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「退職金課税で増税?」iDeCoの疑問に答えます・番外編

知っ得・お金のトリセツ(97)

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「退職金課税『勤続年数関係なく一律に』 政府税調で意見」。18日に開かれた政府の税制調査会の議論を報じた日経記事がSNS(交流サイト)上でちょっとした話題だ。「退職金からまでも税金をとるのか!」「やっぱりiDeCoは損する」「次は65歳まで引き出せなくなる?」……などなど。満載の突っ込みどころそのままにiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)の改悪を懸念する声がネット空間に広がっている。

誤解その1)そもそも退職金は今でも課税対象

結論からいうと誤解だ。18日の税調で当該「改悪」議論は全くされていない。問題提起されたのは「退職所得控除額」の計算方法の変更。そもそも退職金は今でも課税対象だが、給与の後払いという性格に鑑み「この額までは必要経費とみなして税金をかけませんよ」と差っ引ける控除枠が設けられている。その計算方法が勤続年数20年を境に、20年以下だと年40万円だが20年超では年70万円とガクンと大きくなることを問題視したもの。

【退職所得控除額の計算式】
勤続年数20年以下:40万円 × 勤続年数  ※最低80万円
    20年超 :800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年)

雇用市場の流動性を損なうと以前から議論の俎上(そじょう)に上っており年末の税制改正を前にした、この時期の定番イシューとさえ言える。それが突然「バズった」のは関心の高いiDeCoとセットで取り上げられたからだろう。10月から加入できる人が公的年金に加入するほぼ全員に広がり「全員iDeCo時代」が始まった。

誤解その2)iDeCoも受取時は課税対象

iDeCoの枕ことばは「3度おいしい節税の王様」。掛け金を出して積み立てる時、金融商品で運用している間、そしていざ60歳以上になり資金を受け取る時と3回にわたり税制上の優遇措置がある。

だがそれをもってして「iDeCoとは税金がビタ一文掛からないもの」と思ったら、それは誤解だ。最後の受取時は原則課税。運用益だけでなく元本も含めた受給額全体に税金がかかる仕組みだ。とはいえ、実際のところは結果的に税金ゼロの人も多い。一時金で受け取る場合は話題の上述、退職所得控除の対象になるからだ。全額引ききれなくても、課税対象はさらにその半分におまけしてくれる。その後超過累進課税である5~45%の所得税率を掛けて算出する(住民税は一律10%)。

他の所得とは別に計算する分離課税でもあり相当優遇されているのは事実だが、現状でも受取時は課税という仕分けである以上、今回の税調の議論を基に「iDeCoに課税……オワタ」はおかしい。

だからこそ重要なiDeCoの出口戦略

ただし、勤続年数を反映させず一律に算定した結果、控除枠全体が減るのであればiDeCoへの影響もあり得る。iDeCoは会社の他の退職金や、年金と「オトク枠」を共有しているからだ。だから現状でも会社からもらう退職金が多ければそれだけで控除枠を使い果たし、iDeCoの一時金に回す枠が残らない人もいる。

「その場合、全額一時金でもらわずに年金方式も併用するなど、出口戦略次第で最終的な税金額はかなり変わる」と確定拠出年金アナリストの大江加代さん。「iDeCoの受け取り方は一時金、年金、2つ併用の3パターンから選べ、もらい始めるタイミングも今年75歳になるまでに延びた。老後資金のパズルを解くようにiDeCo受給のパターンとタイミングを考えよう」

例えば一時金でもらう場合に意識したいのが「5年ルール」。まずiDeCoを先にもらい、その後5年以上間を空けて会社の退職金をもらう順番であれば控除枠を合算されず別々に使える決まりだ。会社の規定で65歳まで退職金受け取りを延ばせる人は検討したい。逆の退職金→iDeCoの順ならこのルールは使えない。

iDeCoのお悩みは尽きない

そんなこんなの尽きないiDeCoのお悩みに答えるべく「マネーのまなび(まねび)」では18日、大江さんをゲストにYouTubeライブ「『全員iDeCo時代』のお悩み解消! あなたの疑問に答えます」を開催した。「56歳です。今からiDeCoを始めて間に合いますか?」「海外在住です。入れますか?」「自営業です。小規模企業共済と併用できますか?」……。具体的な答えはアーカイブをご覧いただくとして、まずは自分の老後資金の全体像を見渡すことから始めたい。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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