利上げでもREITは有望 ホテル型や物流施設型が狙い目に
23年のオルタナティブ投資展望(1)

REIT(不動産投資信託)は、投資家から集めた資金でオフィスビルなどの不動産物件に投資して主に賃料収入を得るファンドのこと。株式市場に上場され、株式と同じように売買できる。主に賃料からなる収益を分配金として受け取れるほか、投資口価格(株価に相当)の値上がり益も狙える。
ただし、長期金利が上がると物件購入の借り入れコストも上がるため、分配金や投資口価格にとってはマイナス。世界的な金利上昇や日銀総裁の交代で、国内にも金利上昇懸念があることに加え、コロナ禍でのホテルやオフィスの需要減が不安材料だ。2023年にREIT投資は避けるべきなのか。
コロナ禍の乱高下は収束へ
「確かに世界的に金利上昇懸念があり、REIT全体の4割を占めるオフィスの空室率も、かつて1%程度だったのが6%と高い。だがそれでも状況は悪くない」(鳥井さん)
論より証拠と鳥井さんが示すのが、19年末からのREIT価格の推移だ。確かにREIT全体の値動きを表す東証REIT指数は、コロナ禍で大きく落ち込み、19年末の水準に戻っていない。だが、組み入れ物件のタイプ別の値動きで見ると、投資妙味のあるタイプもある。

「コロナ禍でボロボロになったホテルの客足が戻り、ホテル型の価格が上昇中。電子商取引(EC)の好調を受けて上がり過ぎていた物流施設型は、ここ1年で調整し、値頃感が出た。商業施設型、住宅型も安定的に推移し、23年もこの流れが続く見込み。オフィス型以外は買いやすい状況だ」
気になるのは国内の金利上昇だが、この先金利が上がっても、大幅な下落はまずないというのが鳥井さんの見方。「下グラフは長期金利の水準ごとに、東証REIT指数の目標値を表したもの。オフィス需要が回復しないことを前提に現実的なシナリオとして試算した」

日銀の大規模緩和見直しにより、現在の長期金利は0.5%で、東証REIT指数は約1900ポイント(12月22日時点)だが、この金利での目標値は1950ポイント。「既に市場は0.5%までの上昇を織り込んでいるとみていい」。現状までの金利上昇なら、REIT価格の大きな下落の理由にはならないというわけだ。
客足の戻ったホテル型に期待
個別セクターで上昇が期待できるのがホテル型。コロナ禍の規制が緩和され、客足が戻っている。中国からの旅行客が戻らないうちは、ホテル復活に期待はできないという意見もあるが、鳥井さんは2つの理由でその心配はないという。
「一つはこれまでハワイなどに行っていた国内の層が、円安の影響もあってまだ国内を旅行していること。もう一つはアジアの観光客で、中国に行けない分、規制が緩和された円安の日本を選ぶ人が増えていること。事実、ホテルの稼働率は過去2年を大幅に上回って推移している」
ホテル型REITの賃料は、他のタイプと異なり、売り上げに完全連動する。つまり、価格も客足が遠のけば下がり、戻れば上昇する仕組みだ。「REITへの投資は分配金を長期で得るのが基本戦略だが、ホテル型は価格変動が大きいので、値上がり益も狙いやすい。これまでコロナで低空飛行していた分、回復が見込める23年は、まさにそのタイミングと言える」

中国からのインバウンドが復活すれば、さらに上昇余地があるという。ならば、回復途中にある今のうちに仕込むのもありだ。
物流・商業で手堅く守る
ホテル型に投資して攻めるなら、守りの意味で同時に持ちたいのが物流型だ。コロナ禍でECの需要が増え、REITの中でも独り勝ち状態だった物流施設型の投資口価格は、21年をピークに下落傾向にある。
ただしこれは、それまでが買われ過ぎていただけで、物流施設の業績は今も好調だという。「既存の物流施設の空室率は非常に低く、稼働率は100%近い。さらに、供給・需要共にまだ上昇が続いている。にもかかわらず価格だけが下がり、割安感が出ている」
物流施設の賃料は、5~10年の契約期間中は固定されることが多いが、需要の高さから、更新時には賃料交渉がしやすいという。「賃料が上がれば、金利上昇による価格下落リスクもカバーできる」。実際、物流施設型の賃料は上昇傾向だ。

もう一つ、ディフェンシブ銘柄として持つなら商業施設型もよさそうだ。「商業施設の賃料は売り上げに連動すると思われがちだが、実際は固定で、しかも契約期間は15年、20年と長い。安定した収益を得つつ、値崩れもしにくいのがメリット」
23年のREIT投資は、物流施設型、商業施設型で安定した分配金収入を得つつ、ホテル型で短期利益を狙っていく戦略が理想。これからの金利動向を注視しつつ、バランスよく保持したい。
(上田ミカコ)
[日経マネー2023年2月号の内容を再構成]
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