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杞憂で終わってほしい「マイナポイント詐欺」

知っ得・お金のトリセツ(90)

2万円の「回収」はお済みだろうか? 生まれたての赤ちゃんから100歳超のシニアまで、日本に住みマイナンバーを持つ全員が権利を持つ2万円分のマイナポイントのことだ。マイナンバーカードさえあれば、日ごろいかにキャッシュレス決済サービスやスマートフォンなどのIT機器操作と縁遠くてももらえる権利だ。値上げが相次ぐ昨今、2万円は断念するには惜しすぎる金額。幼い子どもの分も、高齢の親の分も「連結勘定」でキッチリ回収しよう。子どもの分は未成年であれば親名義のキャッシュレス決済口座に「入金」できるが、同じサービスに複数人分の登録はできない。仮にテレビ番組で密着する「大家族○×家」のような10人の子だくさんなら、対応して10のキャッシュレス決済サービスを使い分ける必要がある。

それってホントに「子どもの分」? 

ここまでは「マイナポイント業界」では常識の話。筆者自身も何度か言及してきたが、ある日ふと疑問が頭をもたげた――「その10人が本当に子どもだってなぜ分かる?」

なぜならマイナポイントではマイナンバーを使わない。ややこしい言い方だが、マイナンバーとは12ケタの個人番号そのものを指す。2016年の制度導入以後、日本に住む全員に自動的に割り振られて行政効率化のために利用されているが、使える分野は「税・社会保障・災害対策」の3つに厳しく法律で規定されている。マイナンバーを使えば家族関係の判定も可能だが、マイナポイントでは使えない。ではマイナンバーなしでいかに「確かに本人である」と個人認証をしているかというと、ここで登場するのが「マイキーID」という、これまた複雑な別の数字だ。

マイナンバー≠マイナンバーカード≠マイキーID

マイキーIDは物理的なマイナンバーカードがあって初めて起動するIDといえる。カードのICチップ内に搭載されている電子証明書を使い、デジタル空間で本人確認をするために自動生成される8ケタ(半角大文字英数字)だ。限られた分野でしか使えないマイナンバーそのものと異なり、マイナンバーカードは民間も含めた幅広い利用が想定された設計になっており、その時に個人認証の役割を担うのがマイキーIDなのだ。

話を子どもの分のマイナポイントに戻す。キャッシュレス決済サービスに1対1でひも付くのはマイキーIDなので、確かにマイナンバーカードの保有者であるという個人認証はできても、その保有者が子どもかどうか、家族かどうかの判別まではできない。「子だくさんですから」とうそぶいて他人の10枚のカードを自分のWAON、nanaco、PayPay、Suica……と、ひも付ける行為は理論上は可能なわけだ。

「費用対効果」で抑止できればいいが…

「2万円ちょうだい」と言われ簡単に出す人はいまいが、「マイナなんとか? あれよく分かんないのよ」とカードを出し、暗証番号も言われるままに入力してしまう人はいないだろうか? 特に心配なのがIT系に苦手意識を持つ高齢者。財布から自分のお金をとられるわけではないだけに、一層簡単に権利を持つ2万円を詐取されかねない。杞憂(きゆう)に終わるといいのだが……。

「理論上は可能でも、費用対効果を考えると手間暇かけて詐取するとは考えにくい」(総務省マイナポイント施策推進室)のは確かだが、それはまっとうな人の考え方。手間暇惜しまずあの手この手でやってくるからこそ、「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺は昨年約1万4500件(被害額282億円)発生しており、被害者の9割弱が高齢者なのだ。

帰省したらマイナポイント取得の手助けを

ここへきての新型コロナウイルス禍も気になるが、この夏ふるさとに帰省したら高齢の親のマイナポイント取得を済ませておこう。自分のスマホで親のカードを読み取ればいいし、「マイナポイント手続きスポット」でもある地元の自治体窓口に一緒に行く手もある。

高齢者に限らず、マイナンバーカードの取り扱いについては大事にしまっておくべきものか、気軽に持ち歩くべきものか、共通認識ができていない点も問題だ。その点、高齢の親には「銀行のキャッシュカードのようなもの」という説明が分かりやすいかもしれない。使用を前提に持ち歩くが、他人に気軽に渡したり情報を教えたりはしない――そんな注意点も再確認する夏休みにしたい。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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