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年内は成長株の反発狙い 長期では分断の勝者を有望視

プロが直言 「骨太の方針」のインパクトと年後半の投資戦略(2)

政府が6月に閣議決定した「骨太の方針」と「新しい資本主義」の実行計画。岸田文雄政権の看板政策が株式市場に及ぼすインパクトと今年後半に取るべき投資戦略を4人のプロに聞いた。2人目はピクテ・ジャパンでストラテジストを務める糸島孝俊さん。骨太の方針で現実路線にかじを切った点を好感し、年内は日本株に投資するチャンスが訪れると指摘する(初回はこちら)。

――「骨太の方針」の印象は?

岸田政権の発足当初は分配重視の方針を掲げ、金融業界に厳しいものでした。5月に英国の金融街シティーで「インベスト・イン・キシダ」と演説して、日本への積極投資を呼びかけたあたりから風向きが変わりました。そして6月の「骨太の方針」では現実路線に大きくかじを切った。この軌道修正によって、市場の期待度は発足当初の60点から現在は80点ぐらいにまで高まった印象です。

「骨太の方針」の重要ポイントは①人への投資②科学技術③新興企業④脱炭素・エネルギー⑤安全保障⑥財政――の6つ。特に①人への投資と⑤安全保障が大きなテーマになるとみています。

――「資産所得倍増プラン」も打ち出されました。

過去数十年間、政府が「貯蓄から投資へ」の旗を振っても、個人の金融資産は狙い通りに動きませんでした。しかし、今回が決定的に違うのは、日本がインフレになったこと。デフレ下では「キャッシュ・イズ・キング」で、運用しなくても問題ありませんでしたが、インフレでは現金は目減りしていきます。しかも、足元の円安で「日本が貧乏になった」と実感している人も多いはず。政策次第では、貯蓄から投資へと金融資産が大移動する可能性があります。

年内は日本株の投資チャンス

――今後の日本株の投資戦略は。

年内と今後2~3年では戦略が異なります。年内の日本株相場は強気に見ていて、日経平均株価は年末に向けて3万円の高値を予想しています。

強気の理由としては、日本株の上値を抑えていた「3つの霧」が晴れてきた点が大きい。1つ目の「米国の金融政策」は、6月のCPIショックで市場が一時混乱したものの、年末までの利上げとQT(量的引き締め)をほぼ織り込んだとみています。

2つ目の「企業の決算」については、今期の会社予想は保守的ではあるものの、想定内の水準。今後は、円安効果やリベンジ消費による上方修正が期待できます。

3つ目の「ウクライナ危機」はまだ晴れませんが、5月の対独戦勝記念日を通過したことで核戦争などの破局的な災害が起きるリスクはいったん低下しました。

こうした不透明要因の解消に加え、日本株はバリュエーション面でも反発が期待できます。TOPIX(東証株価指数)の12カ月先予想EPS(1株利益)をベースにしたPER(株価収益率)は12倍程度。過去10年間では11倍が下限だったので、ここからの下値は限定的と言えます。

さらに、日経平均をドル建てに換算して米国株と値動きを比べると、足元ではナスダック総合株価指数よりも下落率が大きくなっています。海外投資家から見ると、日本株の割安さは際立っており、日本見直しに伴って、ドル・円相場が良い円高に転じたり、岸田政権が本気で日本を「改革」する姿勢が伝わったりすると、海外投資家が一斉に日本株を買いに動く可能性が高まります。

年内は下落の大きかった成長株のリバウンドを狙う戦略が効果的です。半導体をはじめとするテクノロジー株が有望とみます。また、リベンジ消費の恩恵が期待できる運輸や小売りなどの割安株も上昇が期待できます。

世界は分断の時代へ

――長期の投資戦略は。

来年にかけては、米国や欧州のインフレが本当に収まるか、スタグフレーションに陥らずに済むかを見極めなければいけません。米国がスタグフレーションに陥る確率は現時点で1割程度とみていますが、これが2割、3割と高まると機関投資家はそれに対応したポートフォリオに組み替えないといけない。株式市場には逆風になります。まだ強気とも弱気とも言えませんが、年内に成長株のリバウンドを狙う場合は、上がったところでいったん利益確定しておくのが無難でしょう。

そして、さらに長期の投資を考える場合は、ウクライナ危機後の世界の構造変化の影響を読み解く必要があります。具体的には、「グローバリゼーションの時代が終わり、世界が再び分断の時代に突入した」という前提で、これまでの投資の常識を見直さなければいけません。

例えば、3~4月の国連総会における投票結果を見ると、政治的な分断が加速しているのが分かります。世界が再び冷戦時代に逆戻りするなら、グローバリゼーションの恩恵を最大限に受けていた成長株はこれまでと同じ成長を続けられるのでしょうか。フラットな目で分断の時代の勝者を探す必要があります。

(聞き手は市田憲司)

[日経マネー2022年9月号の記事を再構成]

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