株式投資で自分年金づくり 億万投資家が勝ちワザを直伝 - 日本経済新聞
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株式投資で自分年金づくり 億万投資家が勝ちワザを直伝

人生100年時代の資産形成術(2)

人生100年時代。長い老後を生き抜くための資金をどうつくるべきか。資産形成の考え方やノウハウを短期集中連載で紹介する。2回目は、自分年金3000万円を株式投資でつくる方法を深掘りする。対象を若年層とシニア層の2つに大別。それぞれに向く投資法と秘訣を、スゴ腕の個人投資家たちに伝授してもらった。

日経マネーでは、総務省の家計調査のデータを基に、2人以上の世帯が老後30年を生きるための資金を試算した。試算の結果は約1億円。そのうち、6割の6000万円前後を公的年金、約1000万円を退職金で賄う。残る約3000万円が自分で用意する資金、いわば自分年金でカバーするというモデルを示した(試算の詳細は、11月21日発売の日経マネー23年1月号に掲載)。

3000万円ほどの自分年金をつくるには、投資が重要だ。株式に投資する場合、株価指数に連動する投資信託などを積み立てる手もあるが、効率的に資産を大きく増やすために個別株投資を検討したい。

個別株運用で重要なのはリスク許容度だ。例えば、定年まで十分な時間のある20~30代と、年金生活を送る60代以上では、運用にかけられる期間の長さや取れるリスクの大きさが異なる。目標額を達成するには、年齢や投資期間、収入、保有資産、投資経験などに照らした運用設計が欠かせない。

世代別の備え方は?

ここでは、若年層とシニア層に分けて資産の備え方を見ていく。保有資産などによっては必ずしも当てはまらないケースもあるが、投資期間と重視する項目の観点から2つに大別した。

若年層は時間的余裕があるため、将来の株価上昇に期待できる大化け株を狙いやすい。足元では割安水準にある銘柄が多く、狙い目との見方もある。中小型株の中から、将来の主力株が生まれる可能性もある。また割安株の中には株主優待付きの銘柄もあり、株初心者でも楽しみながら運用にチャレンジできる。世界的なブランド力のある米有望株を手掛けるのもよいだろう。

一方、シニア層は、長期成長よりも定期的なインカム(配当)を重視する人が多い。自分年金づくりには高配当株が向きそうだ。毎年安定した配当収入を得られるだけでなく、業績が安定した企業を選ぶことで緩やかな値上がり益にも期待できる。米高配当株の中には日本株以上の高い配当を享受できる成長株もある。

若年層編……「成長株」と「割安優待株」を軸に10倍株狙いも

「若いうちに投資を始めるメリットは大きい」。こう口をそろえるのは、20代から投資を始め、1億円以上の資産を築いたスゴ腕の投資家たちだ。

彼らは数百冊に上る投資本を読み込んだり、様々な投資手法を実践したりしながら、資産を増やしてきた。試行錯誤を繰り返しながら運用経験を積んだことが、投資スタイルの確立にもつながった。

「残された時間が長い若年層は、時間の力を最大限に活用できる。1年で株価が10倍に上昇する銘柄はめったにないが、10年で10倍は珍しくない。テンバガー(10倍株)発掘の可能性を高めるためには、スタートが早いほどいい」。こう説くのは50代の兼業投資家、はっしゃんさん(ハンドルネーム)。独自の「理論株価」による成長株への集中投資で3億円超の資産を築いた。

はっしゃんさんの投資法は、過去5年程度の株価と理論株価の値動きをチェックし、両者が連動して右肩上がりで推移する銘柄などを購入するというもの。老後資産づくりの観点で言えば、それに加えて「将来性に期待できる身近な企業がよい。売上高に占める海外比率が高く、世界で稼げる企業が伸びそうだ」と続ける。

はっしゃんさん同様、業績の安定成長を重視するのは竹内弘樹さん。割安成長株の長期投資を得意とする40代の兼業投資家だ。

竹内さんが注目するのは、「売上高営業利益率が高い銘柄群」。20代の頃は短期売買もしていたという竹内さんだが、「業績が堅調で、安心して長く持てる株であれば、途中で売買してその都度、取引手数料を支払う必要はなくなる」。中でも、「高品質で他社の参入を許さない商品・サービスを提供する銘柄が有望だ」とみる。

