3億円超の成長株投資家 決算から成長ストーリーを描く
10倍株を狙え 大化け銘柄の発掘術(3)

個人投資家のはっしゃんさん(ハンドルネーム)は、独自に算出した理論株価を駆使した成長株投資を実践している。はっしゃんさんの投資の大基本は「決算を見てからの投資」だ。話題のIPO(新規株式公開)銘柄であっても、必ず1回は決算を見てから投資している。
見るのは成長率とROE

決算では何を見るのか。「当たり前だが、売上高の成長が続いているかどうか」(はっしゃんさん)。前期の売上高成長率が10%だった場合、今期は10%以上の数字を出しているかを見る。成長株だから、成長が鈍化したら株価は重くなる。成長を維持できているかを見るのが基本だ。
同様にROE(自己資本利益率)もチェックする。1株当たり利益(EPS)を1株当たり純資産(BPS)で割って求めるが、成長が鈍化すると利益の増加より資産の増加の方が多くなる。このためROEが低下していないかも確認する。本決算で開示されるEPSとBPSでチェックするようにしている。
こうして四半期決算ごとに内容を確かめるが、大切なのは「前年同期比で伸びているか。会社によっては売り上げが特定の期に集中することもある。このため前年同期比で成長が続いているかを見た上で、通期の業績予想が上振れしそうか、下方修正がありそうかなどを予測する」(はっしゃんさん)
ただし、この予測が難関だ。企業業績は経済や業界動向、企業の個別要因など複数の影響で決まる。勘案すべき要因がほぼ国内景気のみという小売業で決算を読み始めるのが、初心者は始めやすいという。

小売業なら月次の売り上げデータも公表され、自分なりに決算を予測しやすい面もある。例えば年間で10%増収を計画していれば、月次も10%増が続かないと目標は達成できないという具合だ。
そして月次データでもう1つ見たいのが、既存店の売上高の推移だ。新規店の押し上げで全体数字が伸びていても、既存店が落ち込み始めていたら、近い将来、成長が鈍化すると予測できる。小売業はこうした確認もしやすい。
企業決算を見る上で、最も難しい局面が第3四半期決算だ。この時期からは本決算で出される来期業績予想を見越した売買が始まる。来期業績はどうなりそうか、自分なりの仮説が必要になってくる。
成長のストーリーを描く
このため、はっしゃんさんは過去の決算数字の延長線上に未来の成長ストーリーを作るようにしている。3年後、5年後がどうなるのかを予測して未来の決算数字を自分で考えてみる。基本はこれまでの伸長率を延長して作るが、例えばAI(人工知能)化が進んだらどうなるかなど、考えられる要素を考慮して数字に強弱を付けることもあるという。
予測する項目は売上高や利益だけでOK。中期経営計画を公開している場合なら、計画が予定通りに進んでいれば、目標数字が未来の決算数字として推測できる。
「こうやって仮説を立て、決算ごとにその結果を検証していく。この繰り返しで予測スキルが上がって、自分の考えで投資できるようになる」(はっしゃんさん)

(佐藤由紀子)
[日経マネー2023年5月号の記事を再構成]
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2023/3/20)
価格 : 800円(税込み)
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