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長期投資で大事な「誰に」お金を預けるか

積立王子への道(42)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

運用会社は大きく2つに分かれている

資産運用業界は大きく「投資信託業」と「投資顧問業」に分かれ、業界団体も投資信託協会と日本投資顧問業協会に分かれる。投資顧問業は主に機関投資家や年金向けに相対契約で資金を預かって運用したり、運用アドバイスをしたりする仕事だ。我々生活者が個人の資金を委ねる場合は大半は投資信託を通じた運用なので、今回は投資信託の運用業界について説明しよう。

投信の運用会社は約 200 社が協会に所属しており、証券投資信託業者と不動産投資信託業者に二分される。生活者にとって一般的なのは株式や債券を中心にした投信なので今回は証券投信業者についての言及になるが、ひとくちに投信会社といっても営業規模は大から小まで様々だ。

親会社の証券会社主導で成長してきた

ちょっと形式ばった説明が長くなったね。投信会社の歴史を振り返ろう。遡ること六十数年前の戦後、生活者の持つ資金を産業育成の原資とするため重んじられたのは、預金を通じた銀行経由の間接金融だったよね。ただ、同時に発展途上の資本市場にも生活者の資金を流そうとする意図で仕組みが作られたのが投信だ。

当時はもっぱら大手証券会社に投信免許が認められ、各社の投信部が組成に携わっていたんだ。その後、投信部は独立分離して投信会社となったものの、成り立ちからして日本の投信業は親会社の証券会社をトップとしたヒエラルキーの下でビジネスを行う存在だったんだ。

それゆえ、日本では投信イコール証券会社が扱う投機的な運用商品と見られがちで、本来そうあるべき一般生活者の資産形成手段としての認知が遅れてしまったんだ。 1990 年代後半になってようやく投信会社の設立が銀行や保険会社にも認められるようになり、同時期に外資系金融機関にもライセンスが開放されて業界の多様化が進んだんだ。今では業界再編の合従連衡もあり、メガバンク系列の運用会社が運用資産規模で証券系をしのいでいる。

日本でもユニークな独立系が登場したが…

そして99年、ハジメくんたちも聞いたことがあるだろう「さわかみ投信」が初めて投信ライセンスを得たことで、それまで金融機関系列しか存在しなかった閉鎖的業界に風穴が開いたんだ。「さわかみファンド」の登場後、日本でも個性的で強い自己主張を持った「独立系」の投信会社がいくつか誕生し、それなりのプレゼンスを示すに至った。とはいえ運用規模的にはいまだに小さく、相変わらず業界で幅を利かせているのが大手金融機関系列の運用会社なんだ。

翻って米国では、ざっと 40 年以上前から本格的な独立系の躍進が始まった。金融機関系列の運用会社で腕を磨いた人たちが続々、自身の納得できる運用を実現したいと会社を辞めて運用会社を創業。互いに個性を競い合い、実績を積み上げていくことで、今では米国では独立系運用会社が圧倒的な顧客支持を得ており、投信業界内でも大手金融機関系の方が影が薄い。

日本は米国の30年遅れと言われる

日本の現状を鑑みるに彼我の差は大きいと言わざるを得ない。日本では大手金融機関系が依然、運用残高で高いシェアを持つ。あらゆる種類の投信を多く品ぞろえしているが、どこも規模が大きい以外に運用理念の特徴や強みといった個性に乏しく、差別化に苦慮している。外資系も本国スタイルと異なり、日本の商慣行にならい証券・銀行等に販売を委ねているため、販売サイドの意向に沿った商品供給が優先され、本来の個性が消えてしまっている。

ユニークな独立系は個性豊かで哲学・理念もわかりやすい。運用実績も良好だが、この国では販売会社の市場支配力が強くて系列運用会社の壁が厚いために、存在感を今以上に発揮することはなかなか難しい。業界構造上の課題だね。でも、日本の金融業界は常に米国を 30 年遅れでトレースすると言われてきた。であれば、投信ビジネスでもやがて業界の構造改革が進み、早晩独立系運用会社が個性を競い合う中で健全に顧客基盤を広げていく局面を迎えるはずだ。

運用会社は自分の大事なお金を託す先だ。会社の理念・哲学が理解できて共感できる対象を見つける――。これは特に長期資産形成においてはとりわけ重要な投信の選択条件だ。長く信頼できる運用会社に出合えるよう、自ら情報を集める努力も欠かせない。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会副会長。積み立てによる長期投資を広く説き続け「積立王子」と呼ばれる。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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