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ウクライナへ寄付 ふるさと納税という選択

知っ得・お金のトリセツ(84)

ウクライナで平和な生活が突如奪われてきょうで3カ月。今も繰り広げられる現地の惨状に心が痛む。遠い安全圏で暮らす世界第3位の経済大国の個人として、せめてできることの1つに寄付がある。とはいえ、こちらも折からの円安・物価高。中には「余分に使えるお金なんてない」という人もいるだろう。そんな人でも必ず(税金を払っている限り)持っている「お財布」がある。ふるさと納税だ。自分が来年払う住民税を原資にする、あの制度を使えばキャッシュアウトを2000円に抑えつつ寄付ができる。「ふるさと」をウクライナまで広げる拡大解釈については議論の余地のあるところではあるが……

税金をおまけしてくれる「寄付金控除」

使う大枠は「寄付金控除」の仕組みだ。国や地方自治体をはじめ公益法人やNPO法人等々、公共のためになる活動を行う団体に対する寄付は確定申告を行うことで支払う税金の一部が戻るメリットがある。所得税の計算をする時「そういう事情ならこの額はもともと稼がなかったと見なしましょう」と寄付額を差し引いて所得を圧縮してくれる所得控除の仕組みだ。戻る額は上限の範囲内で「(寄付額ー自己負担2000円)×所得税率」。例えば今、所得税率20%の人が日本赤十字社の「ウクライナ人道危機救援金」に10万2000円を寄付すると寄付金控除の額は2万円となり、残りの8万2000円が自己負担額になる。

「税額控除」が選べるかは相手先次第

この基本の仕組みに加え、2011年以降は寄付先の団体次第では「税額控除」も選べるようになった。おなじみの住宅ローン控除が代表例だが、税額控除の仕組みは最終的に計算した税額から直接引き算するので、計算途上で差し引く所得控除よりも一段とおトク度が高い。戻る額は「(寄付額ー自己負担2000円)×40%(政党などは30%)」なので所得税率が40%超の高所得者でもない限り、一般にはこちらの方が戻りが多くなる。税額控除が選べるかは相手先の団体次第だ。ウクライナ支援で考えれば、例えば日本赤十字社では使えない一方、日本ユニセフ協会では使える。その場合、同じ人が同額の10万2000円の寄付をしても控除額が4万円に増え、自己負担額が6万2000円に下がる。

住民税からの控除は自治体次第

さらに――。所得税以外に住民税からも控除が受けられる場合がある。最大で住民税率の10%だが、都道府県・市区町村ごとにバラバラに対象の団体を指定する仕組み。日本赤十字社の場合も東京都港区など自治体の条例によっては個人住民税からの控除が受けられるようになっているという。「善意の寄付なんだからそろばん勘定するな」という意見もあるかもしれないが、数百円の食品値上げにおびえる昨今、無視できない金額だ。この細かい違いで生じる見逃せない金額差をザックリ乗り越えてしまう制度、それこそがふるさと納税だ。

ふるさと納税経由なら自己負担2000円

ふるさと納税とは、自分がいずれにしても負担する住民税の支払い先を居住地から応援したい任意の自治体に変更する行為。年収や扶養家族等に応じて決まる上限額の範囲内であれば2000円を除いた全額が充当され新たな負担は生じない。この枠組みを使った寄付を多くの自治体が募っている。兵庫県は避難民のサポート、群馬県高崎市はポーランドの姉妹都市に寄付、長野県辰野町は日本赤十字などに寄付……といった具合。ん? 日本赤十字への寄付? 10万2000円を直接寄付すると自己負担は8万2000円のところ、間に「自治体を挟む」と2000円に自己負担額が下がるわけだ。これぞ通常の寄付金控除の仕組みに加えて「住民税特例分の控除」という切り札を持つふるさと納税の威力だ。

同じ対象に寄付しても、ふるさと納税の枠組みを介すると自己負担額が大きく変わってくる不思議については、ニッセイ基礎研究所の主任研究員、高岡和佳子さんがリポートで詳述し問題を提起している。「お金のパイは増えない以上、しわ寄せは寄付者の居住地自治体が被る。単に既存の団体への寄付の『窓口』になることがふるさと納税といえるのかどうか。これまでは返礼品問題に焦点が当たっていたが使途も含めて制度全体を見直す時期が来ているのではないか」

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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