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利下げへの転換を阻むFRB最悪のシナリオ

米連邦準備理事会(FRB)が利上げ停止から利下げへの転換(ピボット)も視野に入る段階に入った。

とはいえ、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者たちには、おいそれと、利下げ転換は出来ない「最悪のシナリオ」の呪縛がある。

利下げ転換した後で、下落傾向にあったインフレがぶり返し再び、引き締めを強いられるシナリオだ。

それゆえ、インフレを根絶やしにせねばならない。しかし、根絶やしになったか否か、金融政策の効果判定にはラグがある。暗闇を手探りするリスクは払拭されない。

それゆえ、FRBは焦って動くべきではない、との議論も根強い。

金融不安は銀行の融資基準を厳格化させるので、実体経済を冷やし、利上げ相当のインフレ抑制効果がある。

インフレが後退傾向ならば、政策金利据え置きでも、実質金利はプラス圏なので、実質的に引き締めにはなる。

かくして今回のFOMCの議事要旨が発表されれば、様々な議論があったことが明らかになるかもしれない。

ブラックアウト期間に公的発言できずウズウズしていたFRB高官筋からも、来週は相次いで、見解発表があろう。

FRBのパウエル議長は、これまでの在任中で、FOMCで異議を唱える「反対者」の数が、バーナンキ・イエレン時代より、少ないとの調査結果もある。

しかしいざ、利下げへの転換となれば、意見がかなり割れることは必至だ。

パウエル議長自身も、すでに2つの痛恨の判断ミスを犯したトラウマをかかえている。当初、インフレが一過性と断じ、さらに、緩和から引き締めへの転換が後手に回り、5カ月近くもかかり、その間にインフレ・マグマが蓄積する結果となった。このような経緯があるので、今回は緩和への政策転換ともなれば、かなり慎重にならざるを得まい。

自由に動ける市場と、トラウマを引きずるパウエル氏の違いが鮮明である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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