クルマの「車両保険」 どんな場合なら入るべきか? - 日本経済新聞
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クルマの「車両保険」 どんな場合なら入るべきか?

生保損保業界ウオッチ(損害保険)

自動車保険に車両保険を付けるべきかとよく質問を受けます。車両保険とは自分のクルマの損害を補償する保険。時価を上限に修理費などをカバーできます。

以下の実例で考えましょう。運転を誤り、自動車ごと土手から川に転落した事故での損害です。ローン購入直後の新車は水没して廃車となる一方、ローン返済はその後も続きます。ところが車両保険には未加入でした。加入していれば保険金を受け取れ、返済に苦慮せずに済んだはずでした。

車両保険の対象となる事故は、衝突や追突など相手方のある事故の他、風水災などの自然災害、当て逃げや実例のような偶然の事故などで、受けられる補償は契約によります。地震原因の損害は対象外ですが、全損時に50万円を上限に補償される特約があります。

クルマの修理や再取得には、まとまったお金が必要です。しかもローン返済中の新車を失えばダメージは深刻。車両保険は、こんな時の家計損失を最小限に抑える役割を担うのです。クルマが生活に欠かせない場合は、失ったクルマのローン返済が続く一方で、新たなクルマを購入せざるを得ません。クルマが暮らしを支え、かつ突発的な事故での支出を捻出するのが難しい家計には、車両保険の必要性はより高くなるわけです。

ただし保険金は原則、クルマの時価が上限です。修理費や再取得費がかさむ新車では十分な保険金を受け取れる一方、時価が低下した古い車では限られます。そもそも自動車保険には事故実績に応じて保険料の割り増し引きが適用される「等級別料率制度」があり、無事故なら翌年の保険料が下がる一方、事故があれば上がります。少額でも保険金を受け取れば翌年の保険料が高くなり、家計負担がかえって増す恐れがあります。

車両保険には少額までのカバーを期待するのではなく、ある程度の高額修理やクルマの再取得時に役立てるために利用するのが基本です。事故の際に控除される免責金額(=自己負担額)を高めに設定し、一定程度の少額事故は自己負担と割り切れば、保険料負担を抑えることもできます。既に時価が低いクルマなら、車両保険に加入せず、家計費で修理費を賄うと割り切るのも一つの考えです。

示談交渉前でも修理が可能

冒頭のケースは単独事故でしたが、相手方のいる事故では示談交渉など自動車事故特有の煩わしさも。車両保険にはこうした煩わしさを軽減できる面もあります。

双方に過失がある事故で自車が損害を受けた時、相手方からは相手の過失分の賠償しか受けられません。自分の過失分は当然自腹で、示談交渉にも時間を要します。

ここで車両保険に加入していれば、相手方との示談交渉前でも自分の車両保険ですぐに自車を修理でき、速やかな復旧が可能です。相手からの賠償分は、損保会社が後から求償して精算します。

特約や補償範囲などが商品によって異なる保険の比較はなかなか大変。この連載では保険に詳しいファイナンシャルプランナーが商品選びの勘どころを紹介します。

清水香(しみず・かおり)
学生時代から生損保代理店業務に携わり、2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。翌年、生活設計塾クルー取締役に就任。『地震保険はこうして決めなさい』(ダイヤモンド社)など著書多数。財務省「地震保険制度等研究会」委員。社会福祉士。

[日経マネー2023年2月号の記事を再構成]

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