50代からでも遅くない! 新しいNISAの活用法
積立王子への道(71)

50代の4分の1近くが貯蓄ゼロ!?
我が国の50代のうち何と4分の1近くの人たちが貯蓄ゼロだという。王子の友人にもこれまで稼いだお金をほぼ全部使っている、金融資産ゼロの「猛者」が何人もいる。そしてそんな彼らからよく受ける質問がこれ――「50歳過ぎから始めて、老後に向けた資産形成は間に合うか」。実際長期投資を始めた人たちは「もっと若いうちに始めていたらよかった」と嘆きつつも「今からでも気づいてよかった……」と胸をなで下ろす。長期資産形成は1年でも1日でも早く始めるに越したことがないのはもちろんだが、今や人生100年時代だ。まだまだ現役バリバリの50代なら今からでも十分に取り返せる。
新NISAで確保できる1800万円の生涯非課税投資枠
そこで岸田文雄内閣の目玉政策、新しい少額投資非課税制度(NISA)だ。スローガン通りに大きく拡充されることになった。制度の恒久化だけでなく、非課税で運用できる期間が一気に無期限になる。ただし1800万円という1人当たりの生涯非課税限度枠も新たに導入される。現行の一般NISAとつみたてNISAは、つみたてNISAを中心に一本化され、一般NISAの後継として「成長投資枠」が加わる。さて、ハジメくんのご両親のケース、すなわち50歳から始める長期投資では、当然ながら若者世代よりも短い時間軸でそれなりの成果を求めていく必要がある。その点、新NISAは時間をたっぷりかけられるヤング世代だけでなく、すべての世代にとって便利で効率よく活用できるよう格段にバージョンアップするから心強い。
積み立てで「太く短く」も可能になった
従来のつみたてNISAは40万円という非課税額が1年間ごとに区切られ、使わなければ消滅していた。新制度では非課税枠は生涯を通じて保持され、1年で使い切れなかった分は翌年以降も非課税枠として繰り越され存在する。つまり本人の年齢をはじめ置かれた状況によって、1800万円を「細く長く」活用していくか、あるいは「太く短く」使い切るかなど、自分で選択可能になるわけだ。
50歳から始める長期資産形成のポイントは、成長投資枠を上手に併用することだ。ハジメくんのご両親のように、投資経験はないが預貯金は相応に持っているというケースは多いはずで、その場合は成長投資枠も含めた年間非課税限度額の計360万円をフル活用して始めるべきだ。その際、成長投資枠もつみたてNISAとして活用することで、毎月30万円というかなり大型の積み立て投資が非課税で可能になる。積み立て方式でしっかり時間分散しながら資金投入を図ることで、短期的な値動きへの一喜一憂という人間の心の弱さから解放されるメリットがある。
5年で土台完成→20年の長期投資へ
このペースで続ければ、5年間で生涯枠1800万円の長期投資への投入完了だ。まとまった預貯金があれば、こうして50歳からというスタートの出遅れを取り戻すことができる、いわばキャッチアップ機能が備わったわけだ。成長投資枠は一般NISAの後継なのでまとまった一括投資もできるが、あくまでつみたてNISAの付属追加枠とみなして積み立て投資に活用することで、長期投資をしっかり続けることができるようになる――ここが重要なポイントだ。55歳までに生涯枠1800万円の投資を完了させれば、その後75歳まででも20年間の長期投資が続けられる。これからの日本社会は人生100年を踏まえ、おおむね70歳までは大半が現役として仕事を続けることが常識になるだろう。できるだけ長く仕事を続けることも見据えて長期投資プランをつくろう。
投資のバトンを渡せば末代は富豪!
足元ではゴタゴタがあったが、長い目で見た世界の経済成長軌道をしっかり捉えられれば、長期国際分散投資の年率平均リターンは4%程度の前提がおける。その運用成果が20年積み上げられると、およそ4000万円程度の資産形成が実現可能と想定できる。75歳になったら100歳までに向けて、4000万円の計画的な取り崩しを行い公的年金と併せて老後資金として活用する。毎月少額ずつ取り崩していけば、残った資金は非課税枠で無期限の生涯長期投資を続けられる。投資を続けながら取り崩す「お金を育てながら活用する」考え方が、人生100年時代の新常識になるだろう。こうして人生の最後まで使い切れなかったお金が残れば、そのまま子孫に相続して長期投資のバトンをつないでいけばいい。世代を超えた超長期投資の実践で末代には富豪、も夢じゃない。

積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。