デジタル証券って何? Q&Aでポイントをやさしく解説
デジタル証券投資入門(2)

Q1 セキュリティー・トークンって何?
A 有価証券の権利をトークン化したものです
株や債券、投資信託などと同じ有価証券で、その権利をトークン化したもの。英語の頭文字を取って「ST」と略され、デジタル証券の呼び名としても使われる。
「正しい呼称は、電子記録移転有価証券表示権利等。ブロックチェーン(分散型台帳)などを用いて移転することが可能な財産的価値(トークン)を指す。ただ、株や投資信託も券面が電子化されているので、投資家から見れば従来の有価証券の取引と見え方としてはあまり違いはない」(日本STO協会事務局長の平田公一さん)

セキュリティー・トークン・オファリング(Security Token Offering)の略称。セキュリティー・トークンを使った資金調達手段を意味する。債券などを発行する企業は、これまで通り証券会社に販売を委託することもできるが、スキームさえ組めば自社で投資家を募集することも可能だ。発行単位も自由に決められ、少額で広く販売することができる。
Q2 デジタルだとセキュリティーが心配
A 強力に保護されています
デジタル証券は、主にブロックチェーンで暗号化する。ブロックチェーンは改ざんやコピーがほぼ不可能な技術だが、同じブロックチェーンを使う暗号資産は、過去に資産が流出したことがある。デジタル証券はそうした経緯を踏まえて、投資家保護の観点から厳重に管理されている。
「デジタル証券の取り扱いは証券会社などの第1種金融商品取引業者・登録金融機関などに限られ、投資家の資産は独立した場所で分別管理される。必ずしも100%安全とは言えるわけではないが、厳しいガイドラインに基づいて管理されるので、流出などのリスクはかなり低い」(平田さん)
Q3 税金はどうなる?
A 金融商品と同じく分離課税です
金融商品取引法上の第1項有価証券として扱われるデジタル証券の利益にかかる税金は20.315%。口座から源泉徴収してくれる金融機関なら確定申告を不要にもできる。「みなし有価証券(第2項有価証券)として発行されるデジタル証券は総合課税で、所得額によっては税金が高くなる」(野村総合研究所の周藤さん)
Q4 売却したい時は?
A 証券会社に申し込みます
デジタル証券は、投資家のニーズに基づいて売買できる流通市場がまだ整っていない。現状では売却したい時は証券会社に申し込む形となる。「今は期限が短く利率が良い商品が多いため、売る人は少ないが、複数の顧客の注文を証券会社が電子処理する際の規制が課題。金融庁も法整備を含めて課題の解決を検討中だ」(平田さん)
Q5 信託受益権STには不動産以外もある?
A 船や飛行機のリース、住宅ローンなどに広がる可能性があります
信託財産の運用成果を享受する「信託受益権」タイプのSTは、信託財産の種類にしばりはない。

「不動産は商品スキームが組みやすいために組成が相次いでいるが、理論的にはどんな財産でも組成が可能だ。例えば代替エネルギー、航空機や船舶、住宅ローンから馬やワイン、ウイスキー、非代替性トークン(NFT)まで、あらゆるものでST化ができ、実際に検討する動きもある」(平田さん)
Q6 今までとの違いは?
A 発行企業から直接買えます
有価証券を発行する企業は通常、販売を証券会社に委託している。
「投資家への販売や入出金、税金処理などを手伝ってもらうためで、法的には自社で販売することも可能だ。自己募集の場合は発行する企業の手間は増えるが、投資家に訴求するマーケティング手段として、 投資家への還元を増やすことも検討できる」(周藤さん)
Q7 不動産STは、REITとどこが違う?
A より現物の不動産投資寄りです
少額で投資ができる点は同じだが、REIT(不動産投資信託)は上場しているため、相場の影響を大きく受ける。
「不動産STは単純に物件を大人数で分割して所有する仕組み。実際の不動産投資に近く、しかもローンや借り手を集めるといった手間がない。両方のいいとこ取りをした商品と言える」(周藤さん)

(ライター 大上ミカ)
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