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私がNISAを選ぶなら…物価連動国債で悩む

知っ得・お金のトリセツ(86)

間もなく夏のボーナス支給日。個人的にも待ちに待った干天の慈雨は全体で前年比約6%増と4年ぶりの増加(本社中間集計)だが、水準はコロナ前に届かない上、ここへ来て2%台まで上がったインフレ環境。利率0.001%の普通預金に置いておけば刻々減価しかねない。個人的にはここ数年、夏のボーナスの振り向け先はふるさと納税と少額投資非課税制度(NISA)を利用しての投資と決めている。それに加え今年こそは「金融リテラシー0(ゼロ)」の夫に少額から可能な積み立て型の「つみたてNISA」を始めさせるというプロジェクトも待つ。一般とつみたて、2つのNISAは同じ年に併用できないので家族で分けるのは一案だ。

損をしたら非課税枠の出番はない

2つは投資額と期間そして選べる商品が異なる。共通するのは通常なら引かれる投資リターンからの20.315%の税金が取られないという非課税メリットだ。目下「インベスト・イン・キシダ」で新たな注目を集めるが、一般NISAは2028年まで(24年からは新NISAに移行)、つみたてNISAは42年まで、20歳以上(成人年齢引き上げに伴い23年からは18歳以上)の全員に与えられている国からのプレゼント。使わなければ単に枠が消えていくだけ。もったいない。

とはいえ、忘れてならないのは投資である以上、元本保証ではないこと。NISA枠であろうとなかろうと損をすることはある。そして税金はもうけにかかるものなので、損をしたら「非課税メリット」は何の役にも立たない。むしろ他の課税口座であれば可能な損失と利益との相殺がNISA口座ではできない分、踏んだり蹴ったり状態だ。

「レバナス民」の悲鳴

今、米国株の下落を受けてSNS(交流サイト)上では「レバナス民」の悲鳴が響く。「レバナス」とは米国のナスダック(NASDAQ)の株価指数にレバレッジをかけた投資信託。指数に対し2倍とか3倍の値動きをするよう設計されているので、指数の5%上昇時には10~15%の大きなリターンを生むとしてコロナバブル下で人気を集めてきた。

そして今、ナスダックは昨年11月の高値から3割安に沈む……。資産半減の悲鳴があふれるのも無理はない。NISA枠の使用例も目に付く。非課税枠が年120万円(ジュニアNISAは年80万円)と大きく、幅広い投資対象を含む自由度が魅力のNISAだがそれだけに初心者には向かない商品も含まれる。リターンの裏にはリスクあり。投資の原点に戻るきっかけにしたい。

積み立て投資では「下げ=養分」

怖がる必要はない。ウチの夫を含め、初心者はつみたてNISA枠でインデックス投資を始めればいい。金融庁がコストや運用成績を勘案して約200の投信に対象を絞り込んでおり、レバナス的なものは含まれない。投資手法も一括はなく積み立てのみ。定期的に同じ額を購入する積み立ては今のような株価下落時こそ効果を発揮する。価格が下がれば同じ額で買える量が増え、取得単価が下がる。いったん相場が上昇に転じれば低いコストで仕入れた「量」がモノを言う仕組みだ。右肩上がりの相場では積み立てより一括が有利だが、先の不透明な今は、下げを養分と捉えて投資に踏み出そう。

つみたてNISAの非課税期間は最長20年。その間下げ続けるのでない限り活路は開ける。怖ければ投資額をコントロールすればいい。つみたてNISAは最低月100円から最大月3万3333円(年40万円)の範囲で自分で投資額を設定できる。100円が出せない人はいまい。慣れたら増額しよう。積み立て対象は全世界の株価指数に連動するタイプの商品でいいだろう。「世界の成長」という最大公約数に賭けるイメージだ。レバナスの教訓からしても米国一辺倒はリスキーだし、世界株指数でもどのみち6割方は米国株の影響を取り込める。

悩ましいのは自分のNISA

さて、悩ましいのは自分のNISA選びだ。目下最大の関心事、インフレにどう対応すべきか? 実物資産、例えば金への投資は有力候補だが自分の場合1994年から純金積み立てを継続中なのでさらなる上積みは過度だ。そこで気になるのが「物価連動国債」。物価が上がれば元本が増えインフレ時に実質価値が目減りしない設計で、記録的なインフレに見舞われる米国では「シリーズI」(通称「Iボンド」)というのが人気らしい。

日本でも同様の設計の国債は発行されている。機関投資家向けだが15年以降は個人にも解禁された。ただ取り扱いは金融機関次第で投資額も100万円単位など大きめ。かつて15~16年ごろに個人版の物価連動債の発行が検討されたもののデフレ継続で凍結された経緯がある。そして最大の問題は国債は現状NISAの対象でないことだ。ここらへんは今後のインフレ予想の変化を背景に制度変更も予想されるが、取りあえずは物価連動国債を対象に投信仕立てにした商品ならNISAで投資可能だ。マーケットも制度も変わるもの。まずは始めることが最大の防御だろう。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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