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円安の歯止めは「原発再稼働」(みずほ銀行・唐鎌氏)

ニューノーマル相場を見通す(下)

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界の経済と市場は一変した。インフレ加速、金利上昇、円安進行……。こうした「ニューノーマル相場」で資産を増やすにはどうすればいいか。3人のプロに今後の相場展望や運用戦略を聞いた。第3回は、みずほ銀行・チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏。

――円安・ドル高が加速しています。年内の為替相場をどのように見通しますか。

現時点では円が買われる要素は乏しく、売られ過ぎた分の買い戻しくらいしか見当たらない。円安の背景には大きく分けて、日本と米国の金融政策の方向性の差と、日本の貿易赤字の拡大観測の2つがある。

前者については、日銀が金融緩和の方針を変更することによって多少の円買いが生じるとの期待はある。ただし米国では、連邦準備理事会(FRB)による年7回の利上げが見込まれている。そのため日米の金利差に大きな変化が見られるとは考えにくく、円安・ドル高傾向は変わらなさそうだ。

日銀の金融政策で想定されるのは、フォワードガイダンス(政策金利の先行き指針)の引き締め方向への修正や、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の誘導金利の短期化だが、いずれも小手先の手段にすぎない。円安を断ち切るために、プラス金利まで視野に入れて、早期に利上げを始めるべきだろう。

ポジティブサプライズがあるとすれば、日銀の黒田東彦総裁が2023年4月の任期満了前に退任し、トップ交代によって政策方針が変わること。黒田氏は現在2期目だが、これまで2期満了まで務めた総裁はいない。

原発再稼働が円安の歯止めに

円安相場が収束する上で重要なのは、後者の貿易赤字の解消だ。貿易赤字額は基本的に資源輸入依存度が高い国で拡大しており、資源の「価格」は日本の力でどうすることもできない。だが、資源を輸入する「量」は国内の電源構成を修正することで抑えられる。

ここで原発再稼働の本質的な是非を問うことはしないが、あくまで「円安を止めたいならば何があるか」と考えた時に、それが俎上に載ってくるのは自然だ。資源高は貿易赤字拡大の大きな要因だ。日本の輸入総額の約4分の1が鉱物性燃料である以上、原発再稼働は即効性が高く、まっとうなやり方だと言えるだろう。

――円安が常態化する世界に移行するのでしょうか。

円安傾向が変わるとは考えにくい。為替市場では、岸田文雄政権では対策を打てないという判断から円を売る動きも多いように思われる。

資源価格が下落に向かう展開があればよいが、先行きは誰にも分からない。日本経済新聞の試算では、為替が1ドル=120円、原油が1バレル130ドルなら、22年度は16兆円の経常赤字になると見込まれている。

足元では新型コロナウイルスの感染拡大に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱が続いている。さらにウクライナ情勢の緊迫で、ロシア抜きのサプライチェーンの組み替えも急務となっている。グローバル化の逆行は、息の長いインフレ要因になるだろう。

日本では物価が上がらないという常識は捨てた方がいい。円安・インフレ・資源高のニューノーマル(新常態)の世界から移行するには、原発再稼働による脱炭素の実現は必須だ。

(井沢ひとみ)

[日経マネー2022年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年7月号 ウクライナ危機後も続く ニューノーマル相場に勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/5/20)
価格 : 750円(税込み)
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