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「資産所得倍増」プランに必要な日本経済底上げ視点

積立王子への道(55)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

投信経由で海外に向かうお金が増えた

若者の長期資産形成には2人のような国際分散投資が有効だ。金融庁もその合理的見解に基づいて2018年に導入した「つみたてNISA」では国際分散型ポートフォリオの活用を推奨してきた。世界の経済成長を養分にお金を育てていく方法だ。その考えが世間に浸透したことで、グローバル運用の投資信託に資金が多く集まるようになり、2021年には日本の個人が国内投信経由で海外株へ投資した金額は8兆3000億円に膨らんだ。一方で日本株への投資額はわずか280億円だと日本経済新聞に書いていたね。

ピークアウト企業が全体の足を引っ張る日本市場

原因が投資対象としての日本の魅力のなさだ。前回も説明した通り、日本の経済成長力が長年海外に劣後したことで、日本株全体のリターンは低下。海外投資家からそっぽを向かれ、世界の株式市場の中での日本市場の存在感は低下し続けている。その上日本の株式市場には成長を終えたピークアウト企業が退場せずに数多く残っていることで、中には成長性と競争力を有する優良企業が存在するにもかかわらず、多くのダメ企業群の中に埋もれてしまっている。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)に連動する市場全体への投資は魅力的に感じられないわけだ。

このままでは「インベスト・イン・バイデン」だ

とはいえ、看過していれば、せっかくつみたてNISAが制度拡充されて長期投資マネーが増えたとしても、米国を中心とした海外市場に向かう流れだけが太くなり、日本市場の空洞化が進んで、資本市場の劣化が産業界全体の足を引っ張る悪循環となる。だからこのたび、岸田文雄首相が掲げた「資産所得倍増プラン」においては、国際分散投資を主軸としつつも一定程度の資金が日本市場に流入して自国産業活性化の触媒として機能する仕組みも構築すべきだと思うのだ。

投資から日本経済を活性化する流れを

しかし、その資金が市場全体にあまねく流れては非効率なまま。ここで出番となるのが高成長が期待できる良い企業を選別する役目を担うアクティブ運用だ。高度なプロフェッショナルに裏打ちされた本格的な日本株アクティブファンドが競い合い、成長企業を後押ししてリターンを高めていく。その魅力で日本の生活者の資金が集まるサイクルを実現させるには、資産運用業界あげて本気の努力が欠かせない。そしてこのサイクルが産業界を活性化し、日本経済を再起させる源泉となることを政府もしっかり国民にアピールすることが重要なのは言うまでもない。

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会副会長。積み立てによる長期投資を広く説き続け「積立王子」と呼ばれる。『預金バカ』など著書多数。
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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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