IPO株投資で稼ぐ巧者が解説 決算説明資料の深読み術
10倍株を狙え 大化け銘柄の発掘術(4)


名古屋の投資勉強会「Kabu Berry」の主宰者として、幅広い個人投資家のネットワークを持つyamaさん(ハンドルネーム)。IPO(新規株式公開)直後の銘柄を投資対象にする「IPOセカンダリー投資」を中心に手掛ける。上場間もない企業の株を投資対象とするだけに、あらゆる情報に当たって投資先候補の企業を理解しようとしている。
「決算短信は過去のある一時期を数字で表したもの。投資で大切なのは、これからの業績を予測することだ。そのために役立つ情報は全てチェックしたい。少なくとも、会社が出す1次情報は全部チェックすべきだ」とyamaさん。
3回目に登場した個人投資家のはっしゃんさんが「点を線につなげて業績を予測する」のに対し、yamaさんは「各所にある情報をつなげて面にして業績を予測する」と言える。
まずは決算説明資料
yamaさんがまず読み込むのは、決算発表時に提供される決算説明資料だ。短信では理解しにくい業績が変化した理由を、この資料の中で探せることがある。
「例えば労働集約型企業の業績が急速に伸びていた場合。その理由が従業員数の増加にあることが多い。どれだけ従業員が増えたのか、そして今後の採用計画が分かれば、業績予想を立てやすい。これらの情報は説明資料に掲載されていることが多い」とyamaさんは話す。

次にチェックするのが決算説明会の書き起こしテキストだ。企業が行った説明会の内容を、文字ベースで開示する資料だ。中には説明会の模様を動画で配信している場合もある。「テキストでも動画でもいいので、ぜひ目を通すべきだ」(yamaさん)。IRセミナーで開示される情報も同様だ。
実はyamaさんは書き起こしテキストに書いてあることを読み落とし、投資チャンスを逃したことがある。ある英会話スクール運営企業の売上高が伸び、利益率が上昇していた。業務内容は対面のレッスンと、スマートフォン向けサブスク型英語学習アプリの提供。
yamaさんは、この業務内容で売上高拡大と利益率上昇の理由を判断できず、投資を見送った。
なぜストップ高に?
ところが決算発表後、株価はストップ高に。説明会の書き起こしを丁寧に読み込むと、英会話レッスン修了者がサブスク型アプリを利用していることが分かった。「別事業だと思っていた2つの業務が実はつながっていた。これなら継続的なアプリの伸びが見込め、利益率上昇の理由も分かる。なぜ、じっくり読み込まなかったのか」とyamaさんは悔やむ。
ただ、書き起こし資料は、適時開示情報が見られる「TDnet」には掲載されていないことが多い。基本的には企業ホームページに掲出される。適時開示情報以外に企業がどんな情報を出しているかも調べておきたい。
最後に、yamaさんが忘れずに見るというのが、企業の採用ホームページだ。決算短信に「デジタル事業」と記載する業務を展開する会社の採用ページを見てみると、「営業ができる人」が募集要項だったことがある。「デジタル事業なのに営業?」と思って詳しく業務を調べてみると、営業員がパッケージソフトを売り歩く業務だったことがあった。「言葉から受ける印象とは違う、本当の業務内容が採用ホームページで分かることがある」(yamaさん)

(佐藤由紀子)
[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
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