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FRBの真意、測れぬ市場 米長期金利1.4%割れ

世界の市場が突如、荒れ始めた背景には米金融政策の狙いが見えにくくなったことがある。インフレが加速しない限り粘り強く緩和を続けるとの市場の見立てに反して、米連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーの多くが利上げの前倒しに傾いた。メンバー内の見方にもばらつきが大きく、市場との対話が波乱の芽になるリスクがある。

日本時間の21日、夜間の米市場では、長期金利の指標となる米10年物国債の利回りが業者間の相対取引(気配値)で1.3%台に低下。超長期債にも波及し、米30年物国債の利回りは心理的な節目である2%を4カ月ぶりに下回った。

16日のFOMC以降、米国債市場では各年限の国債利回りをつないだイールドカーブ(利回り曲線)の平たん化が急だ。利上げの前倒しに反応して5年債の利回りが上昇する一方、長期のインフレ観測が低下し30年債の利回りは急低下した。その差は1.1%と20年9月以来の低水準になった。

直近1週間での利回り差の縮小は0.2%ほど。SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストによると「過去30年間でわずか4回しか事例がない現象」だ。今回は政策変更していないのに「2000年1月の利上げ決定直後など政策変更を実施したタイミングで起きた」ほどの値動きが生じた。

FOMCでは、これまで24年以降としていた利上げの想定時期を23年に前倒しし、多くの市場参加者が「サプライズ」と捉えた。「足元の物価上昇は一時的」という幹部陣の説明が奏功し、市場ではインフレ懸念が和らいでいた。蓋を開けるとFOMCメンバーはインフレ警戒を強めており、市場に困惑が広がっている。

米連邦準備理事会(FRB)は日銀など他の主要中央銀行と同様に2%の物価上昇率を政策目標に掲げる。ただ、20年には「一定期間の平均で2%」と一時的な物価上昇を容認する指針を決定した。ゼロ金利政策を長く続けるための方針で、インフレ観測が高まってもFRBの金融緩和が当面続くという市場の見方の根拠の一つになっていた。

FOMCメンバーの見解にはバラツキがあり、金融政策がどこを目指していくのか見えにくくなっている。投票権を持つ各地区連銀の総裁などFOMCメンバーが個別に想定する23年時点の利上げ回数は0~6回まで見解に大きな差がある。

18日の米市場はセントルイス連銀のブラード総裁の発言に敏感に反応した。「FRB内の空気の変化を先んじて発言する傾向があるため市場で注目度が高い」(三菱UFJ銀行の鈴木敏之シニアマーケットエコノミスト)ためだ。FOMCメンバーの発言を注意深く読み解こうとする動きが強まっており、今後、タカ派とハト派で大きく異なる政策見通しに市場が振らされる展開が続きそうだ。

市場関係者の見方も差が大きくなってきた。ヘッジファンドなど投機筋は金利低下を主導している。米商品先物取引委員会(CFTC)が6月上旬に公表した統計によると、投機筋による米10年物国債の買越残高は17万3420枚(枚は取引単位)と17年10月以来の高水準になった。うち、買い持ち高だけでみると98万3294枚と統計で遡れる01年以降で最大規模に膨らんでいる。

一方、新型コロナワクチンの普及で、物価だけでなくFRBが重視する雇用市場も回復に向かえば利上げ観測は一段と高まりやすくなるとの見方も多い。野村証券の小清水直和シニア金利ストラテジストは「米長期金利の上限は年末までに2%がめどになる」とみる。

見方が割れると値動きは荒くなりやすくなる。波乱無くコロナ禍からの正常化を進められるか。市場とFRBの対話は難しさを増している。(南毅郎)

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