植田氏「金融緩和を継続」 日銀総裁候補、衆院で所信
次期日銀総裁の候補で経済学者の植田和男氏への所信聴取が24日、衆院で開かれた。植田氏は「日銀が行っている金融政策は適切。金融緩和を継続し、企業が賃上げできる環境を整える」と表明。2%の物価目標は「持続的・安定的に達成するには時間がかかる」と説明した。黒田東彦総裁が主導してきた緩和策の検証は「必要に応じて検討していきたい」と前向きな姿勢を示した。
植田氏は2%の物価目標を盛り込んだ政府・日銀の共同声明について「ただちに見直す必要があるとは今のところ考えていない」と明言した。政府との関係については「総裁として認められれば政府と密接に連携しながら適切な政策を行う」と述べた。
将来の金融政策についても言及し「物価目標の実現が見通せることが見込まれる場合には、金融政策の正常化に踏み出すことができる」と述べた。現在の物価高は「輸入物価上昇によるコストプッシュであり需要の強さによるものではない」と指摘した。

大規模緩和を巡っては、デフレ脱却に一定の成果を残したとの見方がある一方、国債市場の機能低下や財政規律の緩みといった副作用を指摘する声がある。「様々な副作用が生じているが、経済・物価情勢を踏まえると(現在の大規模緩和が)必要かつ適切な手法。今後とも情勢に応じて工夫を凝らしながら金融緩和を継続する」とした。
国債購入について「財政ファイナンスのためではなく、最大の目的は持続的・安定的な2%目標の達成」と強調。2%目標を達成した場合は「大量の国債購入は止める判断になると考える」と説明した。保有する国債については「売却するというオペレーションに至ることはないだろう」と指摘した。
上場投資信託(ETF)の処分については「出口が近づいた場合に考えないといけないが、具体的に言及するのは時期尚早」とした。
日銀は22年12月に市場機能の回復に向け、長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大した。その上で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について「様々な可能性が考えられる。具体的なオプションの是非については(発言を)控えたい」とし、将来の見直しに含みを持たせた。
日銀総裁の職務については「発言や行動が市場や国民生活などに大きなインパクトを及ぼしうることを十分認識し、職責を果たしたい」とし、「積年の課題だった物価安定の達成というミッションの総仕上げをする5年間としたい」と抱負を述べた。
政府が次期正副総裁の人事を固めてから植田氏が公の場で発言するのは初めて。日銀の正副総裁は衆参両院の同意が必要で、両院の議院運営委員会が所信を聞き取り、本会議を開いて採決する。参院の議運委は27、28日に所信を聴取する。
国会の同意が得られれば、植田氏は4月9日、副総裁候補の内田真一日銀理事、氷見野良三前金融庁長官は3月20日に就任する予定。
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