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日銀のETF購入、通じぬ経験則

日銀は21日、4月に入って初めて上場投資信託(ETF)を購入した。購入は3月30日以来。この日午前、東証株価指数(TOPIX)が前日比2.2%下げていた。「このくらい下げないと日銀は動かないんだな」。市場関係者はこうつぶやいた。

20日もTOPIXが午前の取引で1.2%下げたが、購入しなかった。前場に0.5%下がると日銀はETF購入に動く――。かねて市場でささやかれてきた経験則が通用しなくなっている。

日銀は3月の金融政策決定会合で原則年6兆円としてきた購入額の目安を撤廃した。無駄撃ちを避けつつ、株価の急落時などに機動的に巨額の買い入れができるよう戦略を改めた。ある日銀幹部は「平時には買わない。買うときは理由が必要になる」と指摘する。21日の買い入れはあくまで異例だとの思いが透ける。

日銀によるETFの累計購入額は約35兆円。時価ベースでは50兆円規模に達する。今や日本株の最大株主だが、議決権行使はETFの運用会社に委ね、自らが個別企業の経営に監視の目を光らせるわけではない。「物言わぬ大株主」の存在は経営規律の緩みを招き、市場機能の低下につながるとの批判が根強い。「投資家としての行動をしていない。株式市場の機能を損なっているのではないか」。国民民主党の前原誠司氏は20日の衆院財務金融委員会で黒田東彦総裁に迫った。

ニッセイ基礎研究所の21年3月末時点の試算によると、ETFを通じた間接保有ながらアドバンテストファーストリテイリングなどでは日銀の保有比率が2割を超える。従来の買い方を続けると、株主総会で特別決議を拒否できる3分の1超に迫る。企業買収などの重要事案で株主の意見対立があった場合、日銀がキャスチングボートを握るといった事態も絵空事ではなくなってきた。

日銀は3月会合でETFの購入対象から日経平均連動型を外し、TOPIX連動型に絞った。より幅広い銘柄で構成するTOPIX型への一本化で、個別銘柄の保有比率を極力高めないようにしたわけだ。「増加ペースを落とし、市場で話題になる事態を避ける意図だったと考えられる」(ニッセイ基礎研の井出真吾氏)。

もう一つ、4月に入って見逃せない変化があった。設備投資や人材投資に積極的な企業の株式で構成するETFの購入停止だ。これもTOPIX型に対象を絞った影響で買わなくなった。

日銀は金融危機への対応で2000年代に銀行が保有していた個別株を買い取り、その売却を始めた16年、株式相場への影響を相殺するため同ETFの購入を始めた。ETF購入を最低限に絞り、少額ではあるが株式を売り続ければ、株式市場で日銀が売り主体に転じる可能性もある。

「ETF買い入れを含めた金融緩和の出口のタイミングや具体的な対応を検討する局面には至っていない」。黒田氏は20日の国会答弁で改めて強調した。だが、日銀の「ステルス・テーパリング(隠れた緩和縮小)」に向けた地ならしは静かに始まっているのかもしれない。

(学頭貴子)

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