一方、「あえて市場で人気のない有力銘柄を買い、中長期で粘り強く保有するのも手法の一つ」と話すのは、40代のみきまるさん(ハンドルネーム)。割安な優待株に投資し、数億円の資産を築いた兼業投資家だ。足元であれば、自動車部品や地方銀行、家電量販店、メディア株などが当てはまるという。

「世の中の意見に抵抗することは難度が高い。だが、行動バイアスの裏をかき、市場の目が離れている不人気業種にあえて投資することは、将来のテンバガー発掘につながる」(みきまるさん)

自分がよく知る株に投資を

市場が米国に変わっても、有望株の条件は大きく変わらない。米国株投資を手掛け、2019年に早期リタイアを達成した50代のエルさん(ハンドルネーム)は、基本的な銘柄選びのコツを以下に挙げる。

第1に、自分がよく知る商品やサービスを提供する企業であること。第2に、高い収益性を維持している企業であること。第3は、売上高営業キャッシュフロー比率(売上高に対してどれだけ現金を稼いだかを示す指標)が継続して高い企業であること。すべての業界に当てはまるわけではないが、「この比率が20%以上であれば他社の参入が難しくなるため、望ましい」とする。

さらに連続増配も有望株を選ぶポイントの一つ。「極端な話、決算書上は投資の先送りなども可能だが、配当は払えるだけの資金がないと行えない。強固なビジネス基盤の証左となるのが配当で、一つの経済サイクルである10年を超える連続増配を実施している企業は有望だ」(エルさん)

不安定な相場環境下では、思わぬ評価損が出ることは少なくない。それでも4人のスゴ腕が結果を出し続けてきたのは、「どんな局面でも市場から退場しない」ことを実践してきたからだ。

「株式市場からお金を抜いてしまうと、上昇相場を逃すことにつながる。私自身も株価ショックは何度も経験したが、相場はいずれ回復するので、損失が出た時に次にどう生かすのかを考えるべきだ」(みきまるさん)

竹内さんとはっしゃんさんは、「少額でもよいので給与の一部からでも投資を始めて慣れていくのが重要」と話す。「損失が出ても投資額が小さい若年層は痛手が少ない。慎重になり過ぎず、経験を積みながら、投資の勉強をしていくといい」(竹内さん)

シニア層編……高配当株を割安で購入し、配当と値上がり益の両方を狙う

若年層に比べて投資にかける時間が短く、リスクも取りにくいシニア層に向いているのが、高配当株投資だ。世界的なインフレでモノの値段が上がる中、高配当株投資に対する関心は高まっている。高配当株の魅力は、配当利回りの高さと相対的な株価の安定性。スゴ腕の個人投資家の中には、投資による「自分年金」づくりを早くから確立し、公的年金プラスアルファを追求する人たちも出ている。

60代の専業投資家、かんちさんは(ハンドルネーム)は、高配当株と優待株への投資で5億円以上の資産を築いたスゴ腕だ。20歳の頃に株式投資を始め、49歳だった2011年にFIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成した。米長期金利の上昇で成長株に対する逆風が強まった22年も、21年末比で5.73%の利益を上げている(10月末時点)。年間の配当額は約1400万円(21年実績、税引き前)だ。

10月末時点では17銘柄を主力に、ポートフォリオの5割を高配当株、3割を(高配当を含む)優待株に振り向けている。「成長株と異なり、高配当株は、相場が軟調な局面でも相対的に下がりにくい傾向がある。足元では配当利回りが4%台の銘柄が数百ある。配当額と業績が右肩上がりの銘柄を選ぶのがコツ」

配当株投資で1億円超の資産を築いた40代の兼業投資家、名古屋の長期投資家(なごちょう)さん(ハンドルネーム)も、増配余力を重視して銘柄選びをするスゴ腕の一人だ。「目先の配当が高くても一時的な可能性があるため、配当性向が高過ぎず、増配しそうな銘柄を選んでいる」と語る。

さらに、過去の金融危機や不景気の際も売り上げや利益が上げられていたかを確認。「過去の業績から一定程度、将来の予想はできる。長期的に成長ポテンシャルがある銘柄に投資したい」。231銘柄に投資するなど分散投資を徹底。22年は、300万円超(税引き前)の配当金を得る見込みだ。

(井沢ひとみ)

[日経マネー2023年1月号の記事を再構成]

日経マネー 2023年1月号 今こそ始め時! じっくりつくる老後資金1億円
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2022/11/21)
価格 : 850円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

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