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米金融政策次第で3つのシナリオ(UBS証券・足立氏)

ニューノーマル相場を見通す(中)

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、世界の経済と市場は一変した。インフレ加速、金利上昇、円安進行……。こうした「ニューノーマル相場」で資産を増やすにはどうすればいいか。3人のプロに今後の相場展望や運用戦略を聞いた。第2回は、UBS証券・チーフエコノミストの足立正道氏。

――米金融引き締めやウクライナ情勢が重なり、市場は不安定さを増しています。景気の先行きをどのように見ていますか。

当面、不確実性が高い状態が続くだろう。シナリオとしては次の3つが考えられる。1つ目は、景気のソフトランディング(軟着陸)だ。米国を中心にインフレが落ち着き、株価は上昇する。米長期金利は3%を大きく上回ることはないだろう。

2つ目は景気のハードランディング(硬着陸)だ。いわゆる典型的な景気後退で、GDP(国内総生産)はマイナスに陥り、インフレは鈍化する。米長期金利の低下に伴い、短期的には株価も下落するだろう。ただし、低金利環境は足元と同水準のバリュエーション(投資尺度)を正当化するため、中長期的には株価上昇につながるとみている。

3つ目は、景気後退と物価上昇が同時に起こる「スタグフレーション」だ。米国では1970年代から80年代初頭にかけて、緩和的な金融政策と石油危機をきっかけにスタグフレーションに陥った。当時と同様、インフレの継続により金利は下がらず、株価も上昇しない状況が続くだろう。

各シナリオに立った戦略を

――3つのシナリオのうち、現実化する可能性が高いのはどれでしょう。

どのシナリオに落ち着くのか、結論が出るには時間がかかる。米連邦準備理事会(FRB)はソフトランディングを目指しているが、難しければスタグフレーションよりはハードランディングに向かう可能性が高いだろう。FRBはインフレ抑制を優先課題として進めているからだ。

3月のPCE(個人消費支出)デフレーターを確認する限り、インフレはピークを迎えつつあるとみている。だが、この先の利上げ幅のペースや、ターミナルレート(利上げの最終地点)が中立金利(景気を後退も過熱もさせない金利水準)をどれくらい上回るのかなど、はっきりしていない点が多い。シナリオが複数存在するため、投資家はそれぞれのポジションに立って戦略を練るべきだろう。

インフレが高まった背景は2つだ。20年のコロナショックでは需要と供給が悪化したが、大規模な財政出動と金融緩和で需要が急拡大したことでインフレが急加速した。2つ目のウクライナ・ショックは資源価格を供給要因で急騰させた。米国は資源国なので交易条件が改善して所得も増える。そのため、米国はインフレが最も加速しやすく、利上げ幅も大きくなる可能性が高い。

我が国では、国際的な資源価格の上昇に伴う交易条件の悪化が景気の重石となる。コロナ禍からの持ち直しと高い家計・企業の貯蓄・現預金が景気回復を下支えすると考えられるが、米国を中心に海外経済が景気後退となれば日本経済への打撃は深刻となる。

なお、日銀の黒田東彦総裁が23年4月に任期満了を迎えるに当たって同行の政策哲学の変更(パラダイムシフト)が生じると、日本の金融市場は大きく揺さぶられることになる可能性がある。このことも覚えておきたい。

(井沢ひとみ)

[日経マネー2022年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年7月号 ウクライナ危機後も続く ニューノーマル相場に勝つ
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP (2022/5/20)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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