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子どもの大学費用 教育ローン・奨学金とどう向き合う

子育てとお金(4)

今月は「子どもとお金」の問題を学費の準備を中心に考えてきましたが、計画的な事前準備が何より肝心です。一方でどうしても資金が不足した場合、教育ローンや奨学金を検討することについてはどう考えるべきでしょうか。

教育ローン、「退職金で完済」はうまくない

学費準備が不足してやりくりが難しいとしても、子どもに「お金がないから進学は諦めろ」とはなかなか言いにくいものです。こうした家庭にとっての助け舟は教育ローンです。銀行の提供する教育ローン、あるいは日本政策金融公庫の教育一般貸付(国の教育ローン)などが広く利用されています。

教育ローンそのものは「比較的、いい借金」です。まず、金利が低く設定されています。また、返済の猶予(卒業するまで利息のみ支払うなど)の条件をつけたり、返済期間を長期に設定したりすることも比較的やりやすいローンです。

金利差は重要です。例えば国の教育ローンは金利が現在年1.66%です(執筆時点)。仮に200万円を借り6年で返すとしたら、総支払額は約210万円です。

これを金利年15%のカードローンなどに頼ってしまうと、総返済額は約285万円です。高校の1年分の学費くらいの差がついてしまいます。

しかし「いい借金」だから利用をお勧めするというわけでもありません。教育ローンの返済を遅らせると、完済になるまでに自分自身の定年退職がやってくるという問題があるからです。

35歳のときに生まれた子どもが57歳のときに卒業、返済が3年たったところで60歳定年となれば、全額の返済に間に合わないことが多いでしょう。しばしばみられるのは「退職金が入ったので、これで完済しよう」というものです。

これは住宅ローン返済でもみられるやりくり方法ですが、自分自身の未来を考えると暗雲が垂れ込めます。本来なら、リタイア後20~25年のあいだに活用すべき「老後に2000万円」の一部が取り崩されてしまうからです。

奨学金、子どもの未来に返済負担を背負わせるか

では、奨学金制度はどうでしょうか。進学の意欲があっても学費負担を親が十分にできない場合に利用可能な制度です。

大きく分ければ、返済不要であるもの(給付型)と返済が必要となるもの(貸与型)があります。また、学力等の基準を設けたり(返済不要であるものに多い)、親の年収基準を設けたりします。日本学生支援機構の奨学金制度、地方自治体や各種団体、民間企業などが行う制度、学校が行う制度などがあります。

学力優秀な生徒に返済不要な奨学金が与えられ「優秀だが経済的に恵まれない子」も進学の機会を得られる、というのは社会的にも非常に意義があることです。

しかし貸与型の奨学金は卒業後に返済が必要です。「教育ローンは親が返す、奨学金は子どもが返す」と構図が違うのです。

低利で借りられる条件はありがたいものの、奨学金は卒業後に子どもが社会人としてキャリアを構築し、自らの生活を営む収入を得ながら、かつ奨学金の返済余力も持つ必要があります。

国内外でもしばしば、就職難や失職により返済に苦しむ若者の事例が紹介されますが、安定的に稼ぎ続けるキャリアにつながっていくかが、奨学金を活用する意義の分岐点ということになります。

また、親のほうも、子に借金を負わせる以上は「自分の老後は自分たちでやりくりするので、子に負担を求めることはしないつもりだ」ということを明確にしてあげてほしいものです。

奨学金の仕組みが悪いわけではありません。親も子も、それなりの覚悟をもって、奨学金との付き合い方を考えてみたいところです。

「事前準備をしっかり」が解決策

前回は計画的な学費資金準備について3段階のステップで考えてみましたが、親が計画的に準備に取り組めば取り組むほど、教育ローンで自分自身の将来に負担を先送りするリスクも減りますし、奨学金で子の将来に負担を肩代わりしてもらうこともなくなります。

とある金融機関で若手銀行員を相手に「顧客と教育ローンを契約したことは手柄ではない。顧客との生涯取引の中で15年前のお子さん誕生時に、計画的な教育資金積み立ての提案をしてこなかったことが教育ローン利用につながっているのだから」と講演したことがあります。

15年前に子どもの誕生時、いつかは高校大学に行くことも見据えて毎月数万円の積み立てをスタートしておいた人は教育ローンを利用したとしても、少額の利用で済むことでしょう。

同じことは老後資金の準備でもいえますが「必要なときに、焦っても遅い」「早く気がついて準備することが最上の対策」ということを考えておきたいものです。

奨学金を使うなら親の老後経済の確立が前提

奨学金の説明で少し触れましたが、子どもの将来に学費の負担を求める以上は、親は自分の老後の仕送りを子どもに求めるようなことはしてはいけません。

奨学金の返済に加えて親への仕送りをしたら、どんなキャリアであっても子ども自身が結婚や子作りのようなライフプランを描けなくなってしまいます。

欧米では「親の老後の経済は親自身の問題」「子の高等進学費用は子ども自身の問題」と割り切り、一般的に大学の学費については本人負担とするといわれます。

日本では長らく「子の学費は全額親が持つもの」というイメージが定着してきましたし、それができるのは素晴らしいことです。しかし、学費の上昇傾向などをみると全額を親が準備すると、自分の老後に影響を及ぼすことも否めません。

「部分的に、子に学費の負担を求める」という選択肢と向き合うのが、学費準備の最後の山になってくるかもしれません。そこは親子でじっくり話し合い、納得のいく進路にしてほしいものです。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「日本版FIRE超入門」(ディスカバー21)など。http://financialwisdom.jp
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