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邦銀の海外投融資、岐路に 米利上げリスクが顕在化

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超低金利下で拡大してきた邦銀の海外投融資が岐路を迎えている。日銀が23日発表した国際決済銀行(BIS)の統計によると、邦銀の国際与信残高は2021年末に4.9兆ドル(約593兆円)と2四半期連続で拡大した。一方、米利上げの影響で米国債の運用環境は悪化。ドルの調達コストも上昇基調にあり、運用の難度が高まっている。

BISは各国の国際与信(最終リスクベース)を四半期ごとにまとめており、邦銀については日銀が集計する。海外向け貸し出しのほか、外国債や社債、株式などの証券投資を対象としている。集計には邦銀の海外支店から海外顧客への貸し出しも含む。

邦銀の余剰資本が米国に流れる構図が鮮明になっている。米国に対する与信残高は21年12月末に2兆1042億ドルと、前回調査の9月末から416億ドル増えた。欧州は1兆712億ドルで26億ドル減少し、発展途上国は5894億ドルで49億ドル増えた。

マイナス金利政策の長期化で国債の利回りが低位で推移する中、邦銀は米国の国債や証券化商品に資金を傾けてきた。新型コロナウイルス禍による消費の停滞で邦銀が抱える預金量は増加が続いており、余剰資金を外貨建て資産に振り向ける傾向が一段と強まっている。

もっとも、資金の「逃避先」となっていた米国も、米連邦準備理事会(FRB)の利上げで先行きの不透明感が高まっている。

FRBは3月中旬に新型コロナ流行後初の利上げを実施し、市場では利上げ加速の観測も強まっている。こうした見通しから、金融政策を反映しやすい米2年物国債利回りと、景気動向に左右されやすい10年債利回りで比べた長短金利差は20年3月以来の水準まで縮小。足元では長期金利の利回りが短期金利の利回りを下回る「逆イールド」も視野に入ってきた。

銀行は通常、債券と現金を一定期間交換する「レポ取引」などを通じて短期の資金を調達し、長期の国債などで資金を運用する。邦銀が海外投融資を増やしてきた21年と比べると、22年に入ってからはイールドカーブ(利回り曲線)が急速に平たん化している。バークレイズ証券の山川哲史氏は「景気悪化懸念が強まれば、逆イールドになる可能性に加えて資金需要も弱まり、邦銀の対外投融資は難しくなる」と指摘する。

利上げは邦銀が抱える外国債券にも影響する。金利が上昇(債券価格は下落)すれば、邦銀が保有する債券の評価損が膨らむためだ。実際、3メガバンクが有する外国債券の投資損益は米長期金利の上昇を受けて、21年12月末時点でそろって含み損に転落した。

ロシアのウクライナ侵攻も邦銀の海外投融資に暗い影を落とす。資金調達のストレスを測る代表的指標である、ドルの金利先渡し契約(FRA)と翌日物金利スワップ(OIS)のスプレッドは、コロナ流行直後の20年4月以来の水準まで上昇している。

日銀によると、21年3月末時点で大手行の外貨建て資産は貸出金が5割を占める一方、負債における預金の割合は4割程度にとどまる。預金でまかなえない資金は原則として市場から調達する必要があり、米利上げに伴うドル調達コストの上昇は逆風になる。

メガバンク幹部は「この一年は相当厳しい運用環境が続く」と語る。市場は利上げペースの加速に警戒を強めており、邦銀の運用部門は難しいかじ取りが迫られている。

(本多史)

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