幸福のためのお金 Life is Beautiful, Life is Money!
マネープランをパーソナライズ(4)・最終回

実は本連載、今週が最終回になります。今月はマネープランの「パーソナライズ」について考えてきましたが、まとめをして、最後のご挨拶をさせていただきたいと思います。
お金は人生の問題だが、全て決めるわけではない
先月はファイナンシャル・ウェルビーイングというキーワードでお金と幸福の関係について考えてみましたが、究極的にいえばお金が人生を決めるわけではありません。
あなたの人生の選択が先にあり、そこで幸福を追求し、その過程でお金がファクターとしてかかわってくるわけです。しばしばこの問題は逆に考えられています。お金が人生を常に制約しているという考えが強いように思われます。
確かに、お金は人生における一定の制約条件にもなります。夢の実現に高い費用が生じるとき、それを裏打ちする資金計画がないなら、夢を諦めることもあるでしょう。
しかし、これを言い換えれば、夢がはっきりしているのであれば、その実現のために資金計画の見直しを行うことで、夢をもう一度実現性の高いものにすることもできるということです。
お金だけがあって、夢ややりたいことがない人生というのはむなしいものです。1億円をためて、アーリーリタイア(早期リタイア)をしてみたものの、友人はみんな仕事で忙しく、ひとりぼっちで何もやることがみつからない人がいます。
十分な資産形成を行い社会人を早期に卒業することをFIRE(Financial Independence,Retire Early)といいます。一方で、「FIRE卒業」と言ってもう一度働き始め、人とのつながりを求める人がいるのは、人間関係や夢や生きがいの存在が私たちに欠かせないものであることを示唆しています。
決められるより自分で決めたほうが満足できる
お金とウェルビーイングについて考えるとき、もう一つ重要なのは、自分で決断をするということです。「自分で決めた」と「自分に決定権はなかった」ではどちらが満足度が高いものとなるでしょうか。
結果がいいものとなれば、他人が決めた決断の結果であったとしても満足度は悪くないような気もしますが、やはり達成感は薄いものとなるでしょう。
2000ピースのパズルを、苦労しながらもゼロから完成させたほうが、完成直前の最後の1ピースだけ渡されて「完成おめでとう!」と言われるよりいいはずです。自分で考え、自分で決断したほうが満足度や幸福度は高まると考えられます。
試行錯誤する道のり、実現のために費やした努力の積み重ねもまた、お金の幸せの一部だと考えてみてはどうでしょうか。
最近のアニメには「鬱展開」という言葉があって、逆境に主人公が追い込まれると嫌気する視聴者がいるそうです(確かにリラックスを求めて見ていたアニメがピンチの連続では辛いかもしれませんが)。
私は逆境は、その後の大逆転やカタルシスのための重要なパーツだと思います。個人のお金の問題においても、すぐ諦めて思考停止せず、顔を上げて解決に向けて努力していきましょう。
例えば一時的に給与が減少したときに、その数年を銀行とも相談しながら乗り切り、住宅ローンを完済することができれば、それは大きな達成感をもたらします。
誰でも何度かお金のピンチがやってきます。そのときは自分にフィットした対策を、周囲の力を得ながら立案していきましょう。自分の判断と決断で逆境を乗り越えたことは、あなたの自身と幸福につながっていくはずです。
あなただけのライフプラン、マネープランを考える
テンプレートのマネープランはあくまでスタートラインです。「私なんて平凡な人間ですから」という人だって、他人と条件がまったく同じ人はひとりとしていません。
お金の問題、特にトラブルが生じたときは、必ず問題があなた個人のものとなっています。いわばパーソナライズされた状態にあります。
しかし、自分にパーソナライズされたお金の問題意識やプランニングがはっきりすれば、課題解決の道を見いだす入り口に立てたということでもあります。
お金の問題で何か困っている、あるいは不安を感じている人は、まず標準的なマネープランや金融商品の仕組みを学び、それを自分流にカスタマイズをしていきましょう。先週も述べたとおり、第三者の知見を活用するのもいいでしょう。
自分の人生の責任を負うのは他ならぬ自分自身です。そして自分自身の人生を変えていけるのも、やはり自分自身です。
不安を減らし、未来の幸せや豊かさを手に入れるために、自分自身にパーソナライズされたライフプラン、マネープランを考えていきましょう。
しっかり考え、行動する人には、前向きの未来がきっと待っているはずです。
Life is Beautiful, Life is Money!
さて、本連載「Life is MONEY」は今回が最終回になります。振り返ってみると、「バラ色老後のデザイン術」(2012年8月〜)、「人生を変えるマネーハック」(16年2月〜)、「Life is MONEY」(20年3月〜)と10年以上にわたって日経新聞電子版において、週刊連載の枠を担当させていただきました。
何年かに1回、正月休みを一度取る以外は、連載を休まず続けられたのも読者の皆様の温かい反応(と時には厳しい反応)があってこそでした。
「年金は破綻するのか問題」「老後に2000万円問題」「キャッシュレス決済活用術」「日本版FIRE(早期リタイア)」など、タイムリーなテーマも掲げつつ、お金の誤解を解き、現実的な対応策を考えてきました。
私のコラムは事実や制度の説明に終わらず、何らかの解決策が示されている「ソリューション・オリエンテッド」の記事だと言われたことがありますが、ひとつでも読者のお金の問題解決に役立ったのであればうれしく思います。
人生は美しく、楽しいものです。ときに逆境やしんどい日々もやってきますが、それも人生を鮮やかなものとするスパイスです。
とはいえ、人生の問題が自然と解決するわけではありません。特にお金の問題が人生の選択に大きく影響してきます。そして、お金の問題は自分自身が理解し、行動し、解決させていく必要があります。
「Life is Beautiful」とよくいいますが、続けて「Life is Beautiful, Life is Money!」としたところで、連載の最後のメッセージとさせていただきます。
あなたの素晴らしい人生を、あなたのお金が実現してくれますように!

ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。