紙・板紙の内需、経済再開の恩恵に差 23年は2年連続減に - 日本経済新聞
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紙・板紙の内需、経済再開の恩恵に差 23年は2年連続減に

新型コロナウイルス禍からの経済回復を巡り、紙や板紙の内需の濃淡が鮮明になってきた。2023年の紙・板紙の内需全体は2年連続のマイナスとなる見通し。外出増加やインバウンド(訪日客)の回復の波に乗る段ボール原紙など板紙は底堅い一方、印刷・情報用紙など紙はデジタル化や値上げを背景に落ち込みが加速する。22年に板紙の内需が初めて紙を上回り、23年はその流れが強まりそうだ。

日本製紙連合会(東京・中央)の20日の発表によると、23年の紙と板紙を合わせた内需は前年比2.1%減の2258万2千トンと2年連続の減少となる見通し。コロナ禍前の19年比では11%少ない。感染対策と社会経済活動を両立する「ウィズコロナ」に入ったが、20年比でも1.6%減とコロナ禍初年も下回る。

23年の内訳をみると、経済回復の影響がさらにはっきりする。経済再開を受けて、安定的な荷動きがみられそうなのは段ボール原紙や白板紙などの板紙だ。

「モノの売り買いを敏感に映す景気の鏡」といわれる段ボール需要について、全国段ボール工業組合連合会(東京・中央)は行動制限の撤廃やインバウンド増加などに伴い飲料や業務用食品向けが回復すると予測している。製紙連はこうした需要に加え、最近の段ボール軽量化などの潮流も加味し、段ボール原紙の23年内需を924万トンと前年比0.7%増と予測した。

菓子箱や化粧品箱に使われる白板紙も177万6千トンと前年比0.7%増の見込み。旅行やイベントなどの回復で土産物など向けの需要が堅調に推移しそうだ。

紙でも、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの衛生用紙は1%増の210万7千トンと増加見通しとした。人出の回復で商業施設やホテルで使われる業務用製品が伸びるとみられる。「業務用は多くが古紙から作られる再生紙品」(製紙会社)で、再生紙品の需要が増えそうだ。家庭用では消費者の生活防衛意識の高まりを受けてプライベートブランド品など安価な商品の荷動きがより活発化する見込みだ。

紙のなかで落ち込みが続きそうなのが印刷・情報用紙だ。23年は前年比7.2%減の568万2千トンを見込む。19年比では26.4%と大幅な減少となる。デジタル化の進行という構造的な課題にコロナ禍が加わり、減少速度に拍車がかかっている。在宅勤務の定着などによりオフィスで使う用紙の需要も低迷。昨年来の製紙各社による値上げがデジタル化による紙の使用控えを促すとみられ、市場の縮小が一層進みそうだ。

「ウィズコロナ」に突入した23年は紙と板紙の内需で一段と差が開くとみられる。紙の減少は続きそうで、紙・板紙全体の内需がコロナ前を回復するのは容易ではなさそうだ。

(黒瀬幸葉)

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