平均にも適用できるのかもしれない。

寅年、過去は成績ワースト

年間の騰落についてのアノマリーもある。2022年は寅(とら)年。兜町にはえとにまつわる相場格言が存在し、「丑(うし)つまずき、寅千里を走り、卯(う)跳ねる」といわれる。また「戌亥(いぬい)の借金、辰巳(たつみ)で返せ」「辰巳天井」という言葉もあり、戌年と亥年は安値をつけやすく、辰年と巳年に高値をつけやすいというジンクスも伝わる。

ただ、相場格言と実際の相場の動きは異なることも多い。寅年の成績は、戦後に東京証券取引所での取引が再開されて以来では1勝5敗と、十二支でワースト。ストックボイス(東京・中央)の副社長で長年相場を見てきた岩本秀雄さんは「相場格言では勇ましい印象の寅年だが、いずれも景気の"後退"や"停滞"がキーワードとなっていた」と話す。第1次石油危機後の不況(1974年)や、金融システム不安(1998年)、金融危機後の対策切れ(2010年)などが重なったと指摘する。

寅年で唯一の勝ち越しである1986年は年間42.6%も上昇したが、岩本さんによると「この年は『バブルの入り口』といわれ、プラザ合意後の円高不況を阻止すべく打たれた金融緩和策が株価に効いた。景気実態は停滞期だった」との分析だ。

2022年の重要イベントといえば、米中間選挙。米国の大統領選挙・中間選挙の年について、1950年以降の日経平均株価の平均騰落率を調べたところ、中間選挙の年がプラス0.98%と最も悪く、大統領選の年に向けて上昇に弾みがつく傾向が見られた(下表)。

中間選挙の年は年間の騰落率で見ると最も数字が悪いが、四半期ごとで見ると10~12月期の平均騰落率はプラス3%超、その翌年1~3月期はプラス6%超と好調が続く。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「一般的には、『選挙前は買い』とのアノマリーがある。聞こえのいい政策が打ち出され、期待感からその国の株価が上昇しやすいといわれている。ただ、米選挙の影響が日本株にどれほどあるかは不明」と話す。

知らないよりは知っているほうがいい

アノマリーは必ずしも当たるわけではないが、「知らないよりは知っているほうがいい」と岩本さん。どういった経験則が伝わっているのかを頭に入れた上で、それに乗った戦略でいくのか、あるいはその裏をかくか、全く考慮せずにいくのかを自分なりに考えることが重要だという。

(大松佳代)

